営団ラッチ外乗り継ぎ事件顛末記


「デスクトップ鉄」のきわめてマイナーな分野における活動の一例を紹介する。 メンバーになっているあるメーリングリスト(以下MLと略記)で、1998年6月、私の投稿をきっかけに大論争があった。 以下は、その「営団地下鉄のラッチ外乗り継ぎ問題」についての経緯と後日談である。 東京の地下鉄に詳しくない方は、路線図など参照してお読みいただきたい。


ラッチ外乗り継ぎ問題とは

営団地下鉄には、同一駅または運賃計算上同一駅とみなされる異名乗換駅(上野広小路・仲御徒町、溜池山王・国会議事堂前、淡路町・新御茶ノ水、赤坂見附・永田町、日比谷・有楽町)でありながら、駅の構造上ラッチ(改札)外で乗り継がねばならないところが次の9箇所ある(議論当時は上野広小路・仲御徒町を除く8箇所)。
* 上野(銀座線と日比谷線)
* 大手町(丸ノ内線と東西線・千代田線及び東西線と半蔵門線)
* 池袋(丸ノ内線と有楽町線)
* 飯田橋(東西線と有楽町線・南北線)
* 日比谷・有楽町(日比谷線・千代田線と有楽町線)
* 淡路町・新御茶ノ水(丸ノ内線と千代田線)
* 三越前(銀座線と半蔵門線)
* 九段下(東西線と半蔵門線)
* 上野広小路・仲御徒町(銀座線と日比谷線)
営団地下鉄は、最短経路で運賃を計算し、経路が重複しない限り迂回乗車を認めている。 ただし、上記9箇所のラッチ外乗り継ぎ駅で乗換となる場合で、乗換駅までの運賃が最終目的駅までの運賃を上回るときは、当該乗換駅までの高い運賃が徴収されるという特例がある。 これは、目的駅までの安い運賃でラッチ外乗り継ぎ駅での乗換を認めると、ラッチ外に出たまま乗り換えずに前途放棄した旅客は、乗り継ぎ駅を終着駅として普通にキップを買った旅客に比べ優遇されることになるからである。

具体例をあげると、築地から新富町までの乗車券(運賃計算ルートは、築地(日比谷線)*日比谷・有楽町(有楽町線)新富町、2.6キロ、160円)でラッチ外乗り継ぎの日比谷・有楽町で乗りかえるのは全く問題ない。 ただし、同じ乗車券で築地(日比谷線)銀座(丸ノ内線)*池袋(有楽町線)新富町という一筆書きのルートで迂回乗車しようとすると、築地からラッチ外乗換となる池袋までの運賃が190円なので、160円ではなく、190円徴収されることになる(*はラッチ外乗り継ぎ駅。以下同じ)。

この場合、日比谷・有楽町または池袋のラッチ外乗り継ぎ駅では、途中下車できることになり、ラッチ外に出られない(浜川崎を除く)JRの大都市近郊区間の大周り乗車と異なり、1枚の乗車券で実質的な往復乗車ができるというメリットがでてくる。2000年10月14日のパスネット導入によってルールが変更されるまでは、普通乗車券・回数券を使用する限り、乗換時間に制限はなかった。SFメトロカードによる乗換は、以前から30分に制限されていたが、10月14日以降、普通乗車券・回数券も30分ルールが適用されるようになった。


事件の発端

私は、ラッチ外乗り継ぎによる実質的途中下車の恩恵を最大限享受していたが、98年6月17日、所要で銀座から市が尾まで赴く際、当時のラッチ外接続8駅連続踏破を敢行した。 これをMLに投稿した(98/06/17 12:58:50)のが、1週間以上にわたった大論争の発端となった。
銀座一丁目から−[有楽町=日比谷]−(茅場町)−[大手町]−[三越前]−[上野]−(北千住)−[新御茶ノ水=淡路町]−[池袋]−[飯田橋]−[九段下]−(青葉台)というルートで市が尾まで行きました。

(中略)ポイントは、銀座一丁目−渋谷間の190円キップで、営団地下鉄の改札外接続駅全8駅で途中下車したことにあります。 駅の有人通路が廃止されたことにともない、この春から設置されたオレンジ色の乗換客用改札口を無事通過してきました。

ところでクイズ。 160円キップで全8駅連続途中下車は可能でしょうか? 可能だとすれば、そのルートは? 途中下車する改札外接続駅までの運賃が、目的駅までの運賃を上回る場合は、高い運賃が徴収されることをお忘れなく。


思わぬ反撃に合う

この投稿に対し、全く予期せぬ反応が返ってきた。 クイズの答よりも、このような運賃計算の特例が存在するのか、もし存在するとすれば法令違反ではないかという疑問である。 A氏の議論を引用させてもらう(98/06/18 21:29:36)。
木場−神保町の最短距離は大手町乗換の5.9kmで、運賃は160円です。 ところが、木場−九段下は6.2kmで運賃190円となってしまうため、木場から神保町に行くときは、大手町を延々歩いて乗り換えるか、九段下での乗換時に20円*払わねばならなくなります。
また、お茶の水から護国寺の最短距離は後楽園・飯田橋乗り継ぎで5.9kmですが、池袋で1回乗換で済ますためには20円*余計に運賃を払わねばなりません。
(中略)ラッチ内乗換通路を設置できないという鉄道事業者側の事情により、旅客にラッチ外乗換を強い、その際不当に高い運賃を収受することになり、営団ほどの鉄道会社がこのような愚かなことをやるとはとは思えません。
*筆者注:30円の誤り
これは、ラッチ外乗り継ぎのメリットを享受しこそすれ、デメリットはまったく感じていなかった私にとって、思わぬ反論であった。 たしかに、この特例は、鉄道会社の都合で旅客に不利益をもたらすという面を有している。

また、営団のウェブサイトの運賃検索によると、そのような特例は示されていないという反論もあった(98/06/19 00:26:05、B氏)。

早速、営団のHP内にある運賃検索画面で試してみたところ、A氏説を裏付けるように、
木場から神保町まで
  大手町乗換160円10分
  九段下乗換160円12分
お茶の水から護国寺まで
  池袋乗換160円15分
  後楽園および飯田橋乗換160円10分
と表示されました。 O氏説も説得力があるし、はて???
注:現在、発駅:御茶ノ水、着駅:護国寺間で検索すると、後楽園、飯田橋で乗り換える最短ルートのみが表示され、池袋乗換は表示されない。


とりあえず面目を保つ

これらの反論は、私がこれまで経験した事実と異なっている。まず事実関係について確認すべく、次のようなメールを投稿した(98/06/1912:56:18)。
営団ホームページの運賃検索は、Bさんの書かれたとおりになっていました。しかし、これは、乗換駅がラッチ外接続であることを見落としたミスでしょう(たしかに指摘しようとしても、メールアドレスがわからない)。 どなたか次のような実験をしてみませんか?

1.御茶ノ水からSFメトロカードで乗車し、池袋で乗り換えのために出場すると190円が差し引かれます。 30分以内に有楽町線に乗り換えて護国寺で出場すると、御茶ノ水からの運賃は160円と計算し、30円creditされるでしょうか?

2.御茶ノ水駅で160円の普通乗車券/回数券で入場します。池袋駅の乗り継ぎ券発行機で護国寺までを選択すると、無償の乗り継ぎ券が発行されるでしょうか?そしてその乗り継ぎ券でオレンジ色のラッチから出場でき(券が手元に戻り)、有楽町線のラッチで再入場できるでしょうか?

B氏は、私の挑発に乗ってさっそく実験してくれた(98/06/19 23:11:09)。
命令(?)とあらば、逆らう訳にはいかない。 早速1.を実験してみました。 
先ずは丸ノ内線御茶ノ水駅にて券売機上の運賃表を見る。「護国寺160円」とのみある。 経由の指定、例えば「護国寺160円(池袋経由の場合は190円)」とは表示さ
れていない。 では、1000円のSFメトロカードを持ってスタート。

御茶ノ水入場:160円引かれる
(丸)池袋出場:30円引かれる
(有)池袋入場:引かれず
護国寺出場:30円戻って・・・こない。 カードの残高810円。
「あれま」というか「やっぱりそうか」。 護国寺に用はないので同じ道を引き返す。
護国寺入場:160円引かれる
(有)池袋出場:引かれず
持ち時間が30分あるので、昔なら「すなっくらんど」でC級グルメを楽しめたのに・・・しょもないので丸ノ内線へ直行。
(丸)池袋入場:引かれず
御茶ノ水出場:引かれず。 カードの残額650円。

O氏説のとおりの結果になりましたが、同じ経路で往きと帰りで運賃が違うというのはどう考えても不自然。カードなら護国寺出場の際、残高に30円加えるのは技術的に容易だろうが、普通乗車券・回数券の場合は対応が困難だという事情も解るけど・・・。

営団に文句を言おうとする場合、webmaster@tokyo-metro.go.jp 宛てにメールを打ったら、はたして届くのかな。

というわけで、実際に私の言った特例の存在が確認され、面目を保つことができた。その後も、この特例は特定の旅客に対する差別運賃であり法令違反の疑いがある、JRのラッチ外乗り継ぎ駅である浜川崎ではそんな扱いをしていないから営団の扱いは不当だ等の議論が続いたが、ここでは割愛する。


応援席も白熱した

いずれにせよ、web上の運賃表示が正しくないのは、鉄道営業法及び鉄道運輸規定に基づく運賃の表示義務違反であることについては意見の一致をみた。 いまから思えば、これは、2000年秋日本中を騒がせた運賃誤表示問題の始まりであったといえる。 時まさに、フランスのワールドカップで、日本が苦戦していた最中。応援席も白熱し、こんな発言も飛び出した。

C氏:98/06/20 09:16:19

> 営団に文句を言おうとする場合、webmaster@tokyo-metro.go.jp 宛てにメールを打ったら、はたして届くのかな。

打て!打て!

B氏:98/06/20 16:02:46
>打て!打て!
はいはい、打ってみました。 結果は Host unknown とエラーでした。
D氏:98/06/21 01:19:50
まあ、本社に電話するのが早いかもしれません。
メトロニュースには、総務部広報課の電話番号が記載されています。
03-3837-7047
B氏は、皆に乗せられて営団に対し抗議の手紙を書いたが、なしのつぶてであったような。


駅すぱあとも間違っていた

運賃検索ソフト「駅すぱあと」も、営団のWeb同様、この特例を反映していなかった。6月21日メールで問い合わせたところ、2週間ほどたった7月2日、ユーザーサポートセンターから返事があった。
ご連絡いただいておりました御茶ノ水−池袋−護国寺の件につきまして、調査結果がでましたのでお知らせいたします。
営団のテレフォンセンターにて確認させていただいたところ、確かに池袋を経由した場合、190円になるとの返事をいただきましたが、現在の駅すぱあとでは営団の運賃を最短距離で計算を行っておりますために、対応することができません。
誠に恐れ入りますが、この度の件につきましては参考意見とさせていただきます。何とぞ、ご理解のうえご了承くださいますようお願い申し上げます。
これに対し、「運賃検索ソフトにとって致命的なバグだ」と訂正を申し入れたところ、7月13日になって、8月版で対応するという返事があり、7月末に届いた8月改訂版では、これらの運賃が訂正されていた。

一方、営団のWebに次のような注記が掲示されたのに気がついたのは、11月になってからであった。B氏の抗議がもたらした成果といえるだろう(現在この注記はない)。

下に掲げる乗り換え駅では、乗車される発着駅間の普通旅客運賃と比較して、当該乗り換え駅までの運賃が高額となる場合は、表示された最短経路の運賃では乗り換えができませんのでご注意下さい。
あとでわかったのだが、この文章は営団の旅客営業規則を忠実に表現している(この点後述)


クイズの答は

まず回答を寄せてくれたのは、D氏であった(98/06/19 22:47:40)。氏は以前からラッチ外乗り継ぎ駅に関する特例を承知しており、多勢に無勢であった私にとって、当時唯一の援軍であった。
クイズが解けましたので報告します。
(中略)
上記 8 駅すべてで 160 円券で途中出場するには、8 駅すべてへの運賃が 160 円である駅を出発地に選ぶ必要があります。
いま、一番離れていそうな上野と池袋の両駅について調べたところ、双方に 160 円で行ける駅は、九段下と神保町だけでした。
#念のために、他の 6 駅への運賃についても調べましたが、#いずれも 160 円区間です。
したがって、これ以外の駅は出発地になりえません。しかしながら、九段下は肝心の乗換駅であるため、出発地にしてしまっては途中下車ができません。
よって、神保町を出発地にする解しかありません。
という考え方は正しかったのだが、残念ながら解答はケアレスミスをしてしまった。
考えられるルートの一つは次の通りです。
神保町−東→[九段下]−半[永田町−有→[有楽町・日比谷]−日→銀座−銀→日本橋−東→[大手町]−半→[三越前]−銀→[上野]−日→北千住−千→[新御茶ノ水・淡路町]−丸→[池袋]−有→[飯田橋]→神楽坂
# *神*保町→*神*楽坂できれいでしょ?
さっそくB氏がミスを指摘する(98/06/20 00:02:42)。
惜しいっ!! 神保町は半蔵門線と都営2線の駅であり、東西線は通っていません。 上記の場合、九段下が「乗換駅」ではなく単なる「通過駅」になってしまっています。
正解は、
神保町(半)九段下(東)飯田橋(有)有楽町・・・以下<D氏>ルートを進み、最後が、池袋(有)東池袋または護国寺または江戸川橋ではないでしょうか。
#他人の褌で相撲を取るとは、まさにこのこと ^^;;;;;
私は出題者として、B氏案は正解だが、次の答もあると書いた(98/06/21 08:56:49)。
神保町(半)九段下(東)飯田橋(有)池袋(丸)淡路町・新御茶ノ水(千)北千住(日)上野(銀)三越前(半)大手町(東)茅場町(日)日比谷・有楽町−

このあと有楽町線に乗り換えて、神保町から160円で行ける駅であればどれを終着駅としてもよいのですが、半蔵門とすれば、神保町−半蔵門2.0キロの最短距離切符(営団の乗車券は、*円区間制なので券面に駅が表示されることはないが)による8駅連続走破となります。B氏ルートの神保町−江戸川橋は、2.7キロ。


営業規則はどうなっているか

さてここからは後日談である。私の言った通りラッチ外乗り継ぎ駅の特例があるという結論が出たものの、この特例が営団の営業規則にどのように規定されているのかずっと気になっていた。その後加入した旅客営業規則関連のMLで営団の運賃の話が出たついでに関連質問をしてみた。世の中には詳しい人がいるもので、さっそく、地下鉄博物館で閲覧したという営業規則の条文を紹介してくれた。営業規則には、以下のとおりこの特例が明確に規定されていた。私もその後、日比谷駅と銀座駅で営業規則および補則を閲覧させてもらい、これらの条項を確認した。

1.環状部は最短経路で運賃計算

(旅客運賃の計算上の経路)
規則67条 旅客運賃は旅客の実際乗車する経路及び発着の順序によって計算する。

(片道普通旅客運賃計算方の特例)
規則第70条 第67条の規定にかかわらず、次の区間内各駅発着、又は通過となる場合の片道普通旅客運賃は、最も短かい経路のキロ程によって計算する。
#この部分には略図(北千住、上野、茅場町、銀座、溜池山王・国会議事堂前、表参道、赤坂見附、四ツ谷、飯田橋、池袋、淡路町・新御茶ノ水、北千住で囲まれた環状線部分を表示)

2 この場合の乗換駅は次のとおりとする。
上野、三越前、日本橋、銀座、溜池山王、溜池山王・国会議事堂前、国会議事堂前、赤坂見附、赤坂見附・永田町、永田町、青山一丁目、表参道、池袋、淡路町・新御茶ノ水、大手町、霞ヶ関、北千住、茅場町、日比谷、日比谷・有楽町、飯田橋、九段下、後楽園、四ツ谷、市ヶ谷
 

JRの大都市近郊区間の規定は、最短経路の乗車券で迂回乗車できるという乗車券の効力(選択乗車)の規定であるが(実乗車ルートでの発券も可)、営団の規定は、最短経路で運賃計算するという旅客運賃の規定になっている。

2.最短運賃経路の乗車券で迂回乗車可

(う回乗車)
規則第158条 第70条に掲げる区間内各駅発又は着若しくは通過となる普通乗車券又は回数乗車券を所持する旅客は、その区間内においてはその乗車券の運賃計算経路にかかわらず、う回して乗車することができる。

2 前項によるう回乗車中の旅客がう回区間内の途中駅に下車したときは乗車変更として取り扱う。


3.発着駅間の運賃と比較して、発駅又は着駅からラッチ外乗換駅までの運賃が高額となる場合は、その駅では乗換できないという原則

3 第1項の場合、下に掲げる乗換駅においては、かっこ内の路線相互について、乗車する発着駅間の普通旅客運賃と比較して、発駅又は着駅から当該乗換駅までの運賃が高額となる場合は、第78条第2項別表第2号表に掲げる運賃にかかわらず当該乗換駅での乗換はできない。

上野駅(銀座線と日比谷線)
大手町駅(丸ノ内線と東西線・千代田線及び東西線と半蔵門線)
池袋駅(丸ノ内線と有楽町線)
飯田橋駅(東西線と有楽町線・南北線)
日比谷駅・有楽町駅(日比谷線・千代田線と有楽町線)
淡路町駅・新御茶ノ水駅(丸ノ内線と千代田線)
三越前(銀座線と半蔵門線)
九段下(東西線と半蔵門線)

# 第78条第2項別表第2号表とは、駅に掲示されている三角式運賃表


これが問題の条項である。ここに書かれていることは、まさに営団がWebの運賃検索ページに注記した内容そのものである。ここで注意を要するのは、「発駅又は着駅から当該乗換駅」と書かれているとおり、双方向についての規定であることだ。御茶ノ水から護国寺の乗車券で池袋で乗り換えられないだけでなく、逆の護国寺から御茶ノ水の乗車券でもだめなのだ。

4.発駅からラッチ外乗換駅までの運賃以上の乗車券を所有する場合は、その駅での乗り継ぎを認めるとの例外規定

(乗車券の使用条件の特例)
補則第58条 規則第158条第3項の規定にかかわらず、普通乗車券又は回数乗車券を所持する旅客は、その所持する普通乗車券又は回数乗車券の運賃が発駅から当該乗継駅までの普通旅客運賃以上の場合は乗継を認める。


この補則によって初めて、護国寺から御茶ノ水の乗車券で池袋で乗り継ぐことが認められる。往復で運賃が異なるという現象がここから生じるのである。


9駅連続走破敢行

2000年10月14日のパスネット導入によって、従来制限のなかった乗車券・回数券利用の際にも30分ルールが適用されることになり、ラッチ外接続のメリットは大幅に減った。

また、12月12日の都営大江戸線環状部開業に伴って、営団銀座線・上野広小路駅と日比谷線・仲御徒町駅が乗換駅に設定された。 大江戸線上野御徒町駅が上野広小路駅および仲御徒町駅との接続駅となったことに伴うもので、都営新宿線小川町の開業で淡路町と新御茶ノ水が接続駅になったのと同じ措置である。

これによって、営団のラッチ外乗り継ぎ駅は、9箇所に増えた。 さて、160円切符による全ラッチ外乗り継ぎ駅制覇ルートはどうなるだろうか。

2000年12月29日、実行。上野広小路・仲御徒町が加わっても、出発点の神保町は変わらない。 パスネットカード(260円分残っていた相鉄のSFぽけっとカード)を使い入場する。

神保町(半蔵門線)*九段下(東西線)*飯田橋(有楽町線)*池袋(丸ノ内線)*淡路町・新御茶ノ水(千代田線)北千住(日比谷線)*上野と、ここまでは8箇所時代と同じルート。 銀座線に乗り換えて次の*上野広小路で下車してからが別ルートとなる。 大江戸線のコンコースを歩いて、*仲御徒町で日比谷線に乗換え、茅場町(東西線)日本橋(銀座線)*三越前(半蔵門線)*大手町と乗り継ぐ。

ここで半蔵門線から千代田線に乗り継がないと9駅連続制覇ができないのだが、千代田線への乗り継ぎはラッチ内で可能である。 半蔵門線とラッチ外乗り継ぎが認められているのは、東西線だけである。 そこで若干ルール違反だが、東西線の改札から入場し、千代田線のホームまで歩く(おそらく千代田線のラッチから入場しても問題なかっただろう)。 もともと大手町駅は、東西線開業時にそれ以前から存在していた丸ノ内線との間がラッチ外乗り継ぎとなったものである。 その後、千代田線、半蔵門線と相次いで開業したことにより、丸ノ内線と東西線との間もコの字型にホームを延々と歩けば、ラッチ内で乗り換えることができるようになったのだが、乗り継ぎの便宜のため、東西線と丸ノ内線との間では従来どおりラッチ外乗り継ぎが認められ、また新たに東西線と半蔵門線との間でも認められるようになった。このように大手町のラッチ外乗り継ぎは中途半端な存在なので、ルール違反の罪は軽いとお許し下さい。さらに、160円切符による9駅連続制覇は、これを認めないとできないはず、と思う。

さて、最後の乗り継ぎ駅*日比谷でも問題なく降りられ、*有楽町駅でも入場できた。この先は、神保町から運賃計算キロ6キロ以内の駅であれば、どこで降りてもよいのだが、まだ南北線に乗っていない。 そこで、有楽町(有楽町線)永田町(南北線)溜池山王(銀座線)銀座と乗車し、(途中下車のメリットは一切享受せずに)単にラッチ間を乗り継いだだけで3時間弱に及ぶ、39.1キロの大旅行は終わった。 かくして、パスネットカードの裏には、次の通り、9個の*印が並ぶ。
 

Z29営神保町16EI九*10
* 営九段下16EI飯*10
* 営飯田橋16EI池*10
* 営 池袋16淡路*10
* 新御茶水16EI上*10
* 営 上野16EI広*10
*  仲御徒町16三越*10
* 三越前  16EI手*10
* 営大手町16EI比*10
* 営有楽町16銀座*10

閑話休題。こんな愚行をしたからには、もっと長いルートにすべきだったと反省する。有楽町以降を(有楽町線)市ヶ谷(南北線)四ツ谷(丸ノ内線)銀座(銀座線)溜池山王(南北線)麻布十番と廻れば、45.9キロになり、おそらくこれが、160円で9箇所のラッチ外乗り継ぎ駅を完全走破する最長ルートであろう。

なお、このルートでは永田町通過のあと赤坂見附を通過し、国会議事堂前通過のあと溜池山王で乗換えることになるが、異名乗換駅はそこで相互間を乗り継がなければ別駅とみなし、このルートが一筆書きとして成立すると解釈する。

(初稿:2000年12月31日)


追記1 (2003/05/16)

160円で9箇所のラッチ外乗り継ぎ駅を完全走破する最長ルートは、その後の探索で51.9キロまで伸びた。

神保町(半蔵門線:0.4)*九段下(東西線:0.7)*飯田橋(有楽町線4.9)*池袋(丸ノ内線7.2)*淡路町・新御茶ノ水(千代田線:8.6)北千住(日比谷線:5.3)*上野(銀座線:0.5)*上野広小路・御徒町(日比谷線:5.9)銀座(銀座線:2.3)溜池山王・国会議事堂前(千代田線:3.3)表参道(銀座線:2.7)赤坂見附(丸ノ内線:1.3)四ツ谷(南北線:1.0)市ヶ谷(有楽町線:3.7)有楽町・日比谷(千代田線:1.4)大手町(東西線:0.8)日本橋(銀座線:0.6)*三越前(半蔵門線:1.3)水天宮前
また9駅完走にこだわらなければ、次のルート(53.0キロ)が160円で乗車可能な最長ルートらしい。
神保町(半蔵門線:0.4)*九段下(東西線:0.7)*飯田橋(有楽町線4.9)*池袋 (丸ノ内線7.2)*淡路町・新御茶ノ水(千代田線:8.6)北千住(日比谷線:5.3)*上野(日比谷線:6.4)銀座(銀座線:2.3)溜池山王・国会議事堂前(千代田線:3.3)表参道(銀座線:2.7)赤坂見附(丸ノ内線:1.3)四ツ谷(南北線:1.0)市ヶ谷(有楽町線:3.7)有楽町・日比谷(千代田線:1.4)大手町(東西線:0.8)日本橋(銀座線:3.0)上野広小路
なお、これらがそれぞれの最長ルートであるという証明はまだなされていない(追記3参照)

追記2 (2004/11/07)

このページに影響されて、ラッチ外乗り継ぎ9駅完走を敢行したお二人の記録がBlogに掲載されています。お疲れ様でした。

2004年4月1日、特殊法人帝都高速度交通営団は東京地下鉄株式会社になったが、事件発生時の歴史的事情に配慮して、このページのタイトルは変更しません。

追記3 (2005/01/10)

160円きっぷによる最長ルートが次のとおり一挙に4.5キロ伸びた。

本郷三丁目(丸の内線:1.6)*淡路町・新御茶ノ水(千代田線:8.6)北千住(日比谷線:11.7)銀座(銀座線:5.9)表参道(千代田線:4.1)霞ヶ関(日比谷線:1.2)日比谷(千代田線:1.4)大手町(半蔵門線:4.7)永田町(南北線:2.5)市ヶ谷(有楽町線:6.0)*池袋(丸の内線4.8)後楽園(南北線5.0)西ヶ原
筆者の知人が整数計画法で(それもExcelのソルバーで)解いたものである。

追記4 (2005/02/19)

整数計画法で最長大回り経路を解いてくれた、近藤英明氏がウェブページ「EXCELによる最長片道ルート探索」を開設した。JRの最長片道切符経路ほかを、Excelのソルバーで、整数計画法で探索している。 東京メトロの160円切符最長大回り経路の探索は、「EXCELによる最長片道ルート探索:東京メトロ編」にある。

ウェブページには掲載されていないが、近藤氏は「ラッチ外乗継駅を完全走破最長ルート」も、同じ方法で探索してくれた。 こちらのほうは、半蔵門線清澄白河延長開業による伸びが大きいが、当時の路線網でくらべても上述の経路を0.2km上回っている。

神保町(半蔵門線:1.7)*大手町(丸の内線:1.7)銀座(銀座線:5.9)表参道(千代田線:4.1)霞ヶ関(日比谷線:1.2)日比谷・有楽町(有楽町線:1.9)永田町(半蔵門線:2.6)*九段下(東西線:0.7)*飯田橋(有楽町線4.9)*池袋(丸ノ内線7.2)*淡路町・新御茶ノ水(千代田線:8.6)北千住(日比谷線:5.3)*上野(銀座線:0.5)*上野広小路・仲御徒町(日比谷線:1.4)茅場町(東西線:)日本橋(銀座線:0.6)*三越前(半蔵門線:3.0)清澄白河

追記5 (2006/12/17)

ゆりかもめさんがラッチ外乗り継ぎ9駅完走を敢行されました。お疲れ様でした。

追記6 (2007/04/28)

ラッチ外乗り継ぎ9駅完走の報告がまたブログに掲載されました。さんどるさん、お疲れ様でした。

追記7 (2008/06/28)

6月14日の副都心線開業で渋谷駅の銀座線・副都心線の乗継がラッチ外となった。神保町・渋谷間の運賃が190円のため、160円で全ラッチ外乗換駅を通過することは不可能になった。

追記8 (2008/07/13)

190円で全ラッチ外駅を走破する最長ルートをExcelソルバーで探索した。 最長ルートは、次の新富町・押上間66.6キロのようだ。

新富町(有楽町線:1.2)*有楽町・日比谷(日比谷線:1.2)霞ヶ関(千代田線:4.1)表参道(銀座線:1.3)*渋谷(副都心線:3.6)新宿3(丸ノ内線2.6)四ツ谷(南北線:1.0)市ヶ谷(有楽町線:1.8)永田町(半蔵門線:1.4)青山1(銀座線:4.5)銀座(日比谷線:5.9)*中御徒町・上野広小路(銀座線:0.5)*上野(日比谷線:5.3)北千住(千代田線:8.6)*新御茶ノ水・淡路町(丸ノ内線7.2)*池袋(有楽町線4.9)*飯田橋(東西線:0.7)*九段下(半蔵門線:2.1)*大手町(東西線:0.8)日本橋(銀座線:0.6)*三越前(半蔵門線:7.3)押上

従来の160円最長ルートでは、始発駅は神保町に固定されていたが、190円ルートの始発駅候補(すべてのラッチ外駅に190円で到達できる駅)は、58駅ある。 さらに着駅候補は160駅(ラッチ外駅と、190円区間にう回ルートが存在しない浦安・西船橋間及び和光市以外のメトロ全駅)、これに関連する駅間は158あり、200までの変数しか許容しないExcelソルバーでは、発駅を4分割、着駅を6分割し、計24ケースの計算を行う必要がある。 そこで、発駅・着駅を絞り込むため、東京メトロの路線網を環状部(上野、茅場町、銀座、溜池山王、渋谷、新宿3、池袋、後楽園、淡路町・新御茶ノ水、北千住を外周とする区間)と放射部(浅草・上野、茅場町・西船橋間、有楽町・新木場間、霞ヶ関・中目黒間、溜池山王・目黒間、明治神宮前・代々木上原間、新宿3・荻窪間、中野坂上・方南町間、飯田橋・中野間、池袋・和光市間、後楽園・赤羽岩淵間、北千住・北綾瀬間)とに区分し、候補最長ルートの組み合わせを環状部発・環状部着、環状部発・放射部着、放射部発・環状部着、放射部発・放射部着の4ケースに分割して考えた。

まず環状部を循環する最長ルートを求めると55.9キロ。 この循環ルートの1駅間を切り取って、後続放射部を付け加えた環状部発・放射部着の最長ルートは、本郷3・赤羽岩淵間65.0キロであった。 発駅の制約は着駅よりも厳しく、放射部発・環状部着の最長ルートは、これを上回らないので、放射部発・放射部着の最長ルートと比べればよい。 発駅候補のうち放射部最遠駅(神谷町、高田馬場、門前仲町、新富町、水天宮前、麻布十番、本駒込)を発駅候補、着駅無制約でダミー最長ルートを求めたところ、高田馬場・新木場間の67.7キロであった。 次に発駅を高田馬場に固定、高田馬場から190円運賃の着駅制約を設けて計算すると、高田馬場・月島間63.1キロとなった。 高田馬場より内方の早稲田発、神楽坂発にすると190円で到達できる着駅候補が変わるので、これを上回る可能性がある。 しかし、それぞれの最長ルートは、早稲田・王子神谷間、神楽坂・辰巳間の63.3キロで、いずれも、環状部発・放射部着の最長ルートに及ばない。

そこで、ダミールートの第2位を求めると新富町・赤羽岩淵間66.9キロだったが、着駅制約を設けると新富町・押上間66.6キロが最長となった。 押上は終着駅なので、内方の銀座一丁目発の最長ルートはこれを下回る。 また、ダミールートの第3位も66.6キロを上回らないので、新富町・押上間が最長と判定した。

追記9 (2011/01/07)

近藤英明氏のウェブページ「EXCELによる最長片道ルート探索」のリンク先URLを変更した。

追記10 (2012/03/30)

3月17日から新宿三丁目駅における丸の内線と副都心線のラッチ外乗換えが可能となった。追記8の現在の最長ルートは、新宿三丁目駅で乗り換えているので、これをラッチ外とすることにより10個の*が取得できる。


初出:2003/05/16
最終更新: 2012/03/30
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