パスネットシステムは、20社局以上の鉄道事業者で使用でき、券売機に並んで切符を買う必要がなく、自動的に最低の運賃を計算し引き落とし、乗車の記録が残るなど利用者にとっては便利なものですが、加入している事業者間で運賃がきちんと配分されているか気になります。複数事業者にまたがる区間を乗車するときパスネットの計算通りに運賃を分配すると、乗客が利用しているのに運賃収入が得られなかったり、逆に利用していなくても運賃の分け前に与る事業者がでてくるからです。この問題は、鉄道路線のネットワーク密度が高く、相互乗り入れ等により事業者間の補完関係が見られる首都圏の鉄道運賃体系を見直す一つのきっかけになると思います。
2003年3月、東武伊勢崎線が押上まで延伸開業する半蔵門線に乗り入れる。北千住−大手町間を乗車する場合、東武の北千住−押上間160円と営団(現東京メトロ)の押上−大手町間の160円、合計320円の運賃を払わずに、千代田線経由の営団運賃190円だけで乗車できてしまう。パスネットでは、制度上、複数経路がある場合最も安い運賃経路を使ったとみなし運賃計算をするので、東武は常に損をしてしまう。そこで営団との間で運賃の配分を交渉したいとの意向だが、「営団の理解が得られるかどうか・・・」2003年3月19日、営団半蔵門線が延伸開業、東武伊勢崎線と相互乗り入れを開始し、この問題が顕在化した。当日パスネットで北千住−水天宮前間を往復した人の報告によると、パスネットの印字は次のとおりだったという。
319 | 北千住13 | EI押*70 |
319 | 営 押上14 | 水天*54 |
319 | 水天宮前16 | TB北*35 |
往路は押上で途中下車しているので、東武の北千住−押上間160円と営団の押上−水天宮前間160円が引き落とされた。ところが、水天宮前から北千住まで乗りとおした復路は、190円しか引き落とされていない。水天宮前−北千住間の営団経由の最低運賃経路である、水天宮前(半蔵門)三越前(銀座)上野(日比谷)北千住間9.5キロ[1]の運賃190円を引き落としたものである。 パスネットの下車駅表示が[TB北]、すなわち東武北千住となっているにもかかわらずである。パスネットは、複数の事業者の路線を経由する場合でも、乗降駅間の最短運賃経路で乗車したものとして、運賃を引き落とすシステムになっているためだ。
朝日新聞の記事に戻ると、北千住駅に千代田線との間に中間ラッチを設ければ、大手町まで千代田線経由で乗車したかが判別できるが、それは旅客の便宜を損なうのでできない、と書かれていた。 しかし、この問題はたとえ営団千代田線と東武の間に中間ラッチを設けても解決しない。問題は、東武が北千住で日比谷線と乗り入れし、更にその先の押上で半蔵門線と乗り入れていることにある。北千住駅で営団千代田線と東武の間に中間ラッチは設置できるが、相互乗り入れをしている東武線と営団日比谷線の間に中間ラッチを設けることはできない。
千代田線との中間改札を設けても、営団各駅から北千住まで、日比谷線を経由してノーラッチで乗り継げるから、パスネットに千代田線との中間ラッチを通過した記録のない旅客がみな半蔵門線・伊勢崎線を経由したとして、押上−北千住間の運賃を徴収するわけにはいかない。先ほどの例で、水天宮前から北千住まで、最短運賃経路で乗車すれば、三越前と上野の両乗換駅がラッチ外接続なのでカードに記録が残り、このルートを経由したことの証拠になる。しかし、記録がない場合でも、水天宮前(半蔵門線)大手町(東西線)茅場町(日比谷線)北千住のようなノーラッチルートを通ることが可能であり、パスネットシステムは、このルートを排除することができない。
京王井の頭線浜田山から営団千代田線二重橋前までの経路を「スパなび」で探索してみた。得られた経路の運賃、所要時間、乗り換え回数は次のとおりである。
経路 | 運賃 | 所要時間 | 乗換 |
(1) 浜田山−下北沢(京王)/下北沢−代々木上原(小田急)/代々木上原−二重橋前(営団) | 450円(京130+小130+営190) | 38分 | 1回 |
(2) 浜田山−明大前−新宿(京王)/新宿−霞ヶ関−二重橋前(営団) | 340円(京150+営190) | 43分 | 3回 |
(3) 浜田山−渋谷(京王)/渋谷−表参道−二重橋前(営団) | 340円(京150+営190) | 45分 | 2回 |
(1)のルートは運賃は他のルートより90円高いが、1回の乗換ですみ、時間的にも最短であるから、一般に使われているだろう。 浜田山で乗車券で入場し二重橋前で精算すると、合計運賃は上記の計算通り450円となる。しかしパスネットで乗車すると、40円安い410円を引き落とすはずだ。パスネットは、京王(浜田山−新宿)150円+都営・営団(新宿−二重橋前)260円=410円と計算する。この運賃収入を計算経路どおりに分配すると小田急は運賃収入がゼロで、旅客が乗車していない都営地下鉄が運賃の分け前に与ることになる。
パスネットが最低運賃経路で運賃を計算するシステムであるといっても、やみくもに最低運賃経路の運賃(浜田山−二重橋前間の最低運賃は、上表(2)、(3)の340円)を引き落とすわけではない。 あくまでも、乗車した可能性のあるルートの中での最低運賃ルートである。実乗車ルートの下北沢で京王から小田急への乗り換えは中間ラッチがなく、代々木上原では、小田急と営団が相互乗り入れを行っている。ラッチ外の乗換えがないから、パスネットの券面には、浜田山の乗車と二重橋の下車しか記録されない。(2)、(3)の新宿や渋谷での乗換はラッチ外であり、その時点で運賃が引き落とされ、券面に表示されるから、新宿または渋谷を経由した可能性は排除される。
パスネットが適用した、京王・浜田山-都営・新宿−営団・二重橋というルートは、ラッチ外に出ずに乗車可能なのだ。京王と都営新宿線は、新宿で相互乗り入れをしている。都営・新宿から営団・二重橋までは、都営と営団を白金高輪で乗り継げば(たとえば、新宿−神保町−白金高輪−溜池山王=国会議事堂前−二重橋前)、著しいう回経路となるがラッチ外乗換なしで乗車可能である。このとき、都営・営団の乗継運賃は、実際の乗車経路にかかわらず、乗降駅間の最短運賃経路による営団と都営の運賃の合算額から70円を割り引くから、260円となる(たとえば、新宿−市ヶ谷(都営・170円)+市ヶ谷−二重橋前(営団・160円)−70円=260円)。
パスネットシステムは、旅客が二重橋前の自動改札に浜田山の入場記録しかないカードを投入したとき、新宿、白金高輪経由で京王・都営・営団を乗り継いだ可能性を排除できない。したがって、乗車した可能性のあるルートの中の最低運賃ルートとして、浜田山(京王)新宿(都営・営団)二重橋前間の運賃を引き落とすのである。
次も乗車券を購入したときとパスネットと運賃が異なる例である。東急と営団は3箇所で相互乗り入れを行っているので(将来は、渋谷での東横線と13号線の相互乗り入れで4箇所になる)、状況は複雑である。大手町から半蔵門・田園都市線で溝の口まで乗車するとき、
(1) | 券売機で連絡乗車券を買うと、渋谷経由で410円(営団分190円+東急分220円) |
(2) | 営団の乗車券で入場し溝の口駅で精算すると、経由選択の問合せがあり、渋谷経由を選択すれば、同じく410円 |
(3) | パスネットカードで、大手町で入場し、溝の口で出場すれば、390円(営団分190円+東急分200円)が引き落とされる。 |
営団から東急にノーラッチで乗り継ぐ場合、乗車券では精算の際、経由駅(渋谷、中目黒、目黒)を確認した上、実乗車経路の運賃を徴収する。しかし、パスネットシステムでは、乗降駅間の最低運賃経路で計算するので、中目黒経由のルート(大手町−霞ヶ関−中目黒−自由が丘−二子玉川−溝の口)で運賃が計算される。 これは、東急のウェブサイトでも「田園都市線渋谷・東横線中目黒・目黒線目黒から営団地下鉄へそのままご乗車になる場合、運賃は最も安いルートで計算します。」と示されている。
次のケースでも、実際に運送した事業者が運賃を取りはぐれ、運送していない事業者が運賃を徴収できる。
(1) | 営団・東急(半蔵門・田園都市線)渋谷駅で入場し、営団・東急(南北・目黒線)目黒駅で出場すると、東急(二子玉川−大岡山)経由で乗車しても営団永田町経由でも、最低運賃となる営団経由の190円が引き落とされる(一般旅客は、このような乗り方はしないだろう。JR山手線を利用したほうが早いし、150円ですむ)。 |
(2) | 東急田園都市線池尻大橋で入場し、目黒線不動前で出場すると、営団永田町経由で乗車しても、東急の運賃(二子玉川−大岡山経由、250円)しか引き落とされない。 |
(3) | 営団日比谷線広尾で入場し、南北線白金台で出場すると、東急田園調布経由で乗車しても、営団の運賃(霞ヶ関−国会議事堂前=溜池山王−白金台経由、160円)しか引き落とされない。 |
JRの大都市近郊区間内では、いわゆる大回り乗車が認められている。これは、「大都市近郊区間内相互発着の普通乗車券及び回数乗車券を所持する旅客は、その区間内においては、その乗車券の券面に表示された経路にかかわらず、同区間内の他の経路を選択して乗車することができる」という選択乗車の制度だが、SFカード(イオカード、スイカ)の普及により実質的に最短経路による運賃計算の制度に変化している。
路線網に環状線部分を有する私鉄でも、環状線内においては乗車経路に関わらず最短経路で運賃を計算し、または最短経路の乗車券でう回乗車を認めるという取り扱いが一般的である[2]。また、これを複数の事業者間に適用した例としては、営団と都営との間の乗継割引運賃の計算がある。先に例としてあげたように、新宿−二重橋前間の運賃は、市ヶ谷で都営から営団に乗り換えても、白金高輪経由のう回ルートを通っても、実乗車経路ではなく、乗降駅間の最低運賃経路で計算し、営団と都営の運賃の合算額から70円割引かれる[3]。
多くの事業者が密度の高い鉄道ネットワークを形成している首都圏において、各事業者が個別に運賃を設定するのは、消費者(旅客)の利益にかなうのか。 とくに事業者ごとに初乗り運賃を徴収することが問題である。初乗り運賃は、出札や改札のコスト(ターミナルコスト)が乗車距離に比例しないので、一定の最低運賃を設定し、短距離の旅客からそれにみあうコストを回収しようというものである。しかし、券売機や自動改札の導入によってターミナルコストは著しく削減され、また相互乗り入れのケースではまったく発生しない。従来のコスト構造は変化したはずである。そのため一定の乗継割引が実施されるようになったが、対象範囲が原則として各事業者の最低運賃(初乗り運賃)区間の相互間[4]に限られており、割引額も不十分である。相互乗り入れなどで複数の事業者の路線を乗車する旅客にとって運賃の割高感は否めない。
むしろヨーロッパの都市で一般化している、ゾーン運賃制(事業者ごとに対距離運賃を設定せずに、都市(圏)の中心部から同心円状にゾーンを定め、通過するゾーンを基準に運賃を統一し、これを鉄道、地下鉄、路面電車、バスなど公共交通をになう全事業者に共通に適用する運賃制度)に移行すべきではないかと思う。 ゾーン運賃制は、各事業者の競争による経営効率化へのインセンティブがはたらかなくなるとの否定的な議論もある。判断の基準は、首都圏の事業者間の関係を競合関係とみるか補完関係とみるか、どちらが消費者(旅客)の利益になるかだろう[5]。
パスネットの運賃計算システムは、乗継割引こそないが、営団と都営との間で始まった事業者間にまたがる最短経路による運賃計算を加盟各社間に拡大したものといえる。相互乗り入れが広範に行われている首都圏において、一般旅客は乗車する路線の事業者など意識していない。旅客が共通SFカードを使いながら、異なった事業者間をノーラッチで乗り継ぐ都度、出場駅でいちいち経路通りの申告をして精算していたら、このシステムを導入した意味がない。事前購入という乗客の負担を考え(低金利の現在あまり大きなものではないが、紛失等のリスクはある)、乗客の便宜と事業者側のシステムの簡素化を目的として、最低運賃を適用するというルールになったものと思われる。
パスネットが複数事業者間の乗継ぎで最低みなし運賃を適用したことは、乗継ぎ時の割高感を是正する第一歩として評価したい。 これが首都圏の運賃体系を見直すきっかけになることを望みたい。
ところで、冒頭の東武と営団の運賃分配はどのように決着したのだろうか。ゾーン運賃制などの抜本的変更を伴わず、現行の制度上で乗客の便宜を損なわず、東武が一定の収入を得られるようにするためには、次の方法しかないと思うのだが。
172 | ||
1-9 | 代官山11 | 春日132 |
1-9 | 後楽園16 |
と運賃が春日で打ち切られ、後楽園で新たに東京メトロの前引き運賃160円が差し引かれたという。
この区間の正規運賃は代官山→目黒(東急、210円)+目黒→茗荷谷(都営・東京メトロ乗り継ぎ、300円)の計510円である。パスネットは、春日駅出場時に、代官山→春日間のノーラッチ最低運賃経路である、代官山→中目黒(東急、110円)+中目黒−白金高輪→春日(東京メトロ・都営乗り継ぎ、290円)の運賃計400円を引き落とした。この運賃は、代官山→目黒(東急、210円)+目黒→春日(都営260円)の計470円よりも、70円安い。ところが、後楽園でさらに東京メトロに乗り継ぎ、茗荷谷まで乗車すると、合計560円となり、所定運賃の510円よりも50円高くなってしまうのである。
東京メトロと都営の乗り継ぎ割引は1回しか適用されないないため、春日駅でいったん運賃を打ち切ったのである。連絡改札口から丸の内線に乗車したのだから、システム上、最終目的駅まで計算を保留するという対応も不可能ではないだろうが。
ただし、ここに挙げられた例は、パスネットの運賃徴収の矛盾をまた一つ浮き彫りにしたとはいえ、このルートが実際に使われることはほとんどないだろう。 代官山−茗荷谷間の順路は、代官山→渋谷(東急110円)+渋谷→茗荷谷(赤坂見附乗換、東京メトロ190円)だろう。これが最低運賃経路であり、所要時間も最短である。また目黒を経由する場合でも、南北線・後楽園・丸の内線と東京メトロだけで行くのが運賃も安く(目黒−茗荷谷間、230円。代官山−茗荷谷間ノーラッチ最低運賃:中目黒乗り継ぎ340円)、所要時間も短い。春日で途中下車する必要がなければ、わざわざ三田線経由にすることはないのだ。
JR東日本のパンフレットは、SuicaまたはPASMOによる「JR−地下鉄・私鉄−JR」の乗り継ぎにおいて、連絡きっぷ(磁気乗車券)と運賃が異なるケースとして、次の3例を紹介している。
むしろ問題は、千代田線が乗り入れている常磐線亀有・取手間と、東西線が乗り入れている中央線高円寺・三鷹間の相互間を乗車する場合である。全区間をJR線に乗車しようとすると、常磐線の快速が停車しない駅の乗降客にとっては、北千住、日暮里または上野、秋葉原と3回、常磐線の快速列車停車駅でも日暮里または上野と秋葉原または神田の2回乗り換える必要がある。メトロ経由なら、大手町で1回乗り換えるだけですむ上に、表1のようにメトロ経由の運賃が安いケースが少なくない。この場合通過連絡運輸区間ではないので、JR−メトロ-JRの乗車券は通しでは購入できず、着駅で乗り越し精算する必要があり、きわめて不便である。
表1 常磐線亀有・取手間/中央線高円寺・三鷹間の相互間の運賃
亀有 | 金町 | 松戸 | 北松戸 | 馬橋 | 新松戸 | 北小金 | 南柏 | 柏 | 北柏 | 我孫子 | 天王台 | 取手 | |
高円寺 | 550/450 | 560/450 | 610/540 | 610/540 | 610/620 | 690/620 | 690/620 | 690/690 | 780/690 | 780/780 | 850/780 | 850/890 | 940/890 |
阿佐ヶ谷 | 550/450 | 560/540 | 610/540 | 610/620 | 610/620 | 690/620 | 690/690 | 690/690 | 780/780 | 780/780 | 850/780 | 850/890 | 940/890 |
荻窪 | 570/450 | 580/540 | 630/620 | 630/620 | 630/620 | 710/690 | 710/690 | 710/690 | 800/780 | 800/780 | 870/890 | 870/890 | 960/890 |
西荻窪 | 570/540 | 580/540 | 630/620 | 630/620 | 630/690 | 710/690 | 710/690 | 710/780 | 800/780 | 800/890 | 870/890 | 870/890 | 960/890 |
吉祥寺 | 580/540 | 590/620 | 640/620 | 640/690 | 640/690 | 720/690 | 720/780 | 720/780 | 810/890 | 810/890 | 880/890 | 880/890 | 970/1050 |
三鷹 | 580/540 | 590/620 | 640/690 | 640/690 | 640/690 | 720/780 | 720/780 | 720/780 | 810/890 | 810/890 | 880/890 | 880/890 | 970/1050 |
従来は、東京メトロを経由するJR駅相互間をSuicaで乗車するのは不正乗車だったが、JR経由の運賃の方が安い区間(たとえば、亀有・高円寺間)をSuicaで乗車してもチェックされなかった。今後は、これが合法化される。他人事ながら、乗客が利用しているのに収入を得られない東京メトロとJRとの精算はどうするのか、気になる。
改札口を通って乗り継ぐ場合1の北千住・西日暮里間経由の通過連絡運輸は、1971年4月の常磐線の複々線化に伴う緩急分離運転で、各駅停車の電車が地下鉄千代田線に乗り入れるようになったときに制定された。以前は各駅停車の国電も中距離電車も、南千住経由の常磐線ルートを通り上野が終点であった。緩急分離で快速列車が停車しない駅の乗降客がJR線だけを使って乗車するためには、北千住で乗り換える必要がある。鉄道側の都合によって乗客に不便を強いることに対する配慮として、通過連絡運輸区間としたのである。したがって、新制度でもその他の通過連絡区間と区別して、前後の区間の合算運賃から100円引きとした。将来的には、磁気式の乗車券を廃止し、IC乗車券に一本化する方向だろうから、その布石として通過連絡運輸の整理をはじめたのだろうか。
この区間の運賃を比較するとき、乗車券を購入した場合、Suicaを利用した場合に加えて、通過連絡運輸を利用しない全区間JRによる運賃(前述した千代田線・東西線経由の例のように、必ずしも全区間JRを利用するということを意味しない)も考慮する必要がある。これをまとめたのが表2である。なお、北千住接続の通過連絡運輸区間は、常磐線亀有・取手間並びに武蔵野線新八柱及び新流山・吉川間に設定されているようだが、常磐線の快速停車駅と武蔵野線各駅は表2の比較対象から外した。 これらの駅の乗降客は、日暮里、西船橋、南浦和、武蔵浦和乗換の方が便利であり、北千住・西日暮里の通過連絡運輸を利用するメリットがない(ただし一部過連絡運輸の運賃の方が安い区間がある)。また、西日暮里接続の対象駅からも、西日暮里で乗り換えずにそのままメトロに乗車したほうが便利で、通過連絡適用より運賃が安い駅(千代田線各駅の最寄JR駅、御茶ノ水、東京、有楽町、原宿と、千代田線の駅で1回の乗換えですむ渋谷、恵比寿、目黒、飯田橋、市ヶ谷、四ツ谷、中野)を外した。
表2 北千住・西日暮里間通過連絡運輸の運賃比較
亀有 | 金町 | 北松戸 | 馬橋 | 新松戸 | 北小金 | 南柏 | 北柏 | |
田端 | 310/340/210 | 320/350/210 | 370/400/290 | 370/400/380 | 450/480/380 | 450/480/380 | 540/480/450 | 540/570/540 |
駒込 | 320/340/210 | 320/350/210 | 370/400/380 | 450/400/380 | 450/480/380 | 450/480/380 | 540/480/450 | 610/570/540 |
巣鴨 | 320/360/210 | 320/370/290 | 450/420/380 | 450/420/380 | 450/500/380 | 450/500/450 | 540/500/450 | 610/590/540 |
大塚 | 320/360/210 | 370/370/290 | 450/420/380 | 450/420/380 | 450/500/450 | 540/500/450 | 540/500/450 | 610/590/540 |
池袋 | 370/360/290 | 370/370/290 | 450/420/380 | 450/420/450 | 540/500/450 | 540/500/450 | 610/500/540 | 610/590/620 |
目白 | 370/370/290 | 370/380/290 | 450/430/450 | 540/430/450 | 540/510/450 | 540/510/450 | 610/510/540 | 700/600/620 |
高田馬場 | 370/370/290 | 370/380/380 | 540/430/450 | 540/430/450 | 540/510/450 | 540/510/540 | 610/510/540 | 700/600/620 |
新大久保 | 370/370/290 | 450/380/380 | 540/430/450 | 540/430/450 | 540/510/540 | 610/510/540 | 610/510/540 | 700/600/620 |
新宿 | 450/400/380 | 450/410/380 | 540/460/450 | 540/460/540 | 610/540/540 | 610/540/540 | 700/540/620 | 700/630/620 |
代々木 | 450/400/380 | 450/410/380 | 540/460/450 | 610/460/540 | 610/540/540 | 610/540/540 | 700/540/620 | 780/630/690 |
日暮里 | 310/340/160 | 320/350/210 | 370/400/290 | 370/400/290 | 450/480/380 | 450/480/380 | 450/480/380 | 540/570/450 |
鶯谷 | 320/340/210 | 320/350/210 | 370/400/290 | 450/400/380 | 450/480/380 | 450/480/380 | 540/480/450 | 610/570/450 |
上野 | 320/340/210 | 320/350/210 | 450/400/290 | 450/400/380 | 450/480/380 | 450/480/380 | 540/480/450 | 610/570/540 |
御徒町 | 320/360/210 | 320/370/210 | 450/420/380 | 450/420/380 | 450/500/380 | 540/500/380 | 540/500/450 | 610/590/540 |
秋葉原 | 320/360/210 | 370/370/290 | 450/420/380 | 450/420/380 | 450/500/380 | 540/500/450 | 540/500/450 | 610/590/540 |
神田 | 320/360/210 | 370/370/290 | 450/420/380 | 450/420/380 | 540/500/450 | 540/500/450 | 540/500/450 | 610/590/540 |
新橋 | 370/370/290 | 370/380/290 | 540/430/450 | 540/430/450 | 540/510/450 | 540/510/450 | 610/510/540 | 700/600/620 |
浜松町 | 370/370/290 | 450/380/380 | 540/430/450 | 540/430/450 | 540/510/450 | 610/510/540 | 610/510/540 | 700/600/620 |
田町 | 450/400/380 | 450/410/380 | 540/460/450 | 540/460/450 | 610/540/450 | 610/540/540 | 700/540/540 | 700/630/620 |
品川 | 450/400/380 | 450/410/380 | 610/460/540 | 610/460/540 | 610/540/540 | 610/540/540 | 700/540/620 | 780/630/690 |
大崎 | 450/460/380 | 540/470/450 | 610/520/540 | 610/520/620 | 700/600/540 | 700/600/620 | 700/600/620 | 780/690/690 |
五反田 | 540/460/450 | 540/470/450 | 610/520/540 | 610/520/620 | 700/600/540 | 700/600/620 | 780/600/620 | 780/690/690 |
水道橋 | 370/360/290 | 370/370/290 | 450/420/380 | 450/420/450 | 540/500/380 | 540/500/450 | 610/500/450 | 610/590/540 |
信濃町 | 450/400/290 | 450/410/380 | 540/460/450 | 540/460/450 | 610/540/450 | 610/540/540 | 610/540/540 | 700/630/620 |
千駄ヶ谷 | 450/400/380 | 450/410/380 | 540/460/450 | 610/460/450 | 610/540/450 | 610/540/540 | 700/540/620 | 780/630/620 |
板橋 | 370/370/290 | 370/380/380 | 540/430/450 | 540/430/450 | 540/510/450 | 540/510/540 | 610/510/540 | 700/600/620 |
十条 | 370/370/290 | 450/380/380 | 540/430/450 | 540/430/450 | 540/510/540 | 610/510/540 | 610/510/540 | 700/600/620 |
尾久 | 320/360/210 | 320/370/290 | 450/420/380 | 450/420/380 | 450/500/380 | 450/500/450 | 540/500/450 | 610/590/540 |
上中里 | 320/340/210 | 320/350/210 | 450/400/380 | 450/400/380 | 450/480/380 | 450/480/380 | 540/480/450 | 610/570/540 |
王子 | 320/360/210 | 370/370/290 | 450/420/380 | 450/420/380 | 450/500/380 | 540/500/450 | 540/500/450 | 610/590/540 |
東十条 | 320/360/290 | 370/370/290 | 450/420/380 | 450/420/380 | 540/500/450 | 540/500/450 | 540/500/540 | 610/590/540 |
赤羽 | 370/370/290 | 370/380/290 | 450/430/450 | 540/430/450 | 540/510/450 | 540/510/450 | 610/510/540 | 700/600/620 |
川口 | 370/370/290 | 450/380/380 | 540/430/450 | 540/430/450 | 540/510/540 | 610/510/540 | 610/510/540 | 700/600/620 |
西川口 | 450/420/380 | 450/430/380 | 540/480/450 | 610/480/540 | 610/560/540 | 610/560/540 | 700/560/540 | 780/650/620 |
蕨 | 450/420/380 | 450/430/450 | 610/480/540 | 610/480/540 | 610/560/450 | 700/560/450 | 700/560/540 | 780/650/620 |
JRは「連絡きっぷ(磁気乗車券)と運賃が異なるケースがあります」と言っているが、100円引きは結構手厚く設定されている。表2に見るようにSuicaを使用するのが有利な区間が多く、全区間JR利用よりも安くなった区間もかなりある。
しかし、SuicaやPASMOを使用すると損をするケースが存在し、旅客の自衛手段が必要であるというのは問題である。IC乗車券相互利用サービスによって、首都圏の鉄道を1枚のカードでシームレスに乗車できるようになったというのに、まったく不便な話だ。やはり、ゾーン運賃制の採用など首都圏の運賃体系を見直す必要があるだろう。
PASMOのサービス開始にあたって、私鉄各社は、クレジットカード機能を組み込んだPASMOを発行し、乗客の囲い込みを狙っている。クレジット機能付のPASMOでは、残額が2,000円以下になると、自動改札機を通って入場する際に自動的にクレジット決済で3,000円がチャージされる(オートチャージの申し込みが必要)。また各社ともクレジットカードの利用額に応じて、自社グループで使用可能なポイントを付与する。とくに、東京メトロと小田急は、乗車回数に応じてポイントを付与するという、いわば鉄道のマイレージサービスを開始する。
東京メトロのポイントは、会費が不要な一般クレジットカードの場合、1乗車について2ポイントである。160円区間の乗車で2円しか還元されず、割引率はわずか1.25%である(ゴールドカードは5ポイント付与され、割引率は3.1%)。また、ポイントの有効期間は最大2年間であり、その間に1,000ポイントためないとPASMOにチャージできない。これでは、回数券の割引率に比べてメリットがない。東京メトロの回数券は、区間を限定せず、どこでも乗車できる金額式の回数券である。これが10回分の運賃で11回乗車でき、9.1%引き。時差券は16.7%、土休券は28.6%と割引率はさらに高くなる。
6月から開始する小田急の乗車ポイントは、1ヶ月間の対象運賃総額に、ポイント付与率をかけて算出される。ポイント付与率は、乗車回数10回まではなし、11回から20回まで3%、21回から30回まで5%、31回以上7%である。31回以上利用しても回数券の割引率より低い。さらに小田急のポイントは東京メトロと異なり、ためたポイントをPASMOにチャージすることができない。
PASMOの約款は、このページの本文に書いたパスネットの取扱を追認し、明文化している。ICカード乗車券取扱規則(鉄道)第13条は、PASMOによる運賃の減額について次のとおり規定している。(なお、この条文は標準的なもので事業者ごとに表現の差異があるという。)
第2項の規定は、本文でとりあげた
Suica側の同様の規程は、JR東日本のICカード乗車券取扱規則第51条第2号にある。これは、追記4で書いたSuicaまたはPASMOを使用して改札口を通らないで乗り継ぐ場合、全区間をJR線に乗車したものとして運賃を計算するというルールの根拠規定である。
複数事業者間の乗継ぎでパスネットが可能性のあるルートのうち最低運賃を適用するという取扱は、PASMOの約款では明文化されなかった。ICカード乗車券取扱規則(鉄道)第14条で次のように規定されただけである。
第3項は、PASMOに改札口通過の記録がない場合「実際に乗車した経路と異なる経路を乗車したものとみなして運賃を減額することがある」というだけで、最低運賃を減額するという規定にはなっていない。Suicaとの相互乗り入れで、必ずしも最低運賃とならないケースがあるからだろう。
第4項は、追記2で書いたパスネットによる乗り継ぎで最低運賃を引き落とさないケースを救済する措置だろうか。
SuicaのICカード乗車券取扱規則第55条に、複数の鉄道会社線を乗継ぐ場合のSuica乗車券の効力が規定されている。
PASMOの効力規程は第15条にある。
上述した運賃減額の規定と効力の規定をあわせれば、東京メトロの駅でPASMOまたはSuicaを使って入場し、メトロが乗り入れているJRの東京近郊区間を一筆書きで大回り乗車し(片道乗車1回)、途中下車せず東京メトロに戻って出場することが合法化されたことになる。
接続駅 | 通過連絡運輸適用区間 | Suicaの100円割引区間 |
北千住 | 常磐線「亀有−取手」間各駅、武蔵野線「吉川−新八柱」間各駅 | 常磐線「亀有−取手」間各駅 |
西日暮里 | 京浜東北線「関内−大宮」間各駅、山手線各駅、埼京線「池袋−大宮」間各駅、尾久駅、中央線「東京−三鷹」間各駅 | 山手線各駅、中央線「東京−新宿」間各駅、埼京線「池袋−赤羽」間各駅、京浜東北線「品川−蕨」間各駅、尾久駅 |
追記4を書いた2007年3月当時、上記のページは存在しなかった。参考にしたJR東日本サイトのパンフレット(pdfファイル)は、すでにリンク切れになっているが、保存しておいた紙のパンフレットには、次の通り書かれている(下線は筆者)。
東京メトロ千代田線・西日暮里〜北千住間を経由する一部の区間をSuicaでご利用のときは、前後のJR線の運賃の合算額から100円を割り引きします。この場合、連絡きっぷ(磁気乗車券)でご利用の場合と運賃の異なることがあります。Suicaで乗車する場合の100円割引は、北千住・西日暮里間の通過連絡運輸を適用しないことの代償であるから、その対象区間(一部の区間)は通過連絡運輸の適用区間と同じであると理解するのが普通だろう。そこで、JR連絡運輸取扱会社線一覧表で、北千住・西日暮里の通過連絡適用区間を確認して表2を作成したのである。100円割引の対象区間が通過連絡運輸適用区間のうちの一部の区間であるとは、まったく考えていなかった。表2を見て、割引があるものとしてSuicaで乗車された読者には、ご迷惑をかけた。追記4で「100円割引は結構手厚く設定されている」書いたのも撤回する。
2008年1月10日限りでパスネットの販売が終了した。自動改札機でのパスネット利用は2008年3月14日限りで終了し、PASMOに一本化される。追記4以降は題名のパスネットから離れてPASMOのことばかり書いてきたが、これが最後の更新となるだろう。
[1] | 上野乗換えではなく、上野広小路=中御徒町乗換えでも営業キロは同じ9.5キロ。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
[2] | 環状線部分を有する事業者(東武、西武、京成、東急、東京メトロ、都営地下鉄、名古屋市営地下鉄、富山地鉄、阪急、近鉄、大阪市高速電気軌道、神戸市営地下鉄、神戸新都市交通)の環状線部分の運賃計算及びう回乗車の取扱は、次のとおり。なお、札幌市交通事業振興公社(札幌市電)、山万、舞浜リゾートライン、広島電鉄(軌道)、伊予鉄道(市内線)、長崎電気軌道、鹿児島市交通局も環状線部を有するが、均一運賃。
環状線部分の運賃計算及びう回乗車の取扱
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
[3] | 東京都地下高速電車連絡運輸規程第4条第2項に規定されている。ただし、PASMO(旧パスネットも)では、接続駅(ラッチ内の白金高輪を除く)で60分以内に乗り継ぐ必要がある。60分を超えると、割引は適用されず、東京メトロ、都営それぞれの乗車区間ごとの運賃が徴収される。
東京メトロと都営との間の乗り継ぎ運賃割引は、1961年6月1日開始され、初乗り運賃と割引額は次のとおり推移した。
なお定期乗車券については、2000年12月から通過連絡運輸の取扱が開始された(「都営交通90年史」p185)。 東京都地下高速電車連絡運輸規程第2条第3項に都営−東京メトロ−都営の、第4項に東京メトロ−都営−東京メトロの通過連絡運輸区間が規定されている。 東京メトロ・都営通過連絡定期券発売区間(網掛けは2020/04/14追加)
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
[4] | 首都圏の各事業者は、連絡運輸規則等により下表のとおり乗継割引対象区間を設定している。これらの多くは運賃値上げ認可の見返りとして、運輸省の指導のもとに行われたようだ。「東京都交通局80年史」(平成4年3月31日、東京都交通局)によると、
昭和59年1月の私鉄運賃改定にあたり運輸省は、相互直通運転を行う各社に対し乗継運賃割引制度を導入するよう指導した。(中略)
この後、63年5月の私鉄運賃改定の際には、運輸省からさらに乗継割引運賃拡大の指導があり、相互直通運転を行っていなくても、年間3万人以上の乗換え客のいる駅間に乗継運賃割引制度を導入するという内容だった。(中略) 3年3月、北総開発鉄道との相互直通運転の開始に際しても、運輸省から新たな乗継割引運賃の設定を求められた。その主旨としては、1)北総線が新線であることから運賃が高く、都心までの運賃が同じくらいの距離にある多摩ニュータウンとくらべると2倍近くになること、2)競合線に対抗して都心までの運賃を少しでも下げ、乗客誘致をはかることが交通政策上からも望ましいこと、3)都営線と京成線は北総線からの旅客については一般旅客よりもコストが低いはずであること、などがあげられた。この割引制度は、北総線と都営線との相互発着通、都営線を経由して営団線との相互発着となる乗客に対して適用されるものであった。 首都圏の鉄道事業者の乗継割引対象区間(事業者名から首都圏乗継運賃割引規定の各事業者の規定にリンク)
首都圏乗継割引設定全区間(割引額10円は、民鉄のみの割引で、JRは負担しない)
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
[5] | ヨーロッパ各都市のゾーン運賃制の採用は、LRTの導入(在来鉄道からの乗り入れ)にあわせて公共交通の利便性を向上させ、自動車利用から誘導する手段としての側面がある。日本では大都市圏の通勤通学需要がほとんど鉄・軌道系によって担われており、この面では、誘導の効果はほとんどない。むしろ、地方中核都市での導入が急務だろう。検討が開始されたという、富山港線や吉備線のLRT化、市内乗り入れのケースでは、これにあわせてゾーン運賃制を採用すべきだろう。(なお富山港線は、2006年3月廃止、4月29日富山ライトレールとして開業した。2020年2月富山地方鉄道と合併、3月富山駅で南北軌道線の直通運転開始し、全線均一運賃とした) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
[6] | 東京メトロのSFメトロカード規則の運賃計算・効力に関する規定は、「・・・入場時に最低運賃相当額をカードから減算し、出場時に当該乗車区間の片道普通旅客運賃に対する差額運賃相当額を減算する。・・・」(第10条第2項)、「当該乗車区間に対する運賃計算経路にかかわらず、営業規則第158条の規定により、他の経路を乗車することができる。」(第11条第2号)とあるだけで、各事業者にまたがった最短運賃距離で運賃計算するという規定は存在しない。実際の運賃より安い運賃を適用し、旅客にとって有利になるのだから、とくに約款に定めなくても良いということなのか。(PASMOの約款に関連規定ができた。追記5参照) |
2003/06/08: | 関連データ集への「都営-営団-都営連絡定期券発売区間」の掲載にともない脚注3を訂補 |
2003/07/07: | 関連データ集への「首都圏乗継割引設定区間」の掲載にともない脚注4を訂補 |
2003/09/21: | 誤記(水天宮前−北千住間の営団経由の最低運賃経路)の訂正。[水天宮前(半蔵門)大手町(千代田)北千住]→[水天宮前(半蔵門)三越前(銀座)上野(日比谷)北千住] |
2003/12/20: | 関連データ集への「営団-都営-営団連絡定期券発売区間」の追加にともない脚注3を訂補 |
2004/12/11: | 2012年東急問題を追記(追記1)。表のスタイル変更。「関連データ集」のデータの脚注への取り込み。脚注の「営団」を「東京メトロ」へ変更。 |
2005/01/15: | パスネットが最低運賃を引き落とさない例を追記(追記2) |
2005/11/09: | 11月5日付「朝日新聞」の記事を追記(追記3) |
2006/02/21: | ウェブに掲載されている「名古屋市高速電車乗車料条例施行規程」、「大阪市高速鉄道及び中量軌道乗車料条例施行規程」、「神戸市高速鉄道乗車料条例施行規程」にあたり、脚注2を改訂。 脚注3で、メトロ・都営連絡割引運賃及び定期券の通過連絡運輸について、「東京都地下高速電車連絡運輸規程」及び「東京都地下高速電車旅客営業規程」の根拠条文を明示。 |
2006/02/24: | 脚注2を改訂(2005年3月の東急田園都市線の加算運賃廃止に伴うルール変更を反映)。「東京都地下高速電車旅客営業規程」の最新版にあたり、脚注3の「営団・都営通過連絡定期券発売区間」を追加 |
2006/09/30: | 東急の旅規により、脚注2を改訂。2005年3月の東急田園都市線の加算運賃廃止に伴うルール変更(2006/02/24付改訂で記載)は行われなかったことが判明。脚注5に追記 |
2006/10/22: | Catalytic氏の情報により、脚注2を改訂 |
2007/03/04: | PASMOについて追記(追記4) |
2007/04/09: | PASMOの約款について追記(追記5)。脚注6に追記 |
2008/03/11: | 追記4の表2を訂正(割引のない区間を削除)、追記6を掲載 |
2008/06/14: | 脚注4の首都圏乗継割引設定全区間に東京メトロ副都心線の開業に伴う新適用区間を追加 |
2008/11/25: | 脚注3の「営団・都営通過連絡定期券発売区間」に東京メトロ副都心線の開業に伴う新適用区間を追加(「東京都地下高速電車旅客営業規程」の改定に対応) |
2009/02/14: | 脚注2の表の東京メトロの項、判定の根拠の「旅客営業規則(70条)」に「旧営団・」を追加(東京メトロの旅規は確認していないが、条番号が変更になっている可能性あり)。同項及び大阪市営地下鉄の項に、ラッチ外乗換時の30分制限を付記。脚注3のパスネットをPASMOに変更。脚注4の「首都圏乗継割引設定全区間」のJR東日本・分倍河原、八丁畷、菊名、武蔵境、国分寺、拝島各駅接続の割引額10円を20円に訂正 |
2010/01/28: | 「運送せずに運賃収入」の項中、山手線渋谷・目黒間の運賃の誤りを訂正(読者の方から指摘を受けました)。脚注2の表の東京メトロの項、「旧営団・旅客営業規則(70条)」を「東京地下鉄旅客営業規程(43条)」に変更。脚注4の「首都圏乗継割引設定全区間」の北総開発を北総に変更 |
2010/04/12: | 脚注2の表の都営地下鉄の項、磁気乗車券には30分の乗継時間制限がないことを明記。脚注4の「首都圏乗継割引設定全区間」の都営地下鉄−京成−北総の3社乗継割引の金額を訂正 |
2010/05/08: | 脚注4の表を全面更新(新京成⇔京成、北総⇔京成、横浜高速みなとみらい線⇔東急、京急、相鉄を追加。分倍河原接続JR東⇔京王に西府駅を追加。新宿接続都営⇔京王を訂正。JR東日本の武蔵小杉接続に新川崎からの設定がないことを注記。同一事業者の別路線間の乗継割引を追加)。デッドリンクを解消(新ページにジャンプするものは、そのままにした) |
2010/08/20: | 脚注3、脚注4に乗継運賃割引制度の歴史を記載。脚注3に営団・都営の乗継割引額の推移を掲載。脚注4の表「乗継割引対象区間」の区分を再構成、開始日を記載して全面改訂。「首都圏乗継割引設定全区間」に接続駅のラッチ数を記載、漏れていた東京メトロから都営・京成を介した北総線への乗継割引及び京急・都営・京成間の空港連絡割引を追加。 |
2011/01/13: | 脚注2を更新(富山地方鉄道の取扱区分を確定。神戸新交通を追加。近鉄旅規へのリンクを挿入。環状線区間を有する均一運賃制事業者について付記。名古屋市営地下鉄の旅規のURLの誤りを訂正) |
2011/01/17: | 脚注2を更新(近鉄の項に追記。神戸新交通の項を旅規に基づき改訂。) |
2011/02/07: | 脚注2を全面改訂(京成を追加。「環状線の旅規規定」を掲載し各社の旅規条文にリンク。) |
2012/03/31: | 表2の運賃の誤り(馬橋・田町、馬橋・信濃町、馬橋・千駄ヶ谷)を訂正(読者の方からご指摘を受けました) |
2013/10/03: | 脚注3の東京メトロ・都営通過連絡定期券発売区間を改訂(2013/03/16の秋葉原=岩本町の連絡運輸開始に対応) |
2014/04/25: | 脚注2表(環状線区間の運賃計算及びう回乗車の取扱)の東急の項を改訂 |
2016/05/10: | デッドリンクを解消 |
2018/10/31: | 脚注2を更新(富山地方鉄道の旅規掲載を反映。大阪市営地下鉄を大阪市高速電気軌道に変更) |
2020/04/14: | 目次を記載。東武鉄道、西武鉄道、京成電鉄及び阪急電鉄の旅規がウェブに掲載されたことに伴い、脚注2を改訂。脚注3の東京メトロと都営乗継運賃割引の推移に、2014年4月1日の消費税率8%対応の運賃改定時を追加(2019年10月1日の10%対応時はメトロ・都営とも初乗り運賃の変更なし)。 東京メトロ・都営通過連絡定期券発売区間を1区間削除し、1区間追加。脚注4を2019年10月1日の新運賃を反映して改訂。接続駅のラッチ数及び注を改訂。京急羽田空港2駅の改称を反映。脚注5に富山地方鉄道と富山ライトレールの合併及び南北接続を追記 |
2020/04/21: | 脚注4の接続駅のラッチ数及び注記の改訂漏れを訂正(読者から指摘を受けました)。 |
2020/04/24: | 脚注4の「首都圏乗継割引設定全区間」に漏れていた東武牛田・京成京成関屋接続の乗継割引を追加。「首都圏乗継運賃割引規定」を掲載し、各事業者の関連規定にリンク |
2020/05/01: | 脚注4の「首都圏乗継割引設定全区間」の渋谷駅関連のリンク不具合を訂正。メトロ渋谷駅の乗継区間に代々木公園を追加(読者から指摘を受けました) |
2020/05/11: | 脚注4の「首都圏乗継割引設定全区間」のメトロ⇔東急(渋谷接続)、京成⇔北総(京成高砂接続)のラッチ数を変更し注記。都営の対東武(浅草接続)の割引区間に新御徒町、両国を追加(読者から指摘を受けました) |
2020/05/17: | 脚注4の「首都圏乗継割引設定全区間」の私鉄・JRの旧ノーラッチ接続駅の割引額等の誤記を訂正(読者から指摘を受けました) |
2020/07/01: | 脚注4の同一事業者の路線間の乗継割引の京成千葉線京成幕張本郷−新千葉間を谷津(京成津田沼)新千葉間に訂正(読者から指摘を受けました) |
2020/07/03: | 脚注2の東京メトロの旅規のurlを変更。乗換時間制限を60分に変更 |
2020/08/17: | 脚注2および脚注3の乗換時間制限の60分への変更漏れを訂正。「首都圏乗継運賃割引規定」に新たにウェブ公開した京王電鉄および横浜高速鉄道の規定を追加し脚注4からリンク(読者から指摘を受けました) |
2023/03/29: | 脚注4の「首都圏乗継割引設定全区間」の注f)及び「首都圏乗継割引設定全区間」のJR東日本・東急菊名のラッチ数を2に変更(読者から指摘を受けました) |
トップページに戻る