接頭語として「新」を冠した駅を考察する。新横浜や新大阪など在来線の駅と離れて設置される新幹線駅に代表されるように、基本地名駅の近隣に新駅を設置するときに命名されるのが一般的だが、例外もある。
接頭語としての「新*」駅 | 表1 地名・施設名等の「新*」駅
表2 「新」を冠して改称した駅 |
同一事業者の近隣「新*」駅 | 表3 同一事業者の近隣「新*」駅 |
新幹線の駅 | 表4 並行在来線の対応駅と異なる新幹線駅 |
事業者の異なる近隣「新*」駅 | 表5 国鉄との連絡運輸の接続駅だった「新*」駅
表6 名鉄の接頭語駅 表7 私鉄に対応した国鉄・JRの「新*」駅 |
まとめ | |
注 | |
改訂履歴 |
別表の「新*」駅でも、地名ないし施設名と解すべき駅がある。また、対応駅が遠隔地にあり、なぜ新を冠したか不明な駅もある。これらの駅を表1に掲げる。
新駅 | 所在地 | 事業者・路線 | 対応駅 | 事業者・路線 | 備考 |
新富士 | 釧路市新富士町 | JR北海道・根室本線 | 富士 | JR東海・東海道本線 | 富士製紙釧路工場の新設に伴って設置。東海道本線の同名駅があるので「新」をつけた(日本国有鉄道刊「北海道駅名の起源」昭和37年13版) |
新千歳空港 | 千歳市美々 | JR北海道・千歳線 | 千歳空港 | JR北海道・千歳線 | 千歳空港の隣接地に新設 |
新吉野 | 浦幌町字吉野 | JR北海道・根室本線 | 吉野 | 近鉄・吉野線 | 駅近くにある吉野桜に似た山桜に因んで改めた(「北海道駅名の起源」) |
新木場 | 江東区新木場 | 東京メトロ・有楽町線ほか | 木場 | 東京メトロ・東西線 | 貯木場が木場から移転 |
新整備場 | 大田区羽田空港 | 東京モノレール | 整備場 | 東京モノレール | |
新関 | 新潟市秋葉区大関 | JR東日本・磐越西線 | 関 | JR西日本・関西本線 | |
新平野 | 小浜市平野 | JR西日本・小浜線 | 平野 | JR西日本・関西本線 | |
新舞子 | 知多市新舞子 | 名鉄・常滑線 | 舞子 | JR西日本・山陽本線 | 海岸を新舞子と命名 |
新旭 | 滋賀県高島市新旭町 | JR西日本・湖西線 | 旭 | JR東日本・総武本線 | 合併で高島市になった旧町名 |
新深江 | 大阪府大阪市東成区 | 大阪メトロ・千日前線 | 深江 | 阪神・本線 | 近隣に大阪メトロ・中央線の深江橋駅 |
新大宮 | 奈良県奈良市芝辻町 | 近鉄・奈良線 | 大宮 | JR東日本・東北本線 | 旧油阪駅に代わって大宮通りに設置された「新駅」か |
新鶴羽 | 熊本県多良木町 | くま川鉄道・湯前線 | 鶴羽 | JR四国・高徳線 | Wikipediaに「高徳線の鶴羽駅(つるわ)との区別のためであると思われる」とあるが、出典不明 |
新富士、新木場、新舞子、新旭は、住所名になっている。新関駅と新平野駅の住所名は大関と平野だが、新を冠したのはやはり遠隔地の駅を考慮したためか。新鶴羽は住所名には含まれていないが、地名は鶴羽のようだ。
また、既設駅が「新」を冠して改称し、自駅の旧称が対応駅の例がある。これらを表2に掲げる。
新駅 | 事業者・路線 | 改称日 | 旧駅名 | 備考 |
新高徳 | 東武・鬼怒川線 | 1929/10/22 | 高徳 | |
新藤原 | 東武・鬼怒川線 | 1922/03/19 | 藤原 | 移設 |
新馬場 | 京急・本線 | 1976/10/15 | 北馬場・南馬場 | 両駅を統合 |
新逗子 | 京急・逗子線 | 1985/03/02 | 湘南逗子→京浜逗子 | 逗子海岸駅と統合 2020/03/14逗子・葉山に改称 |
新宮川 | 富山地方鉄道・本線 | 1924/05/20 | 江上→宮川 | |
新栄町 | 西鉄・天神大牟田線 | 1970/04/28 | 栄町 | 移設 |
新中川町 | 長崎電気軌道・蛍茶屋支線 | 1947/12/?? | 中川町 | 移設 |
駅の移設や統合によるもので、「新*」駅というより新「*駅」と解すべきだろう。新高徳と新宮川は、改称時点で移設等は行われておらず、改称の理由がよくわからない。
さらに、新鉾田、新守山、新深江、新西脇、新夕張などは対応駅が廃止・改称され存在しない。また2022年3月12日開業のあいの風とやま鉄道・新富山口は、16年前に廃止されたJR西日本富山港線・富山口に新を冠した。これら単独「新*」駅を除き、近隣に対応駅が現存する「新*」駅は、124駅(事業者別には139駅)あり、以下これらについて考察する。
事業者 | 駅数 | 直通列車がある駅 | ない駅 |
JR北海道 | 4 | 新札幌(札幌)、新旭川(旭川)、 | 新琴似(琴似) |
JR東日本 | 13 | 新三郷(三郷)、新横浜(横浜)、新白岡(白岡)、新白河(白河)、新利府(利府)、新花巻(花巻)、新青森(青森)、新松戸(松戸)、新前橋(前橋)、新小岩(小岩)、新茂原(茂原) | 新川崎(川崎)、新大久保(大久保) |
JR東海 | 2 | 新蒲原(蒲原) | 新富士(富士) |
JR西日本 | 13 | 新大阪(大阪)、新今宮(今宮)、新三田(三田)、新高岡(高岡)、新倉敷(倉敷)、新山口(山口)、新下関(下関)、新広(広) | 新神戸(神戸)、新尾道(尾道)、新岩国(岩国)、新福島(福島)、新加美(加美) |
JR九州 | 7 | 新鳥栖(鳥栖)、新八代(八代)、新大村(大村)、新飯塚(飯塚)、新水前寺(水前寺) | 新大牟田(大牟田)、新玉名(玉名) |
東武 | 6 | 新越谷(越谷)、新伊勢崎(*伊勢崎)、新栃木(*栃木)、新柏(*柏)、新鎌ヶ谷(鎌ヶ谷)、新船橋(*船橋) | |
西武 | 3 | 新所沢(所沢)、新狭山(狭山市) | 新桜台(桜台) |
小田急 | 1 | 新百合が丘(百合が丘) | |
東急 | 2 | 新横浜(*横浜)、新綱島(綱島) | |
京急 | 1 | 新大津(京急大津) | |
東京メトロ | 3 | 新中野(*中野)、新御茶ノ水(御茶ノ水)、新木場(木場) | |
相鉄 | 1 | 新横浜(*横浜) | |
名鉄 | 2 | 新瀬戸(尾張瀬戸) | 新加納(加納) |
近鉄 | 2 | 新石切(石切)、新王寺(*王寺) | |
阪急 | 1 | 新伊丹(伊丹) | |
札幌市 | 1 | 新さっぽろ(さっぽろ) | |
三陸鉄道 | 1 | 新田老(田老) | |
関東鉄道 | 2 | 新取手(*取手)、新守谷(守谷) | |
東京都 | 3 | 新高島平(高島平)、新御徒町(上野御徒町)、新庚申塚(庚申塚) | |
東京モノレール | 1 | 新整備場(整備場) | |
ゆりかもめ | 1 | 新豊洲(*豊洲) | |
横浜市 | 1 | 新横浜(*横浜) | |
富山地方鉄道 | 3 | 新相ノ木(相ノ木)、新魚津(電鉄魚津)、新黒部(電鉄黒部) | |
万葉線 | 1 | 新吉久(*吉久) | |
えちぜん鉄道 | 1 | 新福井(*福井) | |
大井川鐡道 | 1 | 新金谷(*金谷) | |
愛知環状鉄道 | 1 | 新豊田(三河豊田) | |
近江鉄道 | 1 | 新八日市(八日市) | |
神戸市 | 1 | 新長田(*長田) | |
広島高速交通 | 1 | 新白島(白島) | |
筑豊電気鉄道 | 1 | 新木屋瀬(木屋瀬) | |
平成筑豊鉄道 | 1 | 新豊津(豊津) | |
熊本電気鉄道 | 1 | 新須屋(須屋) | |
肥薩おれんじ鉄道 | 1 | 新水俣(水俣) |
「新*」駅と対応駅が直通列車で連絡している(路線名が同じか否かを問わない)ペアと、新幹線独立駅など平行する別線に存在し直通列車がないペアとがある。駅数は62対23で前者が多い。近鉄の王寺駅と新王寺駅は同一構内にあるが、線路がつながっていない。
*を付した対応駅は、他事業者が先行して開業した基本地名駅の構内に「新*」駅の事業者も乗り入れている駅、または同一構内ではないが同名駅が存在するケースである。この場合、同一事業者の対応駅より早く開業したのに「新*」駅となっている例がある。神戸市の西神線新長田駅は山手線長田駅より11年先行開業した。山陽電鉄と神戸電鉄の長田駅に対する国鉄新長田駅の関係が、神戸市営地下鉄では逆転したのである。国鉄伊勢崎駅は東武の伊勢崎駅より4か月先行して開業。近鉄でも、大和鉄道が田原本線の新王寺駅を開業した4年後に、信貴生駒電鉄の生駒線王寺駅が開業した。それぞれ旧国鉄の対応駅が先行して開業しており、東武伊勢崎線と近鉄生駒線が国鉄駅に乗り入れたためである。
一般的に駅の格は、先行開業した対応駅の方が「新*」駅よりも上である。しかし、新小岩、新百合ヶ丘は、対応駅に停車しない急行・快速列車が停車する。また今宮駅は、新今宮の管理駅である。
並行在来線の対応駅と離れて設置された新幹線駅は表4の35駅ある。「新*」駅が約半数あるが、近年「新*」駅以外が増加している。
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対応駅のカッコ内は運賃計算上の駅。実キロ区間は(−)で示す |
在来線の対応駅と離れた場所に新幹線駅を設置するときは、対応駅名に「新」を冠すのが基本だった。1964年10月の東海道新幹線開業時に在来線駅と離れて設置された3駅のうち、横浜と大阪は新を冠し、新大阪は東海道本線上に、新横浜は横浜線に在来線駅が併設された。岐阜羽島は、駅が岐阜市内ではないこと、また名鉄岐阜駅が当時新岐阜駅だったため、県名と市名を並べて命名された。1975年3月の山陽新幹線博多延伸開業までは、岐阜羽島を除きすべて新を冠した命名である。新倉敷、新下関は、在来線の既設駅に併設され、新幹線開業時にそれぞれ玉島、長門一ノ宮から改称した。同じく既設駅に併設された小郡は、開業後28年を経て新山口に改称した。また新青森は、新幹線開業に24年先行して1986年11月1日に開業した。
東北新幹線・上越新幹線が開業した1982年以降、新を冠する駅が減った。東海道・山陽新幹線の新駅でも、三河安城は名鉄に新安城があるので、三河国特有の近隣国名駅として命名され、東広島は旧町名の西条に代えて、新市名を採用した。後閑と新田のような小駅に対応する新幹線駅に新を冠せず、全く別の駅名をつけることも、駅名自体はともかくとしてわからないではない。また、1997年以降開業の整備新幹線は、並行在来線が経営分離され、同一駅扱いをする対応駅がなくなり、新を冠する意味がなくなったともいえる。
注目すべきは、1982年6月東北新幹線開業時に、新白石でも不都合がないのに、白石蔵王としたあたりから、著名観光地名などとの複合地名駅化する傾向である。とくにJR東日本において顕著で、白石蔵王以降、燕三条、水沢江刺、安中榛名、本庄早稲田、七戸十和田、上越妙高と続く。JR西日本も黒部市に設置した新駅を黒部宇奈月温泉と命名、流行の温泉駅との複合駅名とした(同じ場所に新設された富山地方鉄道の新駅は新黒部)。JR北海道もJR東日本にならって、3駅中2駅を複合地名駅とし、さらに「新」と「奥」を冠した。
この中で、すべて「新*」駅としたJR九州の命名はオーソドックスで、新幹線の駅名らしい。なお、新水俣は経営分離された在来線にも同名駅ができた。
国鉄駅と同一構内にあるのに新を冠した駅は名鉄に多い。このほか、新名古屋と新一宮(非連絡駅)があったが、2005年1月29日新岐阜とともに「名鉄*」駅に改称した。名鉄には表6に示すとおり3種類の接頭語が混在し、依然として新が9駅と最多である(地名と認定した新舞子を除く)。名電は4駅あり、うち名古屋本線の3駅は愛知電気鉄道が開業し、旧接頭語の「愛電*」を改称した。
私鉄の既設駅に対応した国鉄・JR駅の「新*」駅は表7に示すとおり14駅ある。第1号は1943年の新子安駅だが、戦後急増した。
新駅 | 事業者・路線 | 開業日 | 対応駅 | 事業者・路線 | 駅名誕生日 |
新子安 | JR東日本・東海道本線 | 1943/11/01 | 子安 | 京急・本線 | 1905/12/24 |
新検見川 | JR東日本・総武本線 | 1951/07/15 | 検見川 | 京成・千葉線 | 1921/07/17 |
新長田 | JR西日本・山陽本線 | 1954/04/01 | 長田 | 山陽電気鉄道・本線 | 1910/03/15 |
新守山 | JR東海・中央本線 | 1964/04/01 | 守山町・守山市 | 名鉄・瀬戸線 | 1946/06/01 |
新杉田 | JR東日本・根岸線 | 1970/03/17 | 杉田 | 京急・本線 | 1931/05/01 |
新日本橋 | JR東日本・総武本線 | 1972/07/15 | 日本橋 | 東京メトロ・銀座線 | 1932/12/24 |
新小平 | JR東日本・武蔵野線 | 1973/04/01 | 小平 | 西武・新宿線 | 1927/04/16 |
新秋津 | JR東日本・武蔵野線 | 1973/04/01 | 秋津 | 西武・池袋線 | 1917/12/12 |
新八柱 | JR東日本・武蔵野線 | 1978/10/02 | 八柱 | 新京成電鉄(京成・松戸線) | 1955/04/21 |
新井口 | JR西日本・山陽本線 | 1985/03/14 | 井口 | 広島電鉄・宮島線 | 1924/04/06 |
新習志野 | JR東日本・京葉線 | 1986/03/03 | 習志野 | 新京成電鉄(京成・松戸線) | 1948/10/08 |
新木場 | JR東日本・京葉線 | 1988/12/01 | 木場 | 東京メトロ・東西線 | 1967/09/14 |
新浦安 | JR東日本・京葉線 | 1988/12/01 | 浦安 | 東京メトロ・東西線 | 1969/03/29 |
新白島 | JR西日本・山陽本線 | 2015/03/14 | 白島 | 広島電鉄・白島線 | 1912/11/23 |
国鉄の松山駅開業によって改称を余儀なくされた伊予鉄道の松山市駅のような例が「新*」駅に関連してもある。国鉄「新*」駅第1号の新子安の開業により、30年以上前の1910年3月27日に開業していた京急の新子安駅が京浜新子安に改称させられた(その後京急新子安に改称)。類似例としては、国鉄・JR清州駅と名鉄新清洲駅との関係がある[3]。
[1] | 対応駅がない新十津川(町名)、新河岸(河川名)、新南陽(旧市名)なども記載していない。なお、新十津川駅は2020年5月7日廃止。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
[2] | 1987年4月JR発足時点の「旅客連絡営業規則・旅客連絡営業基準規程」別表(通称、赤表紙)による(JR旅客連絡運輸規則別表(1987年4月1日現行)・JR旅客連絡運輸区域(1987年4月1日現行)を参照)。連絡運輸は縮小傾向にあり、JRと名鉄との連絡運輸は全廃した。他にもJRとの連絡運輸が廃止された事業者があると思われる。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
[3] | 国鉄・JR清州駅と名鉄新清洲駅の経緯は次表のとおり。
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2016/11/30: | 「まとめ」を記載。「隣接」のうち、同一構内にないケースなどを「近隣」として区別。表3の「新*」駅を、対応駅との直通列車の有無により分類。漏れていた横浜市営地下鉄新横浜の対応駅横浜及び東武新鎌ヶ谷の対応駅鎌ヶ谷を追加 |
2016/12/20: | 表3に漏れていた万葉線新吉久の対応駅吉久を追加 |
2017/03/25: | 表3の新八代(八代)を「直通列車がある駅」に訂正。脚注リンクの誤りを訂正 |
2018/09/30: | 表3の漏れ(新加美、新鳥栖)と駅数の誤記を訂正。脚注2のJR発足時点の「旅客連絡営業規則・旅客連絡営業基準規程」に、旅規ポータルのページへのリンクを挿入 |
2020/05/27: | 3月14日の新逗子駅の逗子・葉山への改称、5月7日の新十津川駅の廃止及び5月18日の新田老駅の開業に対応し、本文及び表2、表3、脚注1を改訂 |
2021/04/09: | 表3の新夕張(夕張駅2019年4月廃止)を取消線で削除、富山地方鉄道本線に新黒部(電鉄黒部)を追加。駅数は変更なし |
2022/03/12: | 3月12日のあいの風とやま鉄道新富山口駅の開業に伴い、冒頭の駅数を変更。「接頭語としての「新*」駅」に追記 |
2023/03/19: | 本日開業の東急と相鉄新横浜駅を表3に追加。また漏れていた2022年9月23日開業の新大村駅を表3及び表4に追加。表3に東京都・新御徒町(上野御徒町)、愛知環状鉄道・新豊田(三河豊田)など接頭語付きの駅を追加。 |
2023/03/21: | 表3の東京都に漏れていた新庚申塚(庚申塚)を追加 |
2025/02/10: | 表7に漏れていた新木場(木場)を追加 |
2025/04/01: | 新京成電鉄の京成との合併に対応、新津田沼、習志野、八柱の路線名に注記 |
2025/04/02: | 表7に漏れていた新杉田(杉田)を追加 |