駅名接頭・接尾語考


難読駅名、珍しい駅名、長い・短い駅名など、駅名に関するうんちくは、多くの鉄道雑学本が取り扱う鉄道趣味の一分野である。基本的に駅の名前は地名から名づけられるが、同じ地名に由来する他の駅と区別するため、接頭語・接尾語を加えることがある。いつも例に挙げられるのが浦和。本家に加え、東西南北、中、武蔵を頭に冠した7駅を数える。このような、駅名における接頭・接尾語について考察する。


目次

接頭語 接尾語
東西南北 東西南北口
本、新、中 本町、新、中央
、町
事業者名
旧国名、県名、郡名


「*市」駅

全国の基層自治体(東京都23区を除く市町村)のうち、自治体名と域内の鉄道駅名との関係が「平成の大合併」によりいかに推移したかを表1-1に示す(各年3月31日現在)。
 
表1-1 市町村名と駅名の関係
1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011
A:駅名=市町村名 504 504 502 502 502 501 501 490 493 492 493 494 494
B:市町村名+[市町村] 29 29 29 29 29 29 28 28 28 28 28 28 28
C:市町村名+他の接頭・接尾語 36 37 37 37 37 38 37 36 36 37 37 36 36
D:市町村名の一部を含む地名 18 18 18 19 19 22 26 35 36 36 36 38 39
E:市町村名と駅名が不一致 39 39 40 40 41 48 85 130 131 130 128 129 128
626 627 626 627 628 638 677 719 724 723 722 725 725
F:駅なし 44 44 44 45 47 51 55 58 58 60 61 61 61
合計 670 671 670 672 675 689 732 777 782 783 783 786 786
A 80.5% 80.4% 80.2% 80.1% 79.9% 78.5% 74.0% 68.2% 68.1% 68.0% 68.3% 68.1% 68.1%
A+B 85.1% 85.0% 84.8% 84.7% 84.6% 83.1% 78.1% 72.0% 72.0% 71.9% 72.2% 72.0% 72.0%
A+B+C 90.9% 90.9% 90.7% 90.6% 90.4% 89.0% 83.6% 77.1% 76.9% 77.0% 77.3% 77.0% 77.0%
A+B+C+D 93.8% 93.8% 93.6% 93.6% 93.5% 92.5% 87.4% 81.9% 81.9% 82.0% 82.3% 82.1% 82.2%
E 6.2% 6.2% 6.4% 6.4% 6.5% 7.5% 12.6% 18.1% 18.1% 18.0% 17.7% 17.9% 17.8%
93.4% 93.4% 93.4% 93.3% 93.0% 92.6% 92.5% 92.5% 92.6% 92.3% 92.2% 92.2% 92.2%
6.6% 6.6% 6.6% 6.7% 7.0% 7.4% 7.5% 7.5% 7.4% 7.7% 7.8% 7.8% 7.8%
町村 A:駅名=市町村名 667 667 667 661 657 643 502 294 280 281 275 257 257
B:市町村名+[市町村] 14 14 14 14 14 14 8 5 5 5 5 4 4
C:市町村名+他の接頭・接尾語 142 142 142 142 141 129 86 51 51 49 49 46 46
D:市町村名の一部を含む地名 60 60 60 60 60 59 53 38 38 38 38 35 36
E:市町村名と駅名が不一致 394 393 393 393 393 382 311 213 209 206 200 191 191
1277 1276 1276 1270 1265 1227 960 601 583 579 567 533 534
F:駅なし 1285 1282 1281 1281 1272 1216 829 443 439 431 427 408 407
合計 2562 2558 2557 2551 2537 2443 1789 1044 1022 1010 994 941 941
A 52.2% 52.3% 52.3% 52.0% 51.9% 52.4% 52.3% 48.9% 48.0% 48.5% 48.5% 48.2% 48.1%
A+B 53.3% 53.4% 53.4% 53.1% 53.0% 53.5% 53.1% 49.8% 48.9% 49.4% 49.4% 49.0% 48.9%
A+B+C 64.4% 64.5% 64.5% 64.3% 64.2% 64.1% 62.1% 58.2% 57.6% 57.9% 58.0% 57.6% 57.5%
A+B+C+D 69.1% 69.2% 69.2% 69.1% 68.9% 68.9% 67.6% 64.6% 64.2% 64.4% 64.7% 64.2% 64.2%
E 30.9% 30.8% 30.8% 30.9% 31.1% 31.1% 32.4% 35.4% 35.8% 35.6% 35.3% 35.8% 35.8%
49.8% 49.9% 49.9% 49.8% 49.9% 50.2% 53.7% 57.6% 57.0% 57.3% 57.0% 56.6% 56.7%
50.2% 50.1% 50.1% 50.2% 50.1% 49.8% 46.3% 42.4% 43.0% 42.7% 43.0% 43.4% 43.3%

平成の大合併は1999年4月1日の篠山市の誕生で始まったが、その前日の1999年3月31日現在、市域内に駅が存在した626市のうち、市名と一致する駅名は504市に存在し、80.5%にのぼっていた。このほかに、「*市」駅が29あり、これに旧国名等他の接頭・接尾語をつけたもの(36)、市名の一部または全部が駅名に使われているもの(18)を加えると93.8%であった。これに対して、町村の場合は、町村名と一致した駅名がある自治体は52.2%。 町や旧国名等の接頭・接尾語をつけたもの、町村名の一部または全部が駅名に使われているものを加えても69.1%で、町の中心部の字(大字)名など町名と一致しない名称がつけられている駅が1/3近くあった。このことから、市への昇格により市名と駅名を一致させる傾向があることがわかる。

平成の大合併が完了した2010年3月31日までの推移は、表1-1に示したとおり、「駅名=市名」が504から494に減少した[1-1]。一方、市名と駅名がまったく一致しない市が39から129と3倍以上となり、シェアも6.2%から17.9%と11.7ポイント増加した。合併により誕生した多くの市が、旧国名、郡名などの広域地名や合成地名などを新市名として採用したためである。一方町村は、2005年度までは、いずれのタイプも満遍なく減少したため、比率は大きく変わらななかった。その後合併が進むにつれて、市と同様「駅名=町村名」の比率が低下し、駅名と一致しない町村名が相対的に増加した。しかし、市町村名と域内の駅名が一致するケースは、町村よりも市のほうが多いという傾向は変わっていない。

接尾語としての「市」駅

さて、接尾語としての「市」駅を考察する。表1-2に表1-2に2004年4月現在存在した「*市」駅43市、44駅(事業者別には48駅)[1-2]とその駅名の変遷を示す(その後2010年3月14日阪急京都線に摂津市駅が開業した)。
 
表1-2 全国の*市駅
市名 駅名 事業者 開業日 改称日
十和田市 十和田市 十和田観光電鉄 1922/09/04 三本木 1969/05/15 十和田市
足利市 足利市 東武 1907/08/27 足利町 1924/08/25 足利市
佐野市 佐野市 東武 1914/08/02 佐野町 1943/04/01 佐野市
川越市 川越市 東武 1914/05/01 六軒町 19??/??/?? 川越町
1922/12/01 川越市
行田市 行田市 秩父鉄道 1921/04/01 行田 1966/06/01 行田市
狭山市 狭山市 西武 1895/03/21 入間川 1979/03/25 狭山市
入間市 入間市 西武 1915/04/15 豊岡町 1967/04/01 入間市
和光市 和光市 東武 1934/02/01 新倉 (ニイグラ) 1934/07/12 新倉 (ニイクラ)
1951/10/01 大和町
1970/12/01 和光市
和光市 営団 1987/08/25 和光市
野田市 野田市 東武 1911/05/09 野田町 1950/05/30 野田市
東大和市 東大和市 西武 1950/05/15 青梅橋 1979/03/25 東大和市
都留市 都留市 富士急行 1929/06/19 谷村横町 1965/03/01 都留市
山梨市 山梨市 JR東日本 1903/06/11 日下部 1962/01/15 山梨市
伊那市 伊那市 JR東海 1912/05/14 伊那町 1954/11/10 伊那市
美濃市 美濃市 長良川鉄道 1923/10/05 美濃町 1954/11/10 美濃市
土岐市 土岐市 JR東海 1902/12/21 土岐津 1965/07/01 土岐市
瀬戸市 瀬戸市 愛知環状鉄道 1988/01/31 瀬戸市 1914/02/05 刈谷町
刈谷市 刈谷市 名鉄 1914/02/05 刈谷町 1952/03/01 刈谷市
豊田市 豊田市 名鉄 1920/11/01 挙母 1959/10/01 豊田市
伊勢市 伊勢市 JR東海 1897/11/11 山田 1959/07/15 伊勢市
伊勢市 近鉄 1930/09/21 山田 1959/07/15 伊勢市
上野市伊賀市 上野市 近鉄 1916/08/08 上野町 1941/09/10 上野市
鈴鹿市 鈴鹿市 近鉄 1925/12/20 伊勢神戸 1963/04/08 鈴鹿市
熊野市 熊野市 JR東海 1940/08/08 紀伊木本 1959/07/15 熊野市
八幡市 八幡市 京阪 1910/04/15 八幡 1939/12/25 岩清水八幡宮前
1948/01/01 八幡町
1977/11/01 八幡市
堺市 堺市 JR西日本 1937/09/03 阪和堺 1940/12/01 境金岡
1944/05/01 金岡
1965/03/01 堺市
高槻市 高槻市 阪急 1928/01/16 高槻町 1943/01/01 高槻市
守口市 守口市 京阪 1910/04/15 守口 1971/06/20 守口市
枚方市 枚方市 京阪 1910/04/15 枚方東口 1949/10/01 枚方市
茨木市 茨木市 阪急 1928/01/16 茨木町 1948/01/01 茨木市
寝屋川市 寝屋川市 京阪 1910/04/15 寝屋川 1951/08/20 寝屋川市
門真市 門真市 京阪 1971/06/20 新門真 1975/03/23 門真市
門真市 大阪高速鉄道 1997/08/22 門真市
摂津市 摂津市 阪急 2010/03/14 摂津市
交野市 交野市 京阪 1929/07/10 交野 1977/11/01 交野市
大阪狭山市 大阪狭山市 南海 1898/01/26 狭山遊園前 2000/12/23 大阪狭山市
西脇市 西脇市 JR西日本 1913/10/22 野村 1990/04/01 西脇市
大和高田市 高田市 近鉄 1929/03/29 高田町 1948/01/01 高田市
和歌山市 和歌山市 JR西日本 1903/03/21 和歌山市
和歌山市 南海 1903/03/21 和歌山市
出雲市 出雲市 JR西日本 1910/10/10 出雲今市 1957/10/01 出雲市
電鉄出雲市 一畑電鉄 1914/04/29 出雲今市 1957/10/01 出雲市
1964/04/01 電鉄出雲市
大田市 大田市 JR西日本 1915/07/11 石見大田 1971/02/01 大田市
平田市 平田市雲州平田 一畑電鉄 1914/04/29 雲州平田 1970/10/01 平田市
倉敷市 倉敷市 水島臨海鉄道 1948/08/20 倉敷市 1924/11/03 正明市
長門市 長門市 JR西日本 1924/11/03 正明市 1962/11/01 長門市
松山市 松山市 伊予鉄道 1888/10/28 松山 1889/07/20 外側
1902/06/01 松山
1927/03/01 松山市
伊予市 伊予市 JR四国 1930/02/27 南郡中 1957/04/01 伊予市
日向市 日向市 JR九州 1921/10/11 富高 1963/05/25 日向市

先輩に敬意を表す

この「*市」駅のうち、接尾語の「市」がつかない駅名(旧国名等の接頭語を冠している駅名を含む)が隣接して存在するケースが次の18駅ある。
 
表1-3 「*市」駅と隣接*駅
駅名 事業者 開業日 改称日 同名駅 事業者 開業日 備考
足利市 東武 1907/08/27 足利 JR東日本 1888/05/22
佐野市 東武 1914/08/02 佐野 JR東日本・東武 1888/05/22
川越市 東武 1914/05/01 川越 JR東日本・東武 1915/04/01 東武所属
行田市 秩父鉄道 1921/04/01 1966/06/01 行田 JR東日本 1966/07/01
瀬戸市 愛知環状鉄道 1988/01/31 尾張瀬戸 名鉄 1905/04/02
刈谷市 名鉄 1914/02/05 刈谷 JR東海 1888/09/01
上野市 近鉄 1916/08/08 伊賀上野 JR西日本 1897/01/15
鈴鹿市 近鉄 1925/12/20 1963/04/08 鈴鹿 伊勢鉄道 1973/09/01
堺市 JR西日本 1937/09/03 1965/03/01 南海 1888/05/15
高槻市 阪急 1928/01/16 高槻 JR西日本 1876/07/26
守口市 京阪 1910/04/15 1971/06/20 守口 大阪市交通局 1983/02/08
茨木市 阪急 1928/01/16 茨木 JR西日本 1876/08/09
摂津市 阪急 2010/03/14 摂津 大阪高速鉄道 1997/08/27
大阪狭山市 南海 1898/01/26 2000/12/23 狭山 南海 1898/01/26
高田市 近鉄 1929/03/29 高田 JR西日本 1891/03/01
和歌山市 JR西日本・南海 1903/03/21 和歌山 JR西日本 1898/05/04 現紀和
倉敷市 水島臨海鉄道 1948/08/20 倉敷 JR西日本 1891/04/25
松山市 伊予鉄道 1888/10/28 1927/03/01 松山 JR四国 1927/04/03
注) 市駅への改称日(「*町」駅から「*市」駅への改称を除く)

地名のみの駅が存在し、その隣接地に新たに駅を設置するときは、既存駅に敬意を表して「新」、「本」や事業者名など、既存駅名に接頭・接尾語を加えた駅名をつけるのが一般的である。「*市」駅はその一つの命名法であり、この範疇に該当するのが、足利市、佐野市、刈谷市、上野市、高槻市、茨木市、高田市(以上開業当時は「*町」)及び瀬戸市、和歌山市、倉敷市の各駅である。とくに、先行して開業した国鉄駅が市街地から離れた場所にあり、その後私鉄が市の中心部に駅を設置するようなときに、このような命名法が採られた。摂津市駅も先行開業の摂津があるが、旧国名市については後述する。

これに対して、後に国鉄駅が開業したため、先行して設置されていた私鉄の駅が改称を余儀なくされたケースがある。これに該当するのが伊予鉄道・松山市と秩父鉄道・行田市駅で、もともと市をつけない駅名を名乗っていたが、国鉄の同名駅開業にほぼ1ヶ月先行して、それぞれ「*市」に改称した。 川越市は、川越駅よりも早く開業したが、六軒町から川越町への改称日(不明)が川越駅の開業よりも遅かったものと思われる。

鈴鹿市は伊勢神戸からの改称であるが、当時伊勢鉄道(旧国鉄伊勢線)の鈴鹿は開業していなかったにもかかわらず鈴鹿市と名乗った。これは、町村合併による新市名に広域地名を採用したグループ(後述)に属する。京阪の守口市駅も、従来単に守口と称していたが、守口市に改称後、大阪市地下鉄の守口駅が開業したもので、この分類にはあてはまらない。京阪の「*市」駅については後で触れる。

市制施行による改称

前述したとおり、町村合併等により市に昇格したときに市名を駅名に一致させるという傾向がある。市制施行による「 *市」駅の改称の経緯を表1-4に示す。
 
表1-4 市制施行による駅名改称
駅名 事業者 駅名改称日 旧駅名 市制施行日 旧市町村名
十和田市 十和田観光電鉄 1969/05/15 三本木 1956/10/10 三本木市 (1955/2/1、三本木町、大深内村、藤坂村、四和村合併により市制施行)
足利市 東武 1924/08/25 足利町 1921/01/01 足利町
佐野市 東武 1943/04/01 佐野町 1943/04/01 佐野町、植野村、界村、犬伏町、堀米町、旗川村
川越市 東武 1922/12/01 川越町 1922/12/01 川越町、仙波村
行田市 秩父鉄道 1966/06/01 行田 1949/05/03 忍町
狭山市 西武 1979/03/25 入間川 1954/07/01 入間川町、入間村、堀兼村、奥富村、柏原村、水富村
入間市 西武 1967/04/01 豊岡町 1966/11/01 武蔵町 (1956/9/30、豊岡町、金子村、宮寺村、藤沢村、西武町の一部が合併)
和光市 東武 1970/12/01 大和町 1970/10/31 大和町
野田市 東武 1950/05/30 野田町 1950/05/03 野田町、梅郷村、旭村、七福村
東大和市 西武 1979/03/25 青梅橋 1970/10/01 大和町
都留市 富士急行 1965/03/01 谷村横町 1954/04/29 谷村町、宝村、禾生村、盛岡村、東桂村
山梨市 JR東日本 1962/01/15 日下部 1954/07/01 加納岩町、日下部町、八幡村、山梨村、日川村、後屋敷村、岩手村
伊那市 JR東海 1954/11/10 伊那町 1954/04/01 伊那町、手良村、美篶村、富県村、東春近村、西箕輪村
美濃市 長良川鉄道 1954/11/10 美濃町 1954/04/01 美濃町、大矢田村、上牧村、下牧村、洲原村、藍見村、中有知村
土岐市 JR東海 1965/07/01 土岐津 1955/02/01 土岐津町、駄知町、曽木村、鶴里村、下石町、妻木町、肥田村、泉町
瀬戸市 愛知環状鉄道 1988/01/31 瀬戸市 1929/10/01 瀬戸町
刈谷市 名鉄 1952/03/01 刈谷町 1950/04/01 刈谷町
豊田市 名鉄 1959/10/01 挙母 1959/04/01 挙母市 (1951/3/1、挙母町が昇格市制施行)
伊勢市 JR東海・近鉄 1959/07/15 山田 1955/01/01 宇治山田市 (1906/9/1、宇治山田町が昇格市制施行)
上野市 近鉄 1941/09/10 上野町 1941/09/10 上野町、小田村、三田村、城南村、新居村、長田村、花之木村
鈴鹿市 近鉄 1963/04/08 伊勢神戸 1942/12/01 国府村、庄野村、高津瀬村、牧田村、石薬師村、白子町、神戸町、稲生村、飯野村、河曲村、一ノ宮村、箕田村、玉垣村、若松村
熊野市 JR東海 1959/07/15 紀伊木本 1954/11/03 木本町、荒阪村、新鹿村、有井村、神川村、五郷村、飛鳥村、泊村
八幡市 京阪 1977/11/01 八幡町 1977/11/01 八幡町
堺市 JR西日本 1965/03/01 金岡 1889/04/01
高槻市 阪急 1943/01/01 高槻町 1943/01/01 高槻町
守口市 京阪 1971/06/20 守口 1946/11/01 守口町、三郷町
枚方市 京阪 1949/10/01 枚方東口 1947/08/01 枚方町
茨木市 阪急 1948/01/01 茨木町 1948/01/01 茨木町、三島村、春日村、玉櫛村
寝屋川市 京阪 1951/08/20 寝屋川 1951/05/03 寝屋川町
門真市 京阪 1975/03/23 新門真 1963/08/01 門真町
交野市 京阪 1977/11/01 交野 1971/11/03 交野町
大阪狭山市 南海 2000/12/23 狭山遊園前 1987/10/01 狭山町
西脇市 JR西日本 1990/04/01 野村 1952/04/01 西脇町、日野村、重春村、比延庄村
高田市 近鉄 1948/01/01 高田町 1948/01/01 高田町
和歌山市 JR西日本 1903/03/21 和歌山市 1889/04/01
出雲市 JR西日本 1957/10/01 出雲今市 1941/11/03 出雲町
大田市 JR西日本 1971/02/01 石見大田 1954/04/01 大田町、久手町、波根東村、鳥井村、長久村、川合村、久利村、静間村
平田市 一畑電鉄 1970/10/01 雲州平田 1955/01/01 平田町、佐香村、北浜村
倉敷市 水島臨海鉄道 1924/11/03 倉敷市 1928/04/01 倉敷町
長門市 JR西日本 1962/11/01 正明市 1954/03/31 仙崎町、深川町、通村、俵山村
松山市 伊予鉄道 1927/03/01 松山 1889/04/01
伊予市 JR四国 1957/04/01 南郡中 1955/01/01 郡中町、南伊予村、北山崎村、南山崎村
日向市 JR九州 1963/05/25 富高 1951/04/01 富島町、岩脇村

市制施行にあたって旧町名を使用したか、別の名前をつけたか(その後の市名の改称を含む)によって、「*市駅」の性格が異なる。町名のまま市に昇格した (市制発足と同時に市制施行した堺、和歌山、松山を含む)のは、

足利、佐野、川越、野田、伊那、美濃、瀬戸、刈谷、上野、八幡、堺、高槻、守口、枚方、茨木、寝屋川、門真、交野、大阪狭山、西脇、(大和)高田、和歌山、出雲、大田、平田、倉敷、松山
の27市、新市名を付けたのは、
十和田、行田、狭山、入間、和光、東大和、都留、山梨、土岐、豊田、伊勢、鈴鹿、熊野、長門、伊予、日向
の16市である。

町名のまま市に昇格したグループは、隣接して同名駅があるためにもともと「*町」駅であったものほとんどである。このような「*町」駅から「*市」駅への改称は、市制施行と同時または直後に行われることが多い(同一町名からの昇格でもまだ改称されていない向日町のような例外もある)。逆に、新市名に従来の市町村名と異なった名前を採用した場合、隣接同名駅の有無にかかわらず「*市」駅となる(このグループで隣接同名駅が存在するのは、行田市のみである)。このケースでは、市制施行の直後に改称という例は和光市しかなく、10年程度経過して新市名がこなれてから改称される例が多い。

市制施行にあたって旧町名を変更する場合、広い地域をカバーする地名や抽象的な名称が市名に採用される。広域地名の中で多く使われるのは旧国名である。市昇格にあたって旧国名を採用した伊勢市、長門市、伊予市、日向市の4市は、代表駅名も「*市」駅に改称した。このほかに、町名のまま市に昇格した美濃市と出雲市も、「*市」駅である。美濃市は市名・駅名ともに美濃町からの改称であり、出雲市は出雲町時代の駅名の出雲今市が出雲市に改称された。なお、北海道の北見、釧路、根室の各駅は、旧国名が市名となっているが、駅名に「市」をつけていない[1-3]

旧国名市が「*市」駅を称するのは、旧国名が接頭語となっている他の駅と紛らわしくなるのを避けるためだろう。たとえば出雲を接頭語とする駅は6駅ある。大阪高速鉄道の摂津駅は、モノレール路線なので、「摂津」を冠した他の駅と混同されることはないと判断したためか。その後2010年に開業した阪急京都線の新駅は、摂津市駅となった。なお、いわき市のようにひらがなの市は、このルールにあてはまらないようだ。旧国名の磐城を冠した駅は多数あるが、合併により誕生したいわき市は、「平」を「いわき」に改称した。大湊(むつ市)や志度(さぬき市)も、将来改称されることがあれば、市をつけずに「むつ」や「さぬき」になるだろう[1-4]

入間市、都留市、山梨市、土岐市、鈴鹿市は、郡名を新市名に採用した。同名の伊那町から昇格した伊那市も、伊那松島など9駅の接頭語に使われている郡名であり、町時代の駅名も伊那町だった。山梨市は郡名=県名を採用したものだが、他に山梨を冠した駅名がなくとも、単に山梨とすると紛らわしい。入間市は旧国名の武蔵町からの改称であるが、駅名は武蔵町の前身である豊岡町からの改称となった。

十和田市は三本木からの改称であるが、十和田は十和田湖として有名な地名(十和田湖町も存在したが、2005/01/01十和田市と合併した)であるので、市をつけたのだろう。豊田市は挙母が市名をトヨタ自動車に合わせて改称したときに、「*市」駅として誕生した。和光市は公募された抽象市名である。

狭山市は、市制施行に伴う入間川からの改称であるが、狭山が広域地名であることと同時に、南海高野線に狭山駅が存在したことも影響していると思われる。逆に、大阪の狭山町が後に市に昇格したときに、既に狭山市が存在したために、大阪狭山市と名乗ることになった。そして、狭山ではなく狭山遊園前が大阪狭山市に改称され、「*市」駅となった。

その他のパターン

以上のルールに当てはまらないのが、京阪の「*市」駅と野田市、西脇市、平田市(出雲市への合併によりもとの雲州平田に戻った)、大田市である。これらは、開業(改称)当時隣接地に同名駅もなく、同名町からの市昇格であるが「*市」を名乗っている。

京阪の「*市」駅6駅のうち、八幡市、守口市、寝屋川市、交野市の4駅は、単に「*」駅だったのをわざわざ「*市」駅に改称したものである。なお門真市は新門真から、枚方市は枚方東口からの改称である。京阪には、かつて存在した駅名を再使用しないというルールがあるようだ。八幡市は1910年の開業時には「八幡=はちまん」であったが、その後「石清水八幡宮前」、「八幡町」に改称され、1977年の市制施行に伴い「八幡市」となった。門真市の場合は、門真駅が西三荘と新門真とに分駅され、その後新門真が門真市となった。かつて存在した枚方駅は現在の枚方公園駅であり、枚方市駅は枚方東口からの改称である。守口市、寝屋川市、交野市は、枚方市、八幡市の改称時にそろえて変更になったもの。その結果京阪線の市代表駅はすべて「*市」駅となった。

野田市は野田町から、平田市は雲州平田から改称された(平田市は出雲市への合併によりもとに戻った)。これは、遠隔地にある同名駅(国鉄西成線野田駅、近江鉄道の平田駅)と区別するためだろうか。西脇市は、西脇町からの昇格であるが、駅名は西脇市を名乗っている。1990年4月鍛冶屋線「西脇」駅の廃止に伴い、代わりに野村を西脇市に改称し、市代表駅名ととしたものである。1971年2月石見大田から改称した大田市は、このルールから外れている。1955年に同名の大田町からの昇格であり、隣接地にも遠隔地にも同名駅はないが、「*市」駅となっている。

まとめ

さて、以上考察したように、「*市」駅は隣接する「*」駅と区別するために、または広域・抽象地名を市名として採用した場合に、命名されるようだ。これを市制施行(改称)にあたって旧町名のままか、異なった名前を採用したかという二つの視点から分類すると表1-5のようになる。
 
表1-5 「*市」駅の分類
隣接駅との区別 広域・抽象地名の市名 その他・不明
町名のまま市に昇格 足利市、佐野市、川越市、瀬戸市、刈谷市、上野市、堺市、高槻市、茨木市、大阪狭山市、(大和)高田市、和歌山市、倉敷市、松山市 美濃市、出雲市(国名)、伊那市(郡名) 八幡市、守口市、枚方市、寝屋川市、門真市、交野市(京阪)、野田市、平田市(遠隔同一駅名?)、西脇市(旧隣接同一駅名)、大田市(不明)
旧町村名と異なった市名 行田市 摂津市、伊勢市、長門市、伊予市、日向市(国名)、入間市、都留市、山梨市、土岐市、鈴鹿市(郡名)、十和田市、狭山市、入間市、熊野市(その他広域地名)、和光市、東大和市、豊田市(抽象地名等)  


「旧国名*」駅

駅名の接頭語としての旧国名を考える。「国」は7世紀後半から明治時代まで、日本の地理的区分の基本単位であった。最近の歴史学では、律令制に基づいて設置されたことから、令制国(りょうせいこく)と呼ばれているらしい。令制国は、奈良時代末までに68国が成立し、平安時代から江戸時代まで変更がなかった。明治時代初期の1869年に、陸奥が5国、出羽が2国に分割され、蝦夷地を北海道と改め11国が設置された。

国名はすべて漢字二字からなっているが、その一字をとって「*州」と呼ぶ通称があり、駅名の接頭語としても使用されている。
 

表2-1 旧国名一覧
畿・道 国名(通称)
畿内 山城(山州、城州) 大和(和州) 河内(河州) 和泉(泉州) 摂津(摂州)
東海道 伊賀(伊州) 伊勢(勢州) 志摩(志州) 尾張(尾州) 三河(三州) 遠江(遠州) 駿河(駿州) 伊豆(豆州) 甲斐(甲州) 相模(相州) 武蔵(武州) 安房(房州) 上総(総州) 下総(総州) 常陸(常州)
東山道 近江(江州) 美濃(濃州) 飛騨(飛州) 信濃(信州) 上野(上州) 下野(野州) 陸奥(奥州) [陸奥] [陸中] [陸前] [磐城] [岩代] 出羽(羽州) [羽前] [羽後]
北陸道 若狭(若州) 越前(越州) 加賀(加州) 能登(能州) 越中(越州) 越後(越州) 佐渡(佐州)
山陰道 丹波(丹州) 丹後(丹州) 但馬(但州) 因幡(因州) 伯耆(伯州) 出雲(雲州) 石見(石州) 隠岐(隠州)
山陽道 播磨(播州) 美作(作州) 備前(備州) 備中(備州) 備後(備州) 安芸(芸州) 周防(防州) 長門(長州)
南海道 紀伊(紀州) 淡路(淡州) 讃岐(讃州) 伊予(予州) 阿波(阿州) 土佐(土州)
西海道 筑前(筑州) 筑後(筑州) 豊前(豊州) 豊後(豊州) 肥前(肥州) 肥後(肥州) 日向(日州、向州) 大隅(隅州) 薩摩(薩州) 壱岐(壱州) 対馬(対州)
北海道 [渡島] [後志] [胆振] [石狩] [天塩] [北見] [日高] [釧路] [十勝] [根室] [千島]
[ ]は、1869年設置

非接頭語国名駅

次の駅は「国名*」駅であるが、国名が接頭語として使われているわけではない。
 
表2-2 非国名接頭語駅
  同国 他国
旧国名単独駅 摂津(大阪高速鉄道)、紀伊(JR西・阪和)、北見(JR北・石北)、釧路(JR北・根室)、根室(JR北・根室) 山城(伊勢、三岐鉄道)、大和(相模、小田急・江ノ島=相鉄・本、常陸、JR東・水戸)、河内(備後、JR西・山陽)、伊賀(筑前、JR九・香椎)、日向(下総、JR東・総武)、磐城(河内、近鉄・南大阪)、但馬(大和、近鉄・田原本)、播磨(美濃、養老鉄道)、淡路(摂津、阪急・京都本)、安芸(土佐、土佐くろしお・阿佐)
国名+市・町 摂津市(阪急・京都)、美濃市(長良川鉄道)、伊勢市(JR海・参宮)、出雲市(JR西・山陰)、長門市(JR西・山陰)、伊予市(JR四・予讃)、日向市(JR九・日豊)、播磨町(山陽電鉄)  
国名+非地名 近江神宮前(京阪・石山坂本)、遠州病院前(遠州鉄道)、伊豆高原(伊豆急)、相模湖(JR東・中央)、信濃平(JR東・飯山)、加賀温泉(JR西・北陸)、丹波口(JR西・山陰)、丹波橋(京阪・本)、出雲大社前(一畑電鉄・大社)、長門峡(JR西・山口) 大和川(和泉、阪堺電軌・阪堺)、武蔵塚(JR九・豊肥)、能登川(近江、JR西・東海道)、越中島(武蔵、JR東・京葉)、肥後橋(摂津、大阪市・四つ橋)
国名を含む地名 相模原(JR東・横浜)、さがみ野(相鉄・本)、武蔵野台(京王・京王)、能登部(JR西・七尾)、安芸津(JR西・呉) 和泉多摩川(武蔵、小田急・本)、伊賀和志(備後、JR西・三江)、伊勢田(山城、近鉄・京都)、伊勢崎(上野、JR東・両毛)、伊勢原(相模、小田急・本)、伊勢佐木長者町(武蔵、横浜市)、三河島(武蔵、JR東・常磐)、三河内(肥前、JR九・佐世保)、信濃町(武蔵、JR東・中央)、出雲崎(越後、JR東・越後)
他の接頭語 伊豆急下田(伊豆急)  

旧国名を単独で名乗る駅のうち、摂津は、摂津市にあり、「*市」駅の脚注[1-3]で、北海道の旧国名市とともにとりあげた。紀伊は、和歌山市の紀伊支所管内(旧紀伊村)にある。紀伊国府が置かれていた場所であり、この付近の「き」(木→紀)という地域呼称が国名の紀伊となり、明治になって村名として国名が逆輸入されたものらしい。他の10駅、山城、大和、河内、伊賀、日向、磐城、但馬、播磨、淡路、安芸は、他国にある別の地名に由来する。

旧国名市駅は、「*市」駅でとりあげた。播磨町は播磨国にある「*町」駅である。

自然景観や人工の施設名等の非地名に国名を冠して、駅名としているものもある。このうち越中島と肥後橋は、それぞれ江戸時代存在した、榊原越中守の別邸、肥後・熊本藩の蔵屋敷に由来する。武蔵塚は、近隣にある宮本武蔵のものといわれる墓から命名されており、国名の武蔵ではない。

「国名+非地名」グループと、完全に区別できるわけではないが、国名を含む地名のグループがある。能登部は、中能登町の、伊勢田は宇治市の、伊賀和志(いかわし)は三次市の字名である。安芸津も安芸+津ではない。開業時は三津町にあり安芸三津と称する「国名*」駅であったが、1943年三津町など3町村が合併し、安芸津町が誕生したことにより、1949年駅名も改められた(現在は東広島市)。

接頭語としての旧国名駅

残る接頭語としての「旧国名*」駅は、別表1に示すように、618駅ある(複数事業者の同一名共同使用駅は一個として計算)。国ごとの「国名*」駅の数を表2-3に示す。
 
表2-3 国別「国名*」駅数
国名 JR 私鉄 共用
1 伊予 26 25 1  
2 武蔵(含む武州) 25 12 15 2 武蔵小杉、武蔵境
2 紀伊 25 21 4  
4 越後 23 23 0  
5 陸前 22 21 1  
6 三河 17 9 8  
6 信濃(含む信州) 17 10 7  
6 伊勢 17 8 9  
6 上総 17 6 12 1 上総中野
10 羽前 16 15 1  
10 土佐 16 12 4  
12 阿波 15 15 0  
12 越前 15 9 6  
14 肥前 14 14 0  
15 陸中 12 10 2  
15 越中 12 6 6  
17 陸奥 11 11 0  
17 筑前 11 11 0  
17 羽後 11 8 4 1 羽後本荘
17 美濃(含む美乃) 11 4 8 1 美濃太田
17 河内 11 2 10 1 河内長野
22 備後 10 10 0  
23 美作 9 9 0  
23 豊後 9 9 0  
23 遠江(含む遠州) 9 0 9  
国名 JR 私鉄 共用
26 飛騨 8 8 0  
26 甲斐 8 8 0  
26 磐城 8 8 0  
26 日向 8 8 0  
26 石見 8 8 0  
26 備前 8 8 0  
26 長門 8 8 0  
26 大和 8 3 5  
34 常陸 7 7 0  
34 近江 7 7 1 1 近江八幡
34 安芸 7 7 0  
34 讃岐 7 7 0  
34 備中 7 6 1  
34 薩摩 7 5 2  
34 和泉(含む泉) 7 4 3  
34 肥後 7 3 4  
34 伊豆 7 1 6  
34 出雲(含む雲州) 7 6 1  
44 豊前 6 5 1  
44 播磨(含む播州) 6 4 2  
44 尾張 6 2 4  
47 下総 5 5 0  
47 周防 5 5 0  
47 渡島 5 5 0  
47 石狩 5 5 0  
国名 JR 私鉄 共用
47 下野(含む野州) 5 2 3  
47 上州 5 0 5  
53 安房 4 4 0  
53 若狭 4 4 0  
53 日高 4 4 0  
53 相模 4 1 3  
53 志摩 4 0 4  
53 丹後 4 0 4  
53 筑後 4 4 0  
60 大隅 3 3 0  
60 伊賀 3 1 4 2 伊賀上野、伊賀神戸
60 能登 3 1 2  
63 山城 2 2 0  
63 摂津 2 2 0  
63 丹波 1 1 0  
63 因幡 2 2 0  
63 伯耆 2 2 0  
63 駿河 2 1 1  
69 加賀 1 1 0  
69 岩代 1 1 0  
69 手塩 1 1 0  
69 十勝 1 1 0  
69 但馬 1 0 1  
617 460 166 9  
計は二社以上の事業者の共用駅を除いた数

「国名(州名)*」駅がないのは、鉄道の設置されていない離島5国(佐渡、隠岐、淡路、壱岐、対馬)及び北海道の6国(後志、胆振、北見、釧路、根室、千島)である。かつては淡路に鉄道があったが、「淡路*」駅はなかった。北海道では、北見と根室にも「国名*」駅が存在したが全て廃止された。

その他の国には、「国名(州名)*駅」が存在する。なお、上野国には、上野を冠した駅はなく、「上州*」駅のみが存在する。また県名の群馬を冠した駅が5個ある。

表2-4に事業者別の「国名*」駅数を示す。二社の共用駅は事業者ごとにカウントしたので、合計は626駅となる。
 

表2-4 事業者別「国名*」駅数
JR 大手私鉄 国鉄・JR転換3セク その他私鉄
JR東日本 146 近鉄 26 北近畿たんご鉄道 5 小湊鉄道 9
JR西日本 135 名鉄 8 肥薩おれんじ 5 遠州鉄道 7
JR九州 62 南海 7 土佐くろしお 4 養老鉄道 6
JR四国 59 東武 6 秋田内陸縦貫鉄道 3 上信電鉄 5
JR東海 42 西武 6 三陸鉄道 3 富山地方鉄道 5
JR北海道 16 東急 3 いすみ鉄道 3 えちぜん鉄道 5
  小田急 1 のと鉄道 2 長野電鉄 4
相鉄 1 しなの鉄道 2 伊豆急行 4
京阪 1 長良川鉄道 2 秩父鉄道 3
  天竜浜名湖鉄道 2 伊豆箱根鉄道 3
愛知環状鉄道 2 伊賀鉄道 2
北条鉄道 2 福島交通 1
神岡鉄道 2 松本電鉄 1
高千穂鉄道 2 大井川鐵道 1
山形鉄道 1 豊橋鉄道 1
由利高原鉄道 1 東海交通事業 1
富山ライトレール 1 三岐鉄道 1
伊勢鉄道 1 近江鉄道 1
若桜鉄道 1 紀州鉄道 1
平成筑豊鉄道 1 一畑電鉄 1
くま川鉄道 1 井原鉄道 1
  伊予鉄道 1
福井鉄道 1
鹿島鉄道 1
北陸鉄道 1
460 59 42 65

JRでは、国別1位の伊予、10位タイの土佐、阿波、35位の讃岐を抱えるJR四国の健闘がめだつ。大手私鉄では、京成、京王、京急、阪急、阪神、西鉄に「国名*」駅が存在しない。これらは、都市内及び都市間の軌道を起源としているという共通点がある。また地下鉄及び路面電車の公営交通にも「国名*」駅はない。国鉄・JRから転換した第三セクターの多くの路線で、転換時に「国名*」駅の国名が外され、甘木鉄道と松浦鉄道は全廃となった。

旧国名駅と基本地名駅

接頭語としての旧国名駅は、[国名+基本地名]という構造をもつ。なお、大和だけは、国名としても基本地名としても使われている。

「国名*」駅は、全国各地に存在する同じ基本地名を単独で名乗る駅(単独基本地名駅)または同じ基本地名に他の国名を冠した駅と区別するために命名される。この点で、同一の場所に基本地名を用いた複数の駅が設置されるとき、隣接駅と区別するために使われる「新*」、「本*」や「*市」などの他の接頭接尾語と異なる[2-1]

表2-5に「国名*」駅に使われている基本地名の数を、「国名*」駅と単独基本地名駅のマトリックスで示す。
 

表2-5 「国名*」駅と基本地名駅の数
  単独基本地名駅
「国名*」駅 0 1 2 3 4 5 6
1 365 107 185 50 16 6 0 1
2 60 13 26 10 6 4 1 0
3 26 6 12 5 3 0 0 0
4 5 0 2 2 1 0 0 0
5 4 0 0 1 2 0 0 1
6 1 0 0 1 0 0 0 0
8 1 0 1 0 0 0 0 0
462 126 226 69 28 10 1 2

表の縦軸は「国名*」駅の数を示す。 「国名*」駅に使用される基本地名は462種類ある。一宮(一ノ宮を含む)が最も多くの「国名*」駅に使われている基本地名で、尾張一宮、上総一ノ宮など8駅あり、このほかに単独の一宮駅がある(加賀一の宮が2009年11月1日廃止され、9から8に減った)。第2位は、中川の6駅(単独基本地名駅が2駅)。基本地名が五つの「国名*」駅に使われているのは、高田、富田、山田、大宮の4種類ある。基本地名が1国にしかないのは、365種類ある。

横軸は対応する基本地名駅の数を示す。大町を基本地名とする「国名*」駅は信濃大町しかないが、単独の大町駅は6駅ある。一方、「国名*」駅だけが存在し、対応する基本地名駅がないのが126組ある。 このうち、単独基本地名駅も、他の「国名*」駅も存在せず、区別する対象がないの国名を冠している駅が、羽前赤倉(JR東・陸羽東)、安芸阿賀(JR西・呉)など107駅ある。

一般に、同じ基本地名を有する場所のうち、最も著名な土地に鉄道が早く開業することが多い。したがって、単独基本地名駅が先行開業しているとき、あとから開業する、知名度が低い同じ基本地名の駅は、「国名*」駅と命名される。たとえば1921年3月20日に開業した陸奥横浜(青森県上北郡横浜町)は、鉄道の発祥地であり、全国区の大都市でもある横浜駅(1872/07/10開業)に敬意を表して、陸奥を接頭語とした。

著名な駅名は市の代表駅に限らない。東京の一大ターミナル駅上野(日本鉄道として1883/07/28開業)に対し、伊賀上野(JR西・関西=伊賀鉄道、1897/01/15開業)、伊勢上野(伊勢鉄道、1987/03/27開業)、甲斐上野(JR海・身延、1928/03/30開業)が国名を冠している。このうち伊賀上野は、関西鉄道の駅として開業した当時、単に上野と称しており、1907年の鉄道国有化法による買収を経て、1916年9月11日改称されたものである。

赤穂浪士で有名な赤穂が播州赤穂を名乗っているのは、1951年の開業当時、飯田腺の現駒ヶ根が赤穂と称していたからである。このように、先輩と後輩の序列は結構厳しい。ただし、後述するように、さまざまな例外がある。

ここで、最も多い組み合わせである「国名*」駅と基本地名駅が1対1対応している185組について、「国名*」駅と単独基本地名駅の開業日を比較した[2-2]。 185組のうち、156組は基本地名駅の開業が「国名*」駅に先行している。この中には、川崎と豊前川崎(JR九・日田彦山)、鳥取と和泉鳥取(JR西・阪和)、宮崎と越中宮崎(JR西・北陸)など、政令指定都市や県庁所在地の代表駅が含まれる。逆に「国名*」駅が単独基本地名駅より早く開業した残りの29組を、表2-6に示す。
 

表2-6 単独基本地名駅より早く開業した「国名*」駅
「国名*」駅 事業者・路線 開業日 改称日 旧駅名 基本地名駅 事業者・路線 開業日 改称日 旧駅名
武蔵溝ノ口 JR東・南武 1927/03/09     溝の口 東急・田園都市 1927/07/15    
磐城浅川 JR東・水郡 1934/12/04     浅川 JR四・牟岐 1973/10/01    
陸中川井 JR東・山田 1933/11/30     川井 JR東・青梅 1944/07/01    
羽前椿 JR東・米坂 1931/08/10     椿 JR西・紀勢 1935/03/29 1965/03/01 紀伊椿
羽後本荘 JR東・羽越 1922/06/30     本荘 えちぜん・三国芦原 1928/12/30    
越後岩塚 JR東・信越 1945/06/01     岩塚 名古屋市・東山 1982/09/21    
信濃浅野 JR東・飯山 1921/10/20     浅野 JR東・鶴見 1926/03/10    
安房天津 JR東・外房 1929/04/15     天津 JR九・日豊 1956/10/01    
美作千代 JR西・姫新 1923/08/21     千代 JR海・飯田 1932/10/03    
備後三日市 JR西・芸備 1930/04/25     三日市 近鉄・鈴鹿 1963/04/08    
紀伊勝浦 JR西・紀勢  1912/12/04 1934/07/01 勝浦 勝浦 JR東・外房 1913/06/20    
紀伊田辺 JR西・紀勢 1932/11/08     田辺 大阪市・谷町 1980/11/27    
紀伊宮原 JR西・紀勢 1925/12/11     宮原 JR東・高崎 1948/07/15    
伊予白滝 JR四・予讃 1928/07/16 1933/10/01 加屋  白滝 JR北・石北 1929/08/12    
土佐穴内 JR四・土讃 1934/10/28     穴内 土佐くろしお・阿佐 2002/07/01    
阿波山川 JR四・徳島  1900/08/07 1957/04/01 湯立 山川 JR九・指宿枕崎 1936/03/25    
筑前前原 JR九・筑肥 1924/04/01 1937/10/01 前原  前原 新京成 1955/04/21    
肥前大浦 JR九・長崎 1934/12/01     大浦 JR四・予讃 1995/03/18    
豊前松江(しょうえ) JR九・日豊 1897/09/25 1945/05/01 松江 松江 JR西・山陰 1908/11/08    
豊前善光寺 JR九・日豊 1897/09/25 1919/09/01 四日市 善光寺 JR海・身延 1928/03/30    
伊勢朝日 近鉄・名古屋 1929/01/30     朝日 JR海・関西 1983/08/08    
紀伊神谷 南海・高野 1928/06/18 1930/03/01 神谷 神谷 岳南鉄道 1953/01/20    
上州富岡 上信電鉄 1897/07/02 1921/12/17 富岡 富岡 JR東・常磐 1898/08/23    
上総鶴舞 小湊鉄道 1925/03/07 1958/01/01 鶴舞町 鶴舞 JR海・中央 1937/04/21    
越前野中 えちぜん・勝山永平寺 1950/09/10     野中 松浦鉄道 1990/03/10    
信濃荒井 松本電鉄 1921/10/02     荒井 山陽電鉄・本 1922/08/19    
遠州岩水寺 遠州鉄道 1909/12/06 1923/04/01 岩水寺 岩水寺 天竜浜名湖 1940/06/01    
播磨下里 北条鉄道 1917/08/14 1943/06/01 播鉄王子 下里 JR西・紀勢 1935/07/18    
いよ立花 伊予鉄道・横河原 1893/05/07 1927/03/01 立花 立花 JR西・東海道 1934/07/20    

このうち、磐城浅川、紀伊田辺、伊勢朝日の対応駅は、表に記載した現在の駅とは別の基本地名に基づく駅である。開業当時に既設の浅川(現高尾、1901/08/01開業、1961/03/20改称)、田辺(現京田辺、1898/04/12開業、1997/03/08改称)、朝日(万字線、1919/11/11開業、1985/04/01廃止)があった。これらの駅の改称・廃止後、同じ基本地名による別の浅川駅、朝日駅が開業したのである。このほか、羽前椿、信濃浅野、安房天津、備後三日市、紀伊宮原、土佐穴内、肥前大浦、紀伊神谷、越前野中の開業時にも、その後改称または廃止された別の基本地名駅が存在した[2-3]。なお、大阪市交の田辺駅は、開業時にはまだ田辺が京田辺に改称していなかったのに、同じ田辺を名乗った。

また、伊予白滝、阿波山川、播磨下里は、それぞれまったく別の名前で開業し、のちに「国名*」駅に改称した。改称の時点で単独基本地名駅の白滝、山川、下里が存在していたから、国名を冠したのである。したがって、表2-6の26駅のうち青字で示した駅には、「国名*」駅を名乗ったときすでに対応する単独基本地名駅が存在していたのである。先輩後輩の序列はかなり貫徹していたといえる。

紀伊勝浦と勝浦は、ほぼ同時に開業し、ともに勝浦を名乗っていたが、和歌山県の勝浦が後に紀伊を冠した。那智勝浦町の中心集落である(紀伊)勝浦に対し、現在は市代表駅となっている千葉県の勝浦(当時は町)が格上とみなされたのだろう。松江(しょうえ)として開業した日豊本線の豊前松江は、著名地名の山陰本線松江駅が開業してしばらくたってから、読み方が異なるのにもかかわらず改称を余儀なくされた。豊前善光寺は、開業時の四日市から改称した。関西本線の四日市が存在し、後述する国鉄の同一駅名回避の方針に基づき改称したが、豊前四日市ではなく、善光寺を選択した。国名を冠したのは長野の善光寺を意識したものだろう。

遠州鉄道の岩水寺は、国鉄二俣線(現天竜浜名湖鉄道)の岩水寺駅が開業する以前に遠州岩水寺と改称したが、これは国名というよりも社名を冠したと解釈すべきだろう。同時に上島など計6駅が遠州を冠した。上州富岡も富岡からの改称である。常磐線の富岡駅よりもわずかに早い開業だったが、このときに上州一ノ宮などとともに上州を冠した。

「国名*」駅がJRにあり、あとから開業した私鉄駅が接頭語を冠しなかったのが越後岩塚・岩塚など7組ある。私鉄・公営交通は、国鉄・JRとの連絡運輸がある場合でもその範囲が限定されているので、遠隔地にある他社の同名駅に無頓着である。

むしろ、このケースでは、開業時に単独基本地名駅が存在しなかったのに、旧国鉄の「国名*」駅がなぜ国名を冠したかを解明する必要がある。基本地名単独駅も他国の「国名*」駅も存在せず、区別する対象がないのに国名を冠している107の駅と同じ謎である。これらのすべてにあたることはできなかったが、次のような理由が想定できる。

次に、同じ基本地名に基づく駅の数が1、2位[2-4]である高田と一宮(一ノ宮、一の宮)の各駅を例にして、「旧国名*」駅と基本地名駅の関係を見る。
 
表2-7 「*高田」駅
駅名 事業者・路線 開業日 改称日 駅名の由来
高田 JR東・信越 1886/08/15   高田町→高田市→上越市
高田 JR西・和歌山 1891/03/01   北葛城郡高田町→大和高田市
高田(こうだ) JR九・長崎 1994/03/01   長与町高田郷
高田(たかた) 横浜市・4号 2008/03/30   都筑郡新田村大字高田→横浜市港北区高田町
高田(たかた) 高松琴平・長尾 1912/04/30   ?→高松市
美濃高田 近鉄・養老 1913/07/31   養老郡高田町→養老町
大和高田 近鉄・大阪 1925/03/21   北葛城郡高田町→大和高田市
肥後高田(こうだ) 肥薩おれんじ 1933/07/17   八代郡高田村→八代市
陸前高田 JR東・大船渡 1933/12/15   気仙郡高田町→陸前高田市
高田←筑前高田(たかた) 甘木鉄道 1960/11/01 1986/04/01 朝倉郡三輪村大字高田→三輪町
越前高田 JR西・越美北 1964/05/20   足羽郡美山町高田

元祖の高田市はすでに合併により上越市となったが、高田に国名を冠した市が、陸前、大和、安芸、豊後の4市ある。このうち、大和高田市、陸前高田市に「*高田」駅が存在し、他に町村名や字名に由来する「*高田」駅が7駅ある。このうち、先行して開業した上越市と大和高田市の代表駅、また高松琴平電鉄と甘木鉄道の高田駅が国名を冠していない。なお、甘木鉄道の高田駅は、国鉄からの転換に当たって国名を外して改称された。
 

表2-8 「*一宮」駅
駅名 事業者・路線 開業日 改称日 駅名の由来
尾張一宮←一ノ宮 JR海・東海道 1886/05/01 1916/01/01 一宮市
上総一ノ宮←一ノ宮 JR東・外房 1897/04/17 1916/01/01 長生郡一宮町
上州一ノ宮 上信電鉄 1897/07/02   北甘楽郡一ノ宮町→富岡市
三河一宮←一ノ宮 JR海・飯田 1897/07/22 1916/01/01 宝飯郡一宮町
備前一宮←一ノ宮 JR西日本・吉備 1904/11/15 1916/02/01 御津郡一宮町→岡山市
加賀一の宮←神社前 北陸鉄道・石川 1927/06/12 1937/12/08 石川郡一ノ宮村→鶴来町→白山市
土佐一宮(いっく) JR四・土讃 1925/12/05   高知市一宮
一宮 高松琴平・琴平 1926/12/21   香川郡一宮村→高松市
飛騨一ノ宮 JR海・高山 1934/10/25   大野郡宮村一ノ宮→高山市
遠江一宮 天竜浜名湖鉄道 1940/06/01   周知郡一宮村→森町

一の宮はその国で最も社格の高い神社であり、令制国すべてに設置された。各国にこれに由来する地名が存在するので、互いに区別するために国名を冠している。表2-7に記載した現存駅以外に、長門一ノ宮駅(1901/05/27一ノ宮駅として開業、1916/01/01長門一ノ宮に改称、1975/03/10新下関に改称)が存在した。このうち、単に「一ノ宮」として開業した尾張一宮、三河一宮、上総一ノ宮、長門一ノ宮は1916年1月1日に同時に(尾張一宮は尾張一ノ宮に。その後1952年11月15日尾張一宮駅に改称)、備前一宮は1ヵ月後の年2月1日に、それぞれ改称した。そのなかで、地名の格が高いとはいえず、開業時期も遅い高松琴平電鉄の讃岐一の宮だけが僭越にも国名を冠していないのだ[2-5]

「旧国名*」駅の発祥

現存する駅のうち最初に国名を冠した駅は、筑前植木(JR九・筑豊)である。1893年12月20日に筑豊興業鉄道(1894年、筑豊鉄道に改称)の植木駅として開業し、筑豊鉄道が九州鉄道と合併した1897年10月1日に、筑前植木に改称した。九州鉄道には現鹿児島線の植木(1891/07/01開業)が存在しており、先輩に駅名を譲ったのである。

開業時から国名を冠して命名された旧国鉄駅で、もっとも古いのは1911年4月22日開業の豊前長洲(JR九・日豊)である。既設の長洲駅(JR九・鹿児島、1891/04/01開業)に対し、「国名*」駅となった。第一次国有化後に国名を冠して改称された旧国鉄駅の中では、丹波竹田(阪鶴鉄道→福知山線、1911/11/01改称)が初めてである。これは、同じ兵庫県にあった竹田(JR西・播但、1906/04/01開業)との重複を避けるためである。したがって1910年代初めに国鉄が「原則として同じ名前の駅を重複して設置しない」という方針を定めた可能性がある。その結果「国名*」駅が新設・改称によって続々誕生した[2-6]。対象となる同名駅は、比較的近隣の駅に始まり、その後全国に拡大した。

表2-9に、現存するJR各社の「国名*」駅のうち開業時には単独基本地名であったが、その後国名を冠して改称された駅を掲げる[2-7]
 

表2-9 基本地名駅から「国名*」駅への改称
駅名 事業者・路線 開業日 旧駅名 改称日 国鉄買収日 既存基本地名駅開業(*改称)日
武蔵境 JR東・中央 1889/04/11 1919/07/01 甲武鉄道 1906/10/01 (一斉改称)
武蔵増戸 JR東・五日市 1925/04/21 増戸 1925/05/16 五日市鉄道→南武鉄道 1944/04/01 -
武蔵五日市 JR東・五日市 1925/04/21 五日市 1925/06/01 五日市鉄道→南武鉄道 1944/04/01 JR西・山陽 1899/12/08
信濃常盤 JR東・大糸 1915/11/02 常盤(停) 1937/06/01 信濃鉄道 1937/06/01 JR西・宇部 1925/06/01
常陸太田 JR東・水郡 1899/04/01 太田 1927/12/01 水戸鉄道 1927/12/01 -
常陸青柳 JR東・水郡 1897/11/16 青柳 1927/12/01 水戸鉄道 1927/12/01 JR東・中央 1905/11/25
陸前大塚 JR東・仙石 1931/12/01 大塚 1944/05/01 宮城電気鉄道 1944/05/01 JR東・山手 1903/04/01
陸前浜田 JR東・仙石 1927/04/18 浜田 1944/05/01 宮城電気鉄道 1944/05/01 JR西・山陰 1921/09/01
陸前富山 JR東・仙石 1928/04/10 富山(とみやま) 1944/05/01 宮城電気鉄道 1944/05/01 JR西・北陸 1899/03/20
羽後境 JR東・奥羽 1904/08/21 1919/07/01 - (一斉改称)
越後曽根 JR東・越後 1912/08/25 曽根 1913/04/20 越後鉄道 1927/10/01 JR西・山陽 *1902/03/01
下総中山 JR東・総武 1895/04/12 中山 1915/09/11 総武鉄道 1907/09/01 JR東・横浜 1908/09/23
上総一ノ宮 JR東・外房 1897/04/17 一ノ宮 1916/01/01 房総鉄道 1907/09/01 (一斉改称)
下総松崎 JR東・成田 1901/08/10 松崎(まんざき) 1920/09/01 成田鉄道 1920/09/01 JR西・山陰 1904/03/15
上総清川 JR東・久留里 1912/12/28 清川 1923/09/01 千葉県営鉄道 1923/09/01 JR東・陸羽西 1914/06/14
三河一宮 JR海・飯田 1897/07/22 一ノ宮 1916/01/01 豊川鉄道 1943/08/01 (一斉改称)
尾張一宮 JR海・東海道 1886/05/01 一ノ宮 1916/01/01 - (一斉改称)
近江長岡 JR海・東海道 1889/07/01 長岡 1914/12/01 - JR東・信越 1898/06/16
駿河小山 JR海・御殿場 1889/02/01 小山→駿河 1952/01/01 - JR東・東北 1885/07/16
近江八幡 JR西・東海道 1889/07/01 八幡(はちまん) 1919/03/11 - JR九・鹿児島 1902/12/27
丹波大山 JR西・福知山 1899/05/25 大山 1917/05/01 阪鶴鉄道 1907/08/01 (一斉改称)
丹波竹田 JR西・福知山 1899/07/15 竹田 1911/11/01 阪鶴鉄道 1907/08/01 JR西・播但 1906/04/01
越中中川 JR西・氷見 1916/04/01 中川(簡) 1920/09/01 中越鉄道 1920/09/01 JR東・奥羽 1903/11/03
備前原 JR西・津山 1929/06/20 原(停) 1944/06/01 中国鉄道 1944/06/01 JR海・東海道 1900/02/25
備前一宮 JR西・吉備 1904/11/15 一ノ宮(→一宮) 1916/02/01 中国鉄道 1944/06/01 (一斉改称)
備前三門 JR西・吉備 1904/11/15 三門 1944/06/01 中国鉄道 1944/06/01 JR東・外房 1903/08/16
備後三日市 JR西・芸備 1930/04/25 三日市(停) 1933/06/01 芸備鉄道 1933/06/01 -
安芸矢口 JR西・芸備 1915/04/28 矢口 1937/07/01 芸備鉄道 1937/07/01 -
安芸長束 JR西・可部 1928/11/09 大師→長束 1936/09/01 大日本軌道広島支社→可部軌道→広島電気→広浜鉄道 1936/09/01 -
長門長沢 JR西・小野田 1929/05/16 長沢(停) 1943/05/01 宇部鉄道 1943/05/01 JR東・陸羽東 1915/11/01
長門本山 JR西・小野田 1937/01/21 本山 1943/05/01 宇部鉄道 1943/05/01 JR四・予讃 1913/12/20
伯耆大山 JR西・山陰 1902/12/01 熊党→大山 1917/05/01 - (一斉改称)
出雲神西 JR西・山陰 1982/07/01 神西→出雲大社口 1999/03/13 - -
出雲大東 JR西・木次 1916/10/11 大東町 1934/08/01 簸上鉄道 1934/08/01 -
伊賀上野 JR西・関西 1897/01/15 上野 1916/09/11 関西鉄道 1907/10/01 JR東・東北 1883/07/28
大和新庄 JR西・和歌山 1896/05/10 新庄 1915/09/11 南和鉄道→関西鉄道 1907/10/01 JR東・奥羽 1903/06/11
大和二見 JR西・和歌山 1902/06/03 二見 1919/04/15 南和鉄道→関西鉄道 1907/10/01 -
紀伊中ノ島 JR西・阪和 1932/01/01 中ノ島(停)→阪和中ノ島 1936/09/25 阪和電気鉄道→南海鉄道 1944/05/01 -
紀伊佐野 JR西・紀勢 1913/03/01 佐野村 1942/04/01 - JR東・両毛 1888/05/22
紀伊天満 JR西・紀勢 1912/12/04 那智口→天満 1934/07/01 - JR西・大阪環状 1895/10/17
紀伊勝浦 JR西・紀勢 1912/12/04 勝浦 1934/07/01 - JR東・外房 1913/06/20
伊予長浜 JR四・予讃 1918/02/14 長浜町 1933/10/01 愛媛鉄道 1933/10/01 JR西・北陸 1882/03/10
伊予大洲 JR四・予讃 1918/02/14 大洲 1933/10/01 愛媛鉄道 1933/10/01 -
伊予宮野下 JR四・予土 1914/10/18 宮野下 1933/08/01 宇和島鉄道 1933/08/01 -
阿波川端 JR四・高徳 1927/07/15 川端(停) 1933/07/01 阿波電気軌道→阿波鉄道 1933/07/01 JR北・石勝 1893/08/01
阿波川島 JR四・徳島 1899/08/19 川島 1915/07/01 徳島鉄道 1907/09/01 JR東・水戸 *1889/05/25
阿波赤石 JR四・牟岐 1916/12/15 赤石 1936/07/01 阿南鉄道 1936/07/01 -
筑前前原 JR九・筑肥 1924/04/01 前原 1937/10/01 北九州鉄道 1937/10/01 -
大隅横川 JR九・肥薩 1903/01/15 横川(よこがわ) 1920/09/01 - JR西・山陽 1897/09/25
肥前山口 JR九・長崎 1895/05/05 山口 1913/03/01 九州鉄道 1907/07/01 JR西・山口 1913/02/20
豊前松江 JR九・日豊 1897/09/25 松江(しょうえ) 1945/05/01 九州鉄道 1907/07/01 JR西・山陰 1908/11/08
豊前川崎 JR九・日田彦山 1899/07/10 川崎 1945/05/01 九州鉄道 1907/07/01 JR海・東海道 1872/07/10
筑前植木 JR九・筑豊 1893/12/20 植木 1897/10/01 筑豊興業鉄道→筑豊鉄道→九州鉄道 1907/07/01 JR九・鹿児島 1891/07/01
日高門別 JR北・日高 1924/09/06 門別 1925/02/10 日高拓殖鉄道 1927/08/01 -
石狩沼田 JR北・留萌 1910/11/23 沼田 1924/04/25 - JR東・上越 1924/03/31
十勝清水 JR北・根室 1907/09/08 清水 1934/11/20 - JR海・東海道 *1934/12/01

基本地名駅から「国名*」駅に改称された56駅のうち、43駅が開業時は私鉄でその後買収された路線にある。国有化後の同名駅の回避のための改称は、その買収時期によって次の二つに区分される。

また「国名*」駅への改称には、次の三つのパターンがあったことがわかる。

まとめ

以上の考察をまとめると、
[1-1] 詳細は、市名と駅名の関係(市代表駅)町村名と駅名の関係(町村代表駅)を参照。1999年4月以降に誕生した駅を有する市のうちAタイプに属するのは、潮来、白井、栗東、守谷、千曲(後に市名と同名の駅が開業)、本巣、下呂、養父、甲賀、野洲、常陸大宮、那須塩原、菊川、阿蘇、上野原、米原、小城、うきは、にかほ(駅名は、仁賀保)、伊達(福島)、志布志、神埼市、香取、弥富、岩出、本宮、姶良の27市である(鹿島鉄道の廃止により鉾田市はAからCとなった)。一方従来のAタイプの市のうち、合併により消滅または市名が変更となった田無、保谷、清水、大宮、浦和、与野、徳山、新南陽、川之江、伊予三島、川内、黒磯、松任、八日市、新津、豊栄、大曲、小野田、下館、岩槻、新井、中村、浜北、上福岡、武生、串木野、塩山、国分、原ノ町、水海道、久居、八日市場、水沢、今市、甘木、佐原、古川の37市がAタイプから外れた。また、輪島市と珠洲市がのと鉄道の廃止により外れ、つくば市と八潮市がつくばエクスプレス開業により加わった。
[1-2] 上野市は、2004/11/01他の5町村と合併し、伊賀市となったが、上野市駅は存続している。平田市は、2005/03/22、佐田町、多伎町、湖陵町、大社町とともに出雲市に合併し、平田市駅はもとの雲州平田に戻った。
[1-3] 北海道の国名は明治になってから1869年に制定されたものである。釧路と根室は、国名制定以前の江戸時代に交易が行われた「場所」名である。「場所」名が広域地名の国名に使用されたものであって、国名が市名に採用されたわけではない。一方、北見は野付牛町からの市制施行時に国名の北見を市名に採用し、駅名も野付牛から北見に改称した。当時は北見を冠した国名接頭語駅も存在したので、内地の例に倣えば、北見市駅と称するところだった。
[1-4] 旧国名市駅の8市、ひらがな旧国名市の3市、北海道3市の他に、旧国名(通称の州名を含む)を名乗る市は、奥州市(水沢)、下野市(小金井)、加賀市(大聖寺)、越前市(武生)、甲斐市(竜王)、甲州市(塩山)、飛騨市(飛騨古川)、伊豆市(修善寺)、志摩市(鵜方)、伊賀市(伊賀上野)、和泉市(和泉府中)、丹波市(石生)、美作市(林野)、備前市(備前片上)、筑後市(羽犬塚)及び豊前市(宇島)がある。加賀市、和泉市、備前市、筑後市及び豊前市は、それぞれ市制施行後30年から50年となるのに改称されていない。その他の奥州市、甲斐市、飛騨市、伊豆市等は平成の大合併で市制施行したものであり、それぞれの市代表駅が市名にあわせて「*市」駅に改称されることがあるだろうか。なお、町村では2003年4月合併で誕生した熊本県あさぎり町の免田駅が6年後にあさぎり駅に改称した例がある。また、2010年3月25日、越前市の福井鉄道の武生新が越前武生に、2011年3月12日の九州新幹線開業に伴い、筑後市の船小屋が筑後船小屋にそれぞれ改称した。これらは、旧国名というよりも市名を冠したと解釈することもでき、これは旧国名市における新たな駅名命名法というべきなのかもしれない。
[2-1] 例外として、同一地名に基づく「国名*」駅と単独基本地名駅が存在するのは、次の通り。
「国名*」駅 開業日 単独基本地名駅 開業日 備考
武蔵溝ノ口(JR東・南武) 1927/03/09 溝の口(東急・田園都市) 1927/07/15 東急とJR東の連絡運輸の接続駅であるが、唯一駅名を異にしている
武蔵浦和(JR東・東北) 1985/09/30 浦和(JR東・東北) 1883/07/28 「*浦和」駅の中で最後の開業である。東西南北、中と接頭語を使い果たした結果の命名だろう
遠州岩水寺(遠州鉄道) 1909/12/06 岩水寺(天竜浜名湖) 1923/04/01 遠州岩水寺は、1923/04/01岩水寺から改称されたが、旧国鉄二俣線岩水寺駅の開業(1940/06/01)より前
三河安城(JR海・東海道) 1988/03/13 安城(JR海・東海道) 1891/06/16 名鉄に新安城駅が存在したため、新幹線駅として設置時に在来線の同名駅と区別するのに「新*」としなかった唯一の例
三河知立(名鉄・三河) 1915/10/28 知立(名鉄・名古屋本) 1959/04/01 当初知立駅として開業。隣接する新知立駅を統合、現知立駅の開業時に三河知立に改称
越前花堂(JR西・北陸) 1968/10/01 花堂(福井鉄道) 1925/07/26  
越前武生(福井鉄道) 1924/04/23 武生(JR西・北陸) 1896/07/15 武生新から2010/03/25改称
伊勢朝日(近鉄・名古屋) 1929/01/30 朝日(JR海・関西) 1983/08/08 開業時に存在した万字線の朝日駅の廃止後、関西線に同一地名に基づく朝日駅が開業した
大和高田(近鉄・大阪) 1925/03/21 高田(JR西・和歌山) 1891/03/01 大和高田市内には、高田、大和高田に加えて、高田市駅(近鉄・南大阪)もある
紀伊御坊(紀州鉄道) 1931/06/15 御坊(JR西・紀勢) 1929/04/21 御坊町として開業し、すぐに紀伊御坊に改称された。
このほか、三河豊田(愛知環状鉄道)も、遠隔地に同じ基本地名の豊田(JR東・中央)があるが、同一基本地名の豊田市(名鉄・三河)と区別するための命名だろう(なお廃止された名鉄・挙母線に、初代の三河豊田駅が存在した)。三河塩津も、旧塩津駅(名鉄・蒲郡、拾石駅とともに、蒲郡競艇場前に統合)を意識したものだろう。このように、本、新、東西南北などの接頭語の代わりに国名を冠するこの命名法は、三河国に突出している。
[2-2] ここで開業日は現在の駅の開業日ではなく、最初に同一基本地名に基づく駅名が使用された駅の開業日である。横浜駅の開業日は初代横浜駅(現桜木町駅。現横浜駅は三代目)の開業日である。西大寺駅はもともと現在の東岡山駅(1891/03/01長岡として開業、1906/01/01西大寺に改称、1961/03/20東岡山に改称)であった。その後、赤穂線開業時(1962/09/01)に現在の西大寺駅が開業した。
[2-3] ameniさんのブログにわとり紅茶メモ(2006-12-25、-26、-31の記事)による。
[2-4] 「国名*」駅と単独基本地名駅をあわせた基本地名のベスト10は、次のとおり。
基本地名 「国名*」駅 単独基本地名駅
高田 11 陸前高田(JR東・大船渡)、越前高田(JR西・越美北)、大和高田(近鉄・大阪)、美濃高田(近鉄・養老)、肥後高田(肥薩おれんじ) 5 JR東・信越、JR西・和歌山、JR九・長崎、横浜市・4号、高松琴平・長尾、甘木鉄道 6
一宮(一ノ宮、一の宮を含む) 9 上総一ノ宮 (JR東・外房)、尾張一宮(JR海・東海道)、三河一宮(JR海・飯田)、飛騨一ノ宮(JR海・高山)、備前一宮(JR西・吉備)、土佐一宮(JR四・土讃)、上州一ノ宮(上信電鉄)、遠江一宮(天竜浜名湖鉄道)、加賀一の宮(北陸鉄道・石川) 8 高松琴平・琴平(一宮) 1
中川 8 越中中川(JR西・氷見)、豊後中川(JR九・久大) 、天塩中川(JR北・宗谷)、伊勢中川(近鉄・大阪)、武州中川(秩父鉄道)、上総中川(いすみ鉄道) 6 JR東・奥羽、横浜市 2
富田 8 摂津富田(JR西・東海道)、越前富田(JR西・越美北)、紀伊富田(JR西・紀勢)、伊予富田(JR四・予讃)、阿波富田(JR四・牟岐) 5 JR東・両毛、JR海・関西、阪急・京都 3
山田 8 陸中山田(JR東・山田)、越中山田(JR西・城端)、紀伊山田(JR西・和歌山)、土佐山田(JR四・土讃)、上総山田(小湊鉄道) 5 京王・高尾、長良川鉄道、阪急・千里=大阪高速鉄道 3
大宮 7 常陸大宮(JR東・水郡)、越前大宮(JR西・越美北)、阿波大宮(JR四・高徳)、和泉大宮(南海・南海本)、丹後大宮(北近畿たんご・宮津) 5 JR東・東北、阪急・京都本 2
中山 7 羽前中山(JR東・奥羽)、下総中山(JR東・総武)、伊予中山(JR四・予讃)、飛騨中山(神岡鉄道) 4 JR東・横浜、阪急・宝塚本、土佐電鉄・伊野 3
中野 7 陸中中野(JR東・八戸)、安芸中野(JR西・山陽)、上総中野(いすみ=小湊)、信州中野(長野電鉄・長野) 4 JR東・中央=東京地下鉄・東西、わたらせ渓谷、上田交通 3
住吉 7 甲斐住吉(JR海・身延)、日向住吉(JR九・日豊) 2 JR西・東海道=神戸新交通・六甲(=阪神・本)、JR九・三角、東京都・新宿=東京地下鉄・半蔵門、阪堺電軌・上町、長崎電軌 5
大町 7 信濃大町(JR東・大糸) 1 JR西・可部=広島新交通、JR九・佐世保、函館市、北総鉄道、富山地方鉄道・富山市内、高松琴平・志度 6
[2-5] 高松琴平電鉄には、一宮、高田だけでなく、次の駅で基本地名を単独で使用し、孤高を保っている。なお、高松琴平電鉄は、1965年当時は国鉄との間に連絡運輸を行っていたが、これらの駅は国鉄からの連絡運輸の対象駅(社線旅客運賃設定駅)に入っていなかった(昭和40年度版「停車場一覧」)。
路線 「国名*」駅 他の基本地名駅
一宮 琴平 上総一ノ宮
尾張一宮 
三河一宮 
飛騨一ノ宮 
備前一宮 
土佐一宮 
上州一ノ宮
加賀一の宮
遠江一宮
JR東・外房
JR海・東海道 
JR海・飯田 
JR海・高山
JR西・吉備
JR四・土讃 
上信電鉄
北陸鉄道・石川
天竜浜名湖
 
花園 琴平 河内花園 近鉄・奈良 JR西・山陰
太田 琴平 磐城太田
美濃太田 
羽後太田
JR東・常磐
JR海・高山 
秋田内陸縦貫
東武・伊勢崎
大町 志度 信濃大町 JR東・大糸 JR西・可部=広島新交通、JR九・佐世保、函館市、北総鉄道、富山地方鉄道・富山市内
塩屋 志度 讃岐塩屋 
薩摩塩屋
JR四・予讃 
JR九・指宿枕崎
JR西・山陽
志度 備前原 JR西・津山 JR海・東海道、名古屋市・鶴舞
財田 志度 讃岐財田 JR四・土讃 JR西・山陽
高田 長尾 陸前高田
越前高田
大和高田 
美濃高田 
肥後高田
JR東・大船渡
JR西・越美北 
近鉄・大阪 
近鉄・養老 
肥薩おれんじ
JR東・信越、JR西・和歌山、JR九・長崎、横浜市・4号、甘木鉄道
[2-6] 同名駅を回避するのに、なぜ県名ではなく、旧国名を冠したか。次の例に見るように、明治時代には旧国名が地域呼称として機能しており、むしろ県名よりなじみがあったようだ。
  • 1929年以降制定された「*県下国界変更及び郡廃置法律」によって、県境が変更されると同時に国界も変更になった。
  • 夏目漱石の小説に、"肥前の国は唐津の"(『我輩は猫である』1905年)や"日向の延岡"(『坊ちゃん』1906年)のような表記が見られる。
    ただし「県名*」駅も1916年には誕生している。 陸中・岩手では「国名*」駅と「県名*」駅が並存しているが、県名を冠した岩手上郷駅(1916年2月10日上郷駅から改称)が「陸中*」駅に先行している。
  • [2-7] このほかに、単独基本地名駅→「国名*」駅→単独基本地名駅と変遷した駅が次の通りある。
    開業時駅名・現駅名 事業者・路線 「国名*」駅 開業日 改称日1 改称日2 備考
    豊原 JR東・東北 下野豊原 1887/07/16 1925/04/01 1948/08/01  
    古川 JR東・陸羽東 陸前古川 1913/04/20 1915/06/11 1980/11/01  
    中島 JR西・可部 安芸中島 1911/06/12 1936/09/01 1956/06/01 改称日1は広浜鉄道買収時
    神埼 JR九・長崎 肥前神埼 1907/11/01 1945/05/01 1956/04/10  

    改訂履歴
    2005/04/10: 2005年4月1日までの市町村合併による変化を注記(脚注1-2)
    2005/09/30: その後の市町村合併による変化を記載、「*市」駅の分類(表1-5)の再構成など、大幅に改稿
    2005/10/23: 「国名*」駅を掲載。脚注1-3に、北海道の旧国名について加筆
    2005/11/03: 「*市」駅の旧国名市駅について(本文、脚注1-3、1-4)訂補。「国名*」駅の駅数(雲州平田の漏れ)を訂正、紀伊駅の国名との関係を訂正
    2005/11/06: 別表1「旧国名駅」を掲載
    2005/12/04: 目次を設置。脚注2-5を追加(「都道府県市区町村落書き帳」での議論を参考にした)
    2006/05/28: 表1-1及び脚注1-1に、2006年4月1日までの市町村合併による変化を追加
    2006/05/31: 脚注1-4に、2006年4月1日までの市町村合併による変化を追加
    2007/10/20: 表2-2に、旧国名単独駅から漏れていた近鉄田原本線但馬駅を追加。ameniさんのブログ「にわとり紅茶メモ」の指摘を受け、単独基本地名駅より早く開業した「国名*」駅に関する記事を改訂。
    2008/12/11: 「旧国名駅」を改訂(本文及び表2-2、2-3、2-4、2-5、2-6、2-7、脚注2-1、2-4、2-5、別表1)。近鉄伊賀線の伊賀鉄道移管、高千穂鉄道の休廃止、横浜市営地下鉄4号線・京阪中之島線の開業に対応。旧国名単独駅から漏れていた阪急京都本線淡路駅を追加。読者から漏れの指摘を受けた国名駅(阿波大谷)及び基本地名駅(多数)を追補。なお、同一基本地名駅の一宮(一ノ宮、一の宮)と高田が逆転し、表2-7と2-8を入れ替えた。
    2009/10/04: 8月9日及び10月4日の別表1の改訂を反映して、「旧国名駅」の「旧国名駅と基本地名駅」の項本文及び表2-3、2-4、2-5、2-6を改訂。表2-7の読み方が異なる駅名にふりがなを追記
    2009/11/02: 11月1日の北陸鉄道石川線加賀一の宮駅の廃止を反映。表2-3の飛騨国の駅数を訂正(廃止された神岡鉄道の2駅が計上されていた)
    2010/09/18: 2010年3月31日の平成の大合併終了によりデータを更新。表1-1を1999年から2010年までの推移に変更。「*市駅」本文を改稿、加筆。脚注1-1、1-2、1-3、1-4の記載をアップデート
    2010/10/06: 市町村名と駅名の関係を見直し、表1-1を変更
    2011/03/31: 脚注のみに記述していた2010年3月開業の摂津市駅(阪急・京都線)について、表1-2、表1-3及び本文中に記載。2010年3月25日の越前武生駅及び2011年3月12日の筑後船小屋駅の改称により「旧国名*」駅を改稿。表1-1の数字を「市代表駅」の区分変更にあわせて訂正し、2011年の数字を追加

    初出 2004/08/11
    最終更新 2011/03/31
    (C) 2004 - 11 Desktoptetsu

    トップページに戻る