乗車記録データベース


筆者のライフワークである「乗車記録データベース」について紹介する。本稿は、1996年9月に「乗車記録の30年−能率手帳からパソコンデータベースへ」と題して執筆した原稿をその後の進展を加えてアップデートし、再構成したものである。

私のデータベースは乗車記録データベースと鉄道路線データベースの二つの要素をもっている。乗車記録データベースは、日々の乗車を記録し、鉄道路線データベースは、日々の乗車を鉄道完乗への歩みにつなぐためのものである。

まず1章・2章で乗車記録データベースの対象とフォーマットの確立の過程について紹介する。次に3章・4章で、乗り潰しの対象としての鉄道路線データベースについて、MSアクセスによるデータベースの構造を中心に説明し、また乗車記録データベースを鉄道路線データベースに結合している例を紹介する。

目次
はじめに
1.記録の対象
2.乗車記録の内容 表1  乗車記録の記載例
2.1一乗車区間
2.2事業者の基準
2.3乗車キロの扱い
2.4新乗車区間
図1 乗車記録フォーム
3.鉄道路線データベース 図2 乗車記録データベースの構造
3.1事業者
3.2路線
3.3区間
表2 線名ID体系
図3 路線変遷フォーム
表3 区間ID体系
図4 路線区間明細フォーム
4.乗車記録データベースと鉄道路線データベースの統合
おわりに
表 鉄道の貸借及び運転の管理委託
表 複数の事業者の運行区間
図 大阪市営地下鉄の営業キロ
表 札幌市軌道線営業キロ推移
表 富山地方鉄道の路線再編
表 旅客会社の第1種区間に含まれないJR貨物の第2種区間
改訂履歴


はじめに

毎日の鉄道乗車区間を記録する作業を1966年1月に開始し、現在も続けている。ちょうど国鉄線全線乗車を決意した時期であり、全線乗車の記録を残すことが主たる目的であった。

当初は「能率手帳」に記録し、乗車キロなどの計算は筆算で行っていた(当時電卓は、まさに電子式卓上計算機で、いまのPC以上の価格だった)。ハンド計算では(もちろん、その後電卓による計算となった)、縦横計算がなかなか合わない。このために乗車キロの集計などにいかに時間を費やしたことか。従って身近にパソコンが導入されるようになってまず行ったのは、スプレッドシートを使用して、月別、事業者別乗車キロなどを計算することであった。

乗車記録の開始当初から、乗車記録の基本台帳を1項目(1乗車区間)1枚のパンチカードとすることを考えており、また将来のコンピュータ処理も視野に収めていた。1987年、初代のパソコン(PC-9801 VM21)を購入した。そのときに手帳と併用してLotus 1-2-3による記録を開始し、88年に完全にパソコン処理に移行した。現在はMSエクセルで記録し、これをMSアクセスでデータベース処理するという形で、スプレッドシートとリレーショナルデータベース(RDB)を併用している。

66年以降の35,000件を超える乗車記録データをすべてアクセスのテーブルに入力している。これによってレコードの検索が容易になった。例えば下津井電鉄に乗車したのはいつだったか、札幌駅には何回乗降したことがあるか、幡生−下関間には何回乗車し、最後に乗車したのはいつか、というような答えが簡単に出せるようになった。


1.記録の対象

現在乗車記録の対象としているのは、鉄道事業法に基づき許可された鉄道および軌道法に基く特許を得た軌道で、これらは国土交通省鉄道局監修の「鉄道要覧」に記載されている[1]。TDLのウェスタンリバー鉄道など、遊戯施設の扱いで鉄道事業法の対象ではないものは、乗車を記録していない。鉄道事業法(その前身である地方鉄道法および日本国有鉄道法)に基づく鉄道または軌道法に基づく軌道以外で、これまで乗車が記録されているものは、浜中町営の北海道植民軌道と上松運輸営林署の森林鉄道がある。これらの軌道・鉄道は、すべて廃止された。

記録の対象はかなり変化した。記録を開始した初期は、交通公社の「時刻表」に掲載されている鉄道に限っていた。都電や横浜市電のような路面電車の記録は、乗車連番を付けず、別表示していた。その後、当時の関西私鉄の多くがまだ都電や市電と同じ軌道法[2]に基づいていることを知り、軌道も鉄道と同様に扱うこととした。また、案内軌条式の札幌地下鉄の開業により、モノレールや各種新交通システムを記録の対象に加えた。

乗車記録の対象の鉄道・軌道のうち定期旅客営業を行っている路線は、老後の楽しみが残るようにボチボチ進めている日本の鉄道全線乗車の対象でもある。鉄道事業法に基づく鉄道とはいえ、車両に動力装置を積んでいないケーブルカーと軌道の上を走らないトロリーバスを鉄道[3]に含めるのは抵抗があり、全線乗車及び乗車記録の対象から外していた。しかし、老後の楽しみとして行うのだから全線乗車の対象はできるだけ広く取ろうと考えが変わり、乗車記録の対象にも加えることにした。過去にさかのぼって、ケーブルカーとトロリーバスの乗車記録を追加した[4]

海外の乗車についてはノートに記録しているが、都市内交通機関などに一部欠落があり、PCデータベース化も未着手である。


2.乗車記録の内容

表1に アクセスの乗車記録テーブルの記載例を示す。ワークシート上でコピー・アンド・ペーストが容易にできるスプレッドシートにくらべて、RDBは、データの入力が簡単ではない。そこでまずエクセルに入力し、これを「追加貼り付け」でアクセスにインポートするというやり方をとっている。

表1は、98年4月30日と5月1日の乗車記録で、近鉄と大阪市交通局の乗り潰しをしたときのものである。このテーブルを参照しながら、乗車記録の基本概念とフォーマットについて説明する。

表1  乗車記録の記載例

年連番 月連番 日付 事業者ID 発駅 着駅 乗換駅 経由 キロ
0980216 04054 1998/04/30 B0011 近鉄名古屋 湯の山温泉 近鉄四日市 急/ 52.3  1.0  TRUE
0980217 04055 1998/04/30 B0011 湯の山温泉 平田町 近鉄四日市/塩浜/伊勢若松 //急/ 35.0  1.0  TRUE
0980218 04056 1998/04/30 B0011 平田町 上野市 伊勢若松/伊勢中川/伊賀神戸 /急/快急/ 76.6  1.0  TRUE
0980219 04057 1998/04/30 B0011 上野市 伊賀上野     3.9  1.0  TRUE
0980220 04058 1998/04/30 B0011 伊賀上野 近鉄御所 上野市/伊賀神戸/大和八木/橿原神宮前/尺土 //急//急/ 73.2  1.0  TRUE
0980221 04059 1998/04/30 B0011 近鉄御所 河内長野   /急/急 31.7  1.0  TRUE
0980222 04060 1998/04/30 B0011 河内長野 道明寺   14.5  1.0  TRUE
0980223 04061 1998/04/30 B0011 道明寺 柏原     2.2  1.0  TRUE
0980224 04062 1998/04/30 B0011 柏原 大阪阿倍野橋 道明寺 /準 18.6  1.0  TRUE
0980225 04063 1998/04/30 C2709 天王寺 心斎橋     4.3  1.0  FALSE
0980226 05001 1998/05/01 C2709 心斎橋 なんば     0.9  1.0  FALSE
0980227 05002 1998/05/01 B0011 近鉄難波 天理 大和西大寺   42.8  1.0  TRUE
0980228 05003 1998/05/01 B0011 天理 吉野 平端/橿原神宮前   43.6  1.0  TRUE
0980229 05004 1998/05/01 B0011 吉野 生駒 橿原神宮前/田原本=西田原本/新王寺=王寺   55.6  1.0  TRUE
0980230 05005 1998/05/01 B0011 鳥居前 生駒山上 宝山寺   2.0  1.0  TRUE
0980231 05006 1998/05/01 B0011 生駒山上 鳥居前 宝山寺   2.0  1.0  FALSE
0980232-1 05007-1 1998/05/01 B0011 生駒 (長田)     10.2  0.5  TRUE
0980232-2 05007-2 1998/05/01 C2709 (長田) (大阪港)     15.5  0.0  TRUE
0980232-3 05007-3 1998/05/01 C2727 (大阪港) (中ふ頭) コスモスクェア   3.7  0.0  TRUE
0980232-4 05007-4 1998/05/01 C2709 (中ふ頭) 西梅田 住之江公園   18.4  0.5  TRUE
0980233 05008 1998/05/01 A0013 北新地 海老江     2.4  1.0  TRUE
0980234 05009 1998/05/01 C2709 野田阪神 南巽     13.1  1.0  TRUE
0980235 05010 1998/05/01 C2709 平野 八尾南     5.1  1.0  TRUE
0980236 05011 1998/05/01 C2709 八尾南 大日     28.3  1.0  TRUE
0980237 05012 1998/05/01 C2709 大日 守口     1.8  1.0  FALSE
0980238 05013 1998/05/01 B0013 守口市 京橋     5.3  1.0  FALSE
0980239 05014 1998/05/01 C2709 京橋 門真南     6.5  1.0  TRUE
0980240 05015 1998/05/01 C2709 門真南 大正     15.0  1.0  TRUE
0980241 05016 1998/05/01 A0013 大正 天王寺     4.0  1.0  TRUE
0980242 05017 1998/05/01 C2709 天王寺 なかもず     10.6  1.0  TRUE
0980243 05018 1998/05/01 B0012 中百舌鳥 天下茶屋   10.2  1.0  TRUE
0980244 05019 1998/05/01 C2709 天下茶屋 鶴橋 日本橋   5.3  1.0  TRUE
0980245 05020 1998/05/01 C2709 鶴橋 東梅田 日本橋/天神橋筋六丁目   8.8  1.0  TRUE

2.1一乗車区間

4月30日の最初の乗車は、近鉄名古屋−湯の山温泉間であった。一乗車区間には、0980216、04054のように年間・月間の乗車連番が与えられ、それぞれ年間216回目、月間54回目の乗車であることを示す。

このように年間・月間の乗車連番が与えられ、乗車回数が1.0となる乗車行動が一乗車区間である。一乗車区間の概念は、駅の乗降回数を算出(両端駅が計算の対象)するために導入された。そのルールは、次の通りである。

原則:事業者ごとに改札口から改札口まで

一乗車区間は、原則として事業者ごとに与えられ、改札口から入場し、改札口から出場するまでの乗車をいう。

年連番0980216の乗車は、近鉄名古屋で乗車し近鉄四日市で乗り換え、湯の山温泉で下車した。これは、近鉄という事業者の路線の1回の乗車行動であり、一乗車区間として扱われる。

例外1:ラッチ外乗換駅

同一事業者の路線間の乗換駅において駅の構造上改札口を通過せざるをえない場合は、乗車区間を分割しない。

JR東日本・浜川崎、東京地下鉄・九段下などのラッチ外乗り換えがこの例外に該当する。年連番0980229の乗換駅の 田原本=西田原本や新王寺=王寺のように、 駅名が異なっていても運賃計算上同一駅として扱われている場合も同じ。但しあくまでも乗り換えのためだけに、改札口を出場する場合であって、その間に買い物など別の用事を行うときは分割する。

一乗車区間は原則として事業者ごとに与えられるので、事業者間の乗り換えで改札口を経由しない場合(旧国分寺駅での中央線から西武国分寺線への乗り換えなど)であっても、乗車区間が分割される。但し次のような例外を設けている。

例外2:相互乗り入れ区間

異なる事業者にまたがる乗車であっても、恒常的に相互乗り入れが行われている区間(3社以上にまたがる場合も同じ)は、乗車区間を分割しない。

5月1日の年連番0980232は、生駒からコスモスクェア、住之江公園で乗り換え、西梅田まで乗車したものである。生駒−コスモスクェア間の近鉄東大阪線−大阪市中央線−OTS南港・港区連絡(テクノポート)線及びコスモスクェア−住之江公園間のOTS南港・港区連絡(ニュートラムテクノポート)線−大阪市南港ポートタウンでは相互乗り入れが行われている。そのため1回の乗車が近鉄、大阪市、OTSの3事業者にまたがっており、 大阪市の間にOTSがはさまれている。このような1回の乗車で複数の事業者に渡るときには、近鉄が 0980232-1、 大阪市の1回目が0980232-2、4回目が0980232-4 、OTSが90980232-3というように乗車順に枝番が与えられ、乗車回数はそれぞれ0.5、0.5、0となる。このケースでは事業者間の接続駅長田、大阪港、中ふ頭を通過しているが、これらの接続駅で列車を乗り換える場合も、乗車区間を分割しない。

なお、東急渋谷から中目黒経由東京地下鉄広尾まで乗車するようなケースでは、渋谷−中目黒間と中目黒−広尾間で、相互乗り入れを行っているのではないから、中目黒で改札口を出なくても、乗車区間が分割される。

例外3:JR旅客会社相互の乗り換え

JR旅客会社相互の乗り換えは、乗車区間を分割しない。

分割民営化以降複数のJR旅客会社にまたがる乗車となったケース(従来の国鉄では当然一乗車区間)では、国鉄時代の駅乗降回数のデータと整合性をとるため、乗車区間を分割しないこととした。例えば、岡山・東京間を新幹線で乗車したときは、例外1の相互乗り入れの適用を受けJR西日本とJR東日本とで乗車区間は分割されないが、東京駅で下車せずJR東日本に乗り換えて有楽町まで乗車しても、例外3が適用され乗車区間は分割されない。

上記の例外ケースでは、相互乗り入れのケースと同様、事業者ごとの乗車に枝番号が与えられる。事業者間の接続駅は、カッコ付きで表示され、乗降回数に加算されない。このほか夜行列車で日が変わったときも、日付ごとに枝番号が与えられる。

パソコンデータベース上では、枝番号が与えられた各事業者ごとの乗車が1レコードとして扱われ、乗車回数がレコード数と一致しないことになる。このため、乗車回数の計算をレコード数( =count)ではなく、合計(=sum)関数で行うために「回」値を導入したものである。

2.2事業者の基準

表1で事業者は、事業者コードで示している。A0013はJR西日本、B0011は近鉄、C2709は大阪市を示す。事業者コードは後述するとおり、鉄道路線データベースとの結合のために体系化したものである。

線路の所有者と運行者が異なる場合、いずれの乗車として記録するか。鉄道事業法の施行以前に乗車したことがある路線では、こどもの国協会(現横浜高速鉄道)は東急に、和歌山県営の久保町−水軒間は南海にと、運行者基準で記録していたが、神戸高速鉄道だけは、運行している阪神、阪急、山陽、神戸電鉄ではなく、線路の所有者である神戸高速鉄道の乗車として記録していた。これは、神戸高速が4社の乗り入れであり、うち高速神戸−西代間は3社が運行しているため、運行者基準よりも所有者基準の方が適していると思ったためである。鉄道事業法が鉄道事業を第1種、第2種、第3種事業に区分したので、この問題は考えやすくなった[5]

現在は線路の所有者(第1種・第3種事業者)ではなく、運行者(第1種・第2種事業者)ベースで記録することに統一した。複数の第2種事業者が運行する区間及び第1種、第2種の併存区間[6]については、乗車した列車を運行した事業者基準で記録している。

JR鹿島線の鹿島神宮−鹿島サッカースタジアム間は、JRの線区であっても旅客列車はすべて鹿島臨海鉄道の列車である。この区間は、鹿島臨海が第2種事業者ではなく、JRへの乗り入れとして運行しているため、JR東日本の乗車として記録している。

2.3乗車キロの扱い

表1で キロの欄に表示されている乗車キロは、基本的に各事業者が定めた営業キロをベースにしている。かつて時刻表にすべての駅間の営業キロが記載されていたのは、国鉄だけだった。東京周辺の主要私鉄全駅が継続的に掲載されるようになったのは、75年3月号以降である[7]。 また当時の「私鉄要覧」は、巻末の路線図に駅間キロを表示していなかった。従って廃止された路面電車については、乗車キロが記載されていないデータがかなり残っている[8]
営業キロが設定されていない区間については、次のように処理している。定期旅客列車が走っているが、独自の営業キロを持たない路線には次の二つの形態がある。
(1) 既設路線の線増として扱われる路線:七飯−大沼間の函館線短絡線、東京−品川間の東海道地下路線、品川−田端間の山手貨物線、かつての新幹線など
(2) 短絡線:児島−坂出、山手貨物線から東海道(品鶴)線や東北線への短絡線、武蔵浦和から与野(田島信号所−別所信号所)への短絡線[9]、かつての田井ノ瀬−和歌山[10]など

(1)は、複線・複々線と同じ扱いである。国鉄時代には新幹線は、別線線増として扱われ独自の営業キロをもっていなかった。このような路線に乗車したときは並行する既設路線の営業キロを使用して記録している。また(2)のケースでは、基本的に最寄り駅を経由する営業キロを有する路線を乗車したものとし、例えば、山手−東北は田端経由、大宮−東川口は西浦和経由の営業キロを使用して記録している。ただし、山手−品鶴の場合は、大崎−蛇窪信−西大井間の距離がわかっているため、品川経由のキロから実キロに変更した。

2.4新乗車区間

表1の「新」欄にはTRUE/FALSE表示がある。TRUEは、これらの乗車が新乗車路線・区間を含んでいることを示す。 0980216は、湯の山線が新乗車路線であった。また、0980241の大阪環状線・大正−新今宮間、関西線・新今宮−天王寺間は、JRへの承継後初めての乗車であり、「準新乗車」として扱っている。日本の鉄道全線走破に当たっては、国鉄時代に乗車した線区であっても、その後JR各社または第三セクターに移管された線区を乗り直そうと思っている。

新乗車区間の把握は、「乗車記録テーブル」と「乗車区間テーブル」を結合して作成している「乗車記録フォーム」で、詳しく説明する。図1は、「乗車記録フォーム」の表1の連番0980234の例である。

 図1 乗車記録フォーム
 

このフォームでは、メインフォームに、「乗車記録テーブル」の内容が表示され、サブフォームに年連番で結合した「乗車区間テーブル」の内容が表示される。「乗車区間テーブル」は、「乗車記録テーブル」の各レコードごとにその乗車で通過した「駅間」(区間ID)を通過順に示すものである。またフッターに、区間キロの合計である「乗車キロ」が12.6キロと表示され、メインフォームの乗車キロ(12.6キロ=テーブルの数値)と一致していることが確認される。

図1のメインフォームでは、「新」にチェックマークが付されている。テーブルの「新」=Trueに対応して、この乗車が新乗車区間を含むことを示している。サブフォームでは、野田阪神−玉川、玉川−阿波座など、9の駅間の「新A」欄ににチェックマークが付されている。これは、これらの駅間が新乗車区間であることを示す。鉄道を完乗するということは、乗車区間の最低単位であるすべての駅間を通過すること、すなわちすべての区間にチェックマークが付くことである。

フッターの「新キロA」は、新乗車区間の区間キロの合計を表示し、連番0980234の12.6キロの乗車のうち、8.9キロの新乗車区間を含むことを示す。

なお、「新キロB」は、その事業者としての初めての乗車に計上する[11]。例えば、年連番0980241のように国鉄時代に乗車していた区間であっても、JRに承継後初めて乗車したようなケースに、新キロBを計上する。


3.鉄道路線データベース

国鉄完乗を目指していた時代は、乗車記録を記した手帳とは別のノートを用意し、左側に対象路線を記し、右に乗車日、乗車区間を記録していくやり方で、乗車距離の伸びを楽しみながら管理していた。1961年1月に御殿場線を走破した以降、国鉄の新乗車区間の乗車日は、乗車記録を開始する以前も、ほぼすべて把握しており、このノートに記載していた。

私鉄・公営・三セクを含む日本の鉄道全線乗車(及び旧国鉄路線の乗り直し)を目指している現在は、その対象を確定するために、鉄道路線データベースを作成している。事業者・路線・区間(駅間)をコード化し、これを基準に乗車記録データベースと結合して、事業者・路線ごとの乗車区間を把握している。

完乗の対象路線は、新線開業・廃止、線路の付け替えによる改キロなどで刻々変化していく。変化する乗車対象を時間軸をもって把握するためには、ある時点の鉄道路線データベースだけでなく、鉄道路線・営業キロの変遷をフローとしてデータベース化する必要がある。

路線変遷のデータベース化をはじめた当初は、ほとんど資料がなかった。新線開業・廃止のデータは得やすいのだが、かなり頻繁に行われる改キロのデータがなかなか得られず、得られた場合でもその実施時期がはっきりしない[12]

国鉄・JRについては、1985年交通公社から翻刻出版された「日本国有鉄道 停車場一覧」を参考にした。これには1948年12月31日時点の路線一覧とその後の変遷が記載されており、このデータに基き、1948年12月31日以降の変遷データベースを作成している。その後、1998年石野哲氏ほか編集による労作「停車場変遷大事典国鉄・JR編」がJTBから刊行された。これには1872年の鉄道開業時点からの変遷が記載されている。

私鉄については、乗車記録を開始した1966年1月1日以降の変遷をデータベース化しようとしている。和久田康雄氏の「私鉄史ハンドブック」(電気車研究会、1993)がほとんど唯一の参考資料といってよい。路線の開業・廃止については網羅しているが、改キロについてはデータがそろっていない。特に路面電車については、営業キロの合計が一括表示され、路線ごとのデータがない。そのあたりを補おうとして、図書館で古い「私鉄要覧」にあたり営業キロの変遷を調べている。しかし、60年代後半から70年代前半の「要覧」は、明らかな誤記が多く、また掲載されている路線・区間のキロの合計が事業者の合計キロと一致しないなど、なかなか全貌がつかめない[13]

そういうわけで、まだ完成途上であるが、MSアクセスによる鉄道路線データベースの現状を紹介する。図2に「乗車記録データベース」の構造、すなわちデータベースに収められているテーブルのフィールドと各テーブル間のリレーションシップ(連結関係)を示す。図の上段の「乗車記録テーブル」と「乗車区間テーブル」は、2.乗車記録データベースで説明した。ここでは、中段から下の鉄道路線データベースを構成する各テーブルについて紹介する。

図2 乗車記録データベースの構造

3.1事業者

「事業者テーブル」と「事業者変遷テーブル」を持つ。「事業者テーブル」は、[事業者ID]、[事業者名]、[事業者略称]、[住所]などのフィールドをもつマスターテーブルである。現存しない事業者を含む(住所などのデータはない)。「事業者変遷テーブル」は、[事業者ID]で「事業者テーブル」と結合し、各時点での事業者名称、変更時期、変更事由、新旧事業者IDなどを示す。このデータは基本的に「私鉄史ハンドブック」に基いており、鉄道開業後の全事業者を網羅している(はずである)。

[事業者ID]のコード体系は、旧国鉄をA0001、JR各社を A0011(JR東日本)からA0017(JR貨物)、大手私鉄をB0001(東武)からB0016(西鉄)としている。中小私鉄、第三セクター、公営交通は、Cxxyyとし、都道府県(xx)ごとに開業順(yy)に付番した[14]。二県以上にまたがって路線を有し、その線路がつながっていない事業者(神奈川県と静岡県の伊豆箱根鉄道)は、コード上は別事業者として扱い、異なった事業者IDを付している。かつての同和鉱業(秋田県と岡山県)、の京福電鉄(福井県と京都府)なども同じである。

第3種事業者にも、事業者IDを与えている。博覧会の開催などで、期間限定免許(許可)を受け営業した事業者については、各都道府県の91番以降のコードを与えている。

事業者が変わったときの事業者IDの変更のルールは次のとおりである。
(1) 事業者が鉄・軌道事業の一部を新事業主体に譲渡したときは、新事業主体に新たな事業者IDを付与する。
国鉄からJRへの承継、国鉄・JRから第三セクターへの譲渡は、すべてこの範疇に属す。
(2) 事業者が鉄・軌道事業の全部(すべての現存路線)を、新事業主体に譲渡したときは、事業者IDは変更せず、旧事業者IDが引き継がれる。
2003年2月1日、京福電鉄が運休中の福井県内の鉄道事業をえちぜん鉄道に譲渡した。単独の事業者IDを有する京福(福井)の全路線(廃止された永平寺線を除く)がえちぜん鉄道に引き継がれたので、えちぜん鉄道は京福(福井)の後継者であるとして、事業者IDは変更されない。
(3) 事業者名の変更、鉄・軌道事業をもたない会社等との合併は、当該事業者の鉄・軌道事業の変更をもたらさないので、事業者IDは変更しない。
最近では、1998年4月1日東京臨海新交通がゆりかもめに改称した例、1999年10月1日筑波山鋼索鉄道が筑波山ロープウェイと合併し、筑波山観光鉄道に改称した例がこの範疇に属す。
(4) 譲渡・合併等により事業者IDが変更された鉄・軌道事業が、再度分離したときは、譲渡・合併以前の旧事業者IDが復活する。
2000年4月25日六甲摩耶鉄道は、阪神大震災で運休中の麻耶ケーブル線を神戸市都市整備公社に譲渡した(神戸市都市整備公社が復旧工事を行い、2001年3月17日再開)。麻耶ケーブルは、1975年10月29日六甲越鋼索鉄道と合併し、六甲摩耶鉄道となるまで、麻耶鋼索鉄道として単独の事業者IDを有していた。したがって、神戸市都市整備公社に新たな事業者IDを与えることはせず、麻耶鋼索鉄道時代のIDが復活する。京福(京都)の鉄道部門の叡山電鉄への譲渡(1986年4月1日)も同じ。叡山電鉄の路線は、もともと鞍馬電気鉄道として1928年12月1日開業し、1942年9月1日京福と合併したものである。
 

3.2路線

「路線テーブル」と「路線変遷テーブル」を持つ。「路線テーブル」は、[事業者ID]、[線名]、[路線ID]、[種別](普通、懸垂、跨座、案内道、無軌条、鋼索、浮上)、[区間]、[営業キロ]、[旅客キロ]、[現存](Yes/No)のフィールドを含むテーブルである。[事業者ID]で「事業者テーブル」とリンクする。「路線変遷テーブル」は、[路線ID]で、「路線テーブル」と結合し、[日付](変更日)、[区分]((開業、廃止、譲渡、譲受、承継、移管、編入、改キロなどの変更事由)、[営業キロ]、[旅客キロ](ともに従来との差分を記載)の変遷データを記している。路線の譲渡等がおこなわれたときに、[旧路線ID]、[新路線ID]が記入される。「路線テーブル」の[路線ID]と「路線変遷テーブル」の[現路線ID]を結合することにより、現在の路線の過去からの変遷を見ることができる。

路線テーブルに記載されている路線は、1948年12月31日以降存在した旧国鉄路線及び1965年12月31日以降存在した私鉄路線である(第3種事業者の路線及びJR貨物の第2種路線は、含まない)。路線変遷テーブルは、それぞれの時点以降の変遷を記載している。

線名IDのコード化は、鉄道(1種、2種)・軌道を区別せず、次のフォーマットによる。
 

表2 線名ID体系
路線ID 線名 区間 事業者ID(5桁) 路線番号(3桁) 枝番(1桁)
A0001101 国鉄[東海道]東海道本線 東京−神戸 A0001 101  
A0001Z03 国鉄[釧網]根北線 斜里−越川 A0001 Z03  
A0011001 JR東日本・東海道本線 東京−熱海 A0011 001  
A0011001A JR東日本・東海道本線 品川−新川崎−鶴見 A0011 001 A
A0013001B JR西日本・東海道本線[15] 吹田−梅田−福島 A0013 001 B
B0006402 東急・世田谷線 三軒茶屋−下高井戸 B0006 402  
B0012501 南海・鋼索 極楽橋−高野山 B0012 501  
C0108401 札幌市・一条 西4丁目−西15丁目 C0108 401  
C0108405 札幌市・山鼻 すすきの−中央図書館前 C0108 405  
C0108801 札幌市・南北 麻生−真駒内 C0108 801  

路線番号の最初の桁は、普通鉄(軌)道:0-4(いわゆる路面電車は4)、鋼索鉄道:5、懸垂式鉄(軌)道:6、跨座式(軌)鉄道:7、案内軌条式鉄(軌)道:8、無軌条電車、浮上式鉄(軌)道:9と区分している。なお、旧国鉄の路線については、最初の桁(1〜9、A〜Z)は、「線」が所属する「部」(東海道線、釧網線等の大区分)を示す。

路線番号は、旧国鉄は「線路名称」順。JR各社は、1987年4月1日時点の「鉄道要覧」の記載順で、その後の開業路線は開業順としている。私鉄については原則として1966年版「私鉄要覧」の記載順(その後の開業路線は開業順)である。従って最新の「鉄道要覧」の路線順とは異なる。札幌市電の一条線と山鼻線の路線IDが飛んでいるのは、66年時点にはこの間に、円山線、西4丁目線、豊平線が存在したからである。

路線を所有する事業者の事業者IDが変更になったときは、路線IDも変更になる。そのときも、旧路線の路線IDは抹消せず残している。

図3 路線変遷フォーム

図3は、「路線テーブル」と「路線変遷テーブル」をリンクして作成している「路線変遷フォーム」の例である
 
山手線は、日本鉄道として開業した経緯から、1948年12月31日時点では、赤羽−品川間と田端−池袋間が東北線の部に属していた(それぞれの路線IDは、A0001902とA0001902A)。1972年7月15日、品川−田端間が東海道線の部の山手線(路線ID:A0001102)となった(池袋−赤羽間は、東海道線の部の赤羽線)。1987年4月1日の国鉄分割民営化でJR東日本に承継され、路線IDがA0011002となった。

図2のリレーションシップでは、「路線テーブル」の[路線ID]と「路線変遷テーブル」の[路線ID]が結合しているが、このフォームでは「路線変遷テーブル」の[現路線ID]を「路線テーブル」の[路線ID]と結合し、[現路線ID]を基準に過去の変遷をまとめている。
 

3.3区間

「区間テーブル」と「区間変遷テーブル」を持つ。「区間テーブル」は、[路線ID]、[区間ID]、[起点]、[終点]、[事業](1種、2種、軌道の別)、[営業キロ]、[旅客キロ]、[現存](Yes/No)、[現踏破](Yes/No)、[旧踏破](Yes/No)を含むテーブルである。線名IDで路線テーブルとリンクする。「区間変遷テーブル」は、[区間ID]で「区間テーブル」とリンクし、[日付](変更日)、[区分](分割、統合、改キロなどの変更事由)、[営業キロ]、[旅客キロ](ともに従来との差分を記載)などのフィールドで、線路の付け替えや駅の移転等による改キロ、駅の新設・廃止による区間分割・統合などの変遷を示す。

区間IDのコード体系は次のとおり。
 

表3 区間ID体系
区間ID 線名 起点 終点 線名ID(8-9桁) 区間番号(2−3桁) 枝番
A0011001001 JR東日本・東海道本線 東京 有楽町 A0011001 001  
A0011001C01 JR東日本・東海道本線 鶴見 横浜羽沢 A0011001C 01  
A0015002003 JR九州・鹿児島本線 小倉 戸畑 A0015002 003  
A0015002003a JR九州・鹿児島本線 小倉 新中原 A0015002 003 a
A0015002003aa JR九州・鹿児島本線 小倉 西小倉 A0015002 003 aa
A0015002003ab JR九州・鹿児島本線 西小倉 九州工大前 A0015002 003 ab
A0015002003b JR九州・鹿児島本線 九州工大前 戸畑 A0015002 003 b
 
鶴見−横浜羽沢間のように、路線IDが9桁のときは、区間番号は2桁になる。

区間IDには新駅の開業によって、枝番が付される。区間変遷データベースの開始時点である1965年12月31日現在、小倉−戸畑間には駅がなかった。その後1970年7月1日に、新中原駅が開業し、さらに1987年10月1日西小倉駅が設置され(日豊本線には従来から駅があったので、小倉−西小倉が二重戸籍区間になった)、1990年11月1日新中原は九州工大前に改称された。そのような変遷を示すために、分割区間は、小倉−戸畑の区間IDを継承し、枝番を付している。

図4は、「路線区間明細フォーム」のいわて銀河鉄道を表示している。

図4 路線区間明細フォーム

「路線テーブル」と「区間テーブル」を[路線ID]で、「区間テーブル」と「区間変遷テーブル」を[区間ID]で連結している。「区間変遷サブフォーム」では、区間ID、C0312001007のいわて沼宮内−御堂間の変遷を表示している。すなわち、

路線IDが変更になると、区間IDが変更となるが、このとき、旧区間IDは抹消され、過去の乗車区間データも新区間IDに引き継がれる。これは、過去からの継続性を重視しているためであるが、区間のレコード数が12,000近くあり、この際限ない増加を防止するための措置でもある(路線のレコード数は旧路線を含めて1,500強)。


4.乗車記録データベースと鉄道路線データベースの統合

図2に示すように、「乗車区間テーブル」は、鉄道路線データベースに属する「区間テーブル」と結合している。

乗り潰しをするときの最小単位は、路線ではなく、駅間である。全線乗車とは、すべての駅間を走破することである。それぞれの駅間に乗車したか否かで、区間テーブルの[現踏破]、[旧踏破][16]にチェックマークをつけることにより、路線ごと、事業者ごとの、踏破キロ、踏破率が集計できるようになった。


おわりに

37年以上続けている「乗車記録データベース」であるが、あらかじめグランドデザインがあって作成したものではなく、試行錯誤をしながら現在の姿に到達したものである。

乗車記録については、廃止された路面電車の乗車キロデータの追加という作業が残っているが、フォーマットはほぼ完成した。鉄道路線とその変遷のデータベース化も、はじめてから15年近くになるが、こちらは私鉄の路線変遷データを整備をする必要がある。またデータの入れ物としてのデータベース構造の面でも、更に改良すべきテーマがある。まさにライフワークたる所以である。

なお、このページに記載した事実関係に間違いや疑問点があれば、メールでお知らせください。また[13]に記した、富山地方鉄道の路線再編日をご存知の方は、ぜひご教示ください。


[1] 「鉄道要覧」に記載されている路線は、貨物専用鉄道及び路線を含む。その中には旅客列車が臨時運行される路線もあり、乗車記録の対象は時刻表に記載されている旅客線だけに限らない。
[2] 軌道法が「軌道ハ、特別ノ事由アル場合ヲ除クノ他之ヲ道路ニ敷設スヘシ」(2条)と規定し、 鉄道事業法が鉄道の道路への敷設を原則として禁じている(61条)ことから、鉄道と軌道とは、道路への敷設の可否により区別されている。しかし大阪市営地下鉄が全線軌道となっているなどその適用区分は必ずしも明確ではない。国土交通省発足までは、鉄道は運輸省の管轄、軌道は運輸省と建設省の共管であった。統合後も現在まで、鉄道と軌道が一本化される様子はない。 
臨海地区に建設された神戸新交通やゆりかもめなどの新交通システムは、旧建設省管轄の道路上に敷設されているか、旧運輸省管轄の港湾施設に属する「港湾道路」に施設されているかによって、区間ごとに軌道と鉄道を区分している。
[3] 鉄道事業法施行規則第4条は、鉄道の種類として普通鉄道、懸垂式鉄道、跨座式鉄道、案内軌条式鉄道、無軌条電車、鋼索鉄道、浮上式鉄道をあげている。なお軌道法では、無軌条電車は軌道に準ずべきものとして扱われている。
[4] トロリーバスも、従来の都市型(軌道に準ずべき無軌条電車)はすべて廃止となり、現存する2路線は鉄道事業法に基づく無軌条電車で、いずれも立山黒部アルペンルートにあるトンネル路線である。
[5] 1987年4月1日の鉄道事業法施行以前に線路の所有者と運行者が異なっていたのは、次の5例である。旧地方鉄道法第26条に基き、鉄道の貸借が許可されていた事業者は、鉄道事業法の施行により、貸し手が第3種事業者に、借り手が第2種事業者となった。また同じく運転の管理の委託を行っていた事業者は、鉄道事業法の施行から1年以内に、第1種事業者または第3種事業者のいずれかを選択するものとされた(地方鉄道法に規定はないが「専ら車両を借り受けて運行している事業者」も同じ)。その結果、鉄道の貸与または運転管理の委託を行っていた事業者は、第1種事業者を選択した大阪府都市開発を除きすべて第3種事業者となった。
鉄道の貸借及び運転の管理委託
所有者 運行者 形態 区間 新種別
住宅・都市整備公団* 北総開発鉄道* 委託 小室−千葉ニュータウン中央 第3種
こどもの国協会** 東急 貸与 長津田−こどもの国 第3種
大阪府都市開発 南海 委託 中百舌鳥−光明池 第1種
神戸高速鉄道 阪急、阪神、山陽電鉄、神戸電鉄 車両借受 阪急三宮−西代、元町−高速神戸、新開地−湊川 第3種
和歌山県*** 南海 貸与 久保町−水軒 第3種
* 住宅・都市整備公団(後に都市基盤整備公団)は、2004年7月1日鉄道事業を千葉ニュータウン鉄道に譲渡した。 同時に北総開発鉄道は、北総鉄道と改称された。 路線は、1995年4月1日印西牧の原まで、2000年12月22日印旛日本医大まで延長された。
** こどもの国協会は、1997年8月1日横浜高速鉄道に事業を譲渡した。
*** 南海和歌山港線の和歌山港・水軒間は、2002年5月26日廃止された。また、南海の第1種区間と第2種区間の接続駅、久保町駅は2005年11月27日廃止された。
[6] 現時点で、複数の第2種事業者が運行している区間及び第1種と2種の併存区間は次のとおり。
複数の事業者の運行区間
所有者 種別 区間 運行者 種別 路線名 備考
成田空港高速鉄道 3種 空港第2ビル−成田空港 JR東日本 2種 成田線  
京成電鉄 2種 本線  
関西国際空港 3種 りんくうタウン−関西空港 JR西日本 2種 関西空港線  
南海電気鉄道 2種 空港線  
神戸高速鉄道 3種 三宮−西代 阪急 2種 神戸高速線 三宮−新開地のみ運行
山陽電気鉄道 2種 神戸高速線  
阪神電気鉄道 2種 神戸高速線 高速神戸−西代のみ運行
神戸高速鉄道 3種 元町−高速神戸 阪神 2種 神戸高速線  
山陽電気鉄道 2種 神戸高速線  
東京地下鉄 1種 目黒−白金高輪 東京地下鉄 1種 7号(南北)線  
東京都 2種 6号(三田)線  
JR東海 1種 勝川−枇杷島 東海交通事業 2種 城北線 JR東海は運行せず
JR西日本 1種 七尾−和倉温泉 JR西日本 1種 七尾線  
のと鉄道 2種 七尾線  
JR西日本 1種 トロッコ嵯峨−トロッコ亀岡 嵯峨野観光鉄道 2種 嵯峨野観光線 嵯峨嵐山−馬堀の別線線増の扱いでJR西日本(新線を運行)が第1種事業者となっている
JR西日本 1種 清音−総社 JR西日本 1種 伯備線  
井原鉄道 2種 井原線  
[7] 「時刻表」のキロ表示は、運賃計算キロが営業キロと異なるとき、運賃計算用の擬制キロを記載することがあるので注意を要す。現在は、東武小泉線、大阪市営地下鉄が擬制キロで表示されている。
大阪市営地下鉄の「時刻表」のキロ表示は、運賃計算に使用する擬制キロである。 「鉄道要覧」も、本文では営業キロを記載しているが、巻末地図に表示される駅間キロは擬制キロで、駅間キロの合計が路線の営業キロと一致しない。 駅間の営業キロは、公刊資料からは不明であるが、実際は図のとおりである(読者の方からご教示を受け、大阪市の高速鉄道及び中量軌道営業キロ程に記載されていることが判明した)。
大阪市営地下鉄の営業キロ

擬制キロを採用しているのは、左の路線図に表示されている範囲、梅田=西梅田(御堂筋線・四つ橋線)本町(中央線)阿波座(千日前線)なんば(御堂筋線)天王寺(谷町線)谷町6丁目(長堀鶴見緑地線)森ノ宮(中央線)谷町4丁目(谷町線)東梅田を外周とする環状線区間内と西長堀−大阪ドーム前千代崎間である。路線図上に、駅間の営業キロと擬制キロを示している。()内の数字が擬制キロである。
南北方向、東西方向に並行する路線の駅間キロは、それぞれ最初に開業した御堂筋線、中央線の各駅間の営業キロにあわせていることがわかる。たとえば、四つ橋線・肥後橋−本町間、谷町線・天満橋−谷町4丁目間は、御堂筋線・淀屋橋−本町間の0.9キロに、千日前線・桜川−なんば間は、中央線・阿波座−本町間の1.1キロにあわせて、調整している。
2駅間にまたがって調整している例もある。並行路線の堺筋線・日本橋−恵美須町−動物園前間、谷町線・谷町9丁目−四天王寺前−天王寺間は、それぞれの営業キロ1.2キロ+0.9キロ、1.0キロ+1.1キロを、1.0キロ+0.7キロ、0.8キロ+0.9とし、区間の擬制キロを1.7キロに一致させている。営業キロはともに2.1キロなので、並行路線といっても擬制キロを採用する必要はないはずだが、なんば−天王寺間の運賃計算キロをどの路線を経由しても御堂筋線の3.4キロと等しくなるよう調整しているためだ。なんば(千日前線)谷町9(谷町線)天王寺間も、なんば(千日前線)日本橋(堺筋線)動物園前(御堂筋線)天王寺間も運賃計算キロは、3.4キロになる。同様の調整例は、梅田・東梅田−谷町4丁目間にも見られ、御堂筋線・中央線経由の3.9キロに統一している。このため、谷町線・南森町−天満橋間、天満橋−谷町4丁目間と堺筋線・南森町−北浜間が擬制キロとなっている。
以上のように、大阪市営地下鉄の擬制キロは説明できるのだが、長堀鶴見緑地線・千代崎大阪ドーム前−西長堀間には並行路線がなく、なぜ擬制キロになっているか不明である。

旧営団地下鉄についても、1991年1月号から営業キロ表示に変更になる以前は、運賃計算キロを表示していた。重複区間の日比谷−霞ヶ関(日比谷・千代田)、霞ヶ関−国会議事堂前(丸の内・千代田)の運賃は、先に開業した路線(日比谷線、丸の内線)の営業キロで計算するので、これにあわせていた。青山一丁目−永田町(半蔵門)も永田町が運賃計算上赤坂見附と同一の扱いなので、銀座線・青山一丁目−赤坂見附にあわせて4.0キロとなっていた。また北千住−綾瀬も、JR東日本の営業キロで運賃計算するので、営団の営業キロの2.6キロではなく、JRの2.5キロと表示していた。

[8] 廃止された都電については、メートル単位の実キロをベースに記載している。
[9] 武蔵野線からJR各線への短絡線は、同区間以外はすべて営業キロを有している。 鉄道要覧には、西浦和−与野 4.9キロはJR東日本の武蔵野線として、新小平−国立5.0キロ(JR東日本が定期旅客列車を運行)、南流山−馬橋 3.7キロ、南流山−北小金2.9キロは、JR貨物の第2種事業路線として記載されている([15]参照)。なお、新秋津から西武池袋線への短絡線も現存するが、JRへ承継時に営業キロが廃止された。
[10] 1972年3月15日まで和歌山線は、田井ノ瀬−紀伊中ノ島−紀和が本線だった。この区間の廃止に伴い、田井ノ瀬−和歌山間が本線となり営業キロが設定された。
[11] 厳密にいえば、事業の譲渡等に伴い事業者IDが変更になった路線に、変更後初めて乗車したときに計上する。事業者IDの変更の基準は、3.1に記載している。なお、千葉急行千原線の京成への譲渡、近鉄北勢線の三岐鉄道への譲渡といった、既存事業者間の譲渡・譲受でも、事業者の変更に伴い、事業者IDは変更となるので、変更後の初乗車には新キロBが計上される。
[12] 最近は、インターネット上で、鉄道路線の変遷データが得られるようになった。 JTB「スパなび」の「新着ニュース」では、2001年3月以降のダイヤ改訂・運賃改訂・新線開業・新駅開業・駅名改称・改キロのデータが示されている。個人のサイトでは「駒鉄太郎の鉄道データベース」の「路線改廃ニュース」は、乗り潰しの対象となる鉄道路線の開業・廃止・改キロ等の変遷を、期間限定の営業を含めて表示している(2003年11月現在では、1986年1月以降のデータを掲載)。
なお、「要覧」上で頻繁に改キロが行われている例として札幌市営軌道線を紹介する。 1965年以降の「要覧」による札幌市営軌道線の営業キロ推移は、73年に現行路線となってからも下表とおり頻繁に改キロが行われているが、その実態はよくわからない。

札幌市軌道線営業キロ推移
線名・区間 1965 1966 67-71 1972 73-74 75-76 77-81 1982 83-87 88-90 91-99 00-02 2003
  一条橋−頓前 0.3 0.3                      
  頓宮前−通産局前 2.7 2.7                      
南1条 3.0 3.0                      
  通産局前−西20丁目 0.2 0.2                      
  西20丁目−琴似街道 0.6 0.6                      
  琴似街道−円山公園 0.4 0.4                      
円山 1.2 1.2                      
  一条橋−頓宮前     0.3 0.3                  
  頓宮前−通産局前     2.7                    
  頓宮前−医大病院前       2.7                  
  西4丁目−交通局前         1.3 1.3 1.4 1.4          
  西4丁目−西15丁目                 1.4 1.4 1.4 1.3 1.3
  通産局前−西20丁目     0.2                    
  医大病院前−長生園前       0.2                  
  西20丁目−琴似街道     0.6                    
  長生園前−琴似街道       0.6                  
  琴似街道−円山公園     0.4 0.4                  
1条     4.2 4.2 1.3 1.3 1.4 1.4 1.4 1.4 1.4 1.3 1.3
  札幌駅前−薄野 1.2 1.2 1.2                    
  三越前−薄野       0.3 **                 
  薄野−松竹座前 0.2 0.2 0.2                    
西4丁目 1.4 1.4 1.4 0.3                  
  松竹座前−4条東2丁目 0.6                        
  松竹座前−南四条橋   0.6                      
  松竹座前−4条東1丁目     0.6                    
  4条東2丁目−平岸街道 1.0                        
  南四条橋−豊平5丁目   1.0                      
  4条東1丁目−豊平5丁目     1.0                    
  平岸街道−豊平駅前 0.4                        
  豊平5丁目−豊平駅前   0.4 0.4                    
豊平 2.0 2.0 2.0                    
  薄野−中島橋通 1.2 1.2 1.2                    
  薄野−中島公園通       1.4 1.3 1.3 1.4            
  すすきの−中島公園通               1.4 1.4 1.4 1.4 1.4 1.4
  中島橋通−行啓通 0.7 0.7 0.7                    
  中島公園通−行啓通       0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5 0.5
  行啓通−南16条 0.4 0.4 0.4                    
  行啓通−教育大学前       2.0 2.0 2.0 2.1 2.1 2.1        
  行啓通−西屯田通                   2.2      
  行啓通−中央図書館前                     2.2 2.1 2.0
山鼻 2.3 2.3 2.3 3.9 3.8 3.8 4.0 4.0 4.0 4.1 4.1 4.0 3.9
  道庁前−東9丁目 1.6                        
  道庁前−東10丁目   1.6 1.6                    
  東10丁目−苗穂駅前 0.6                        
  東9丁目−苗穂駅前   0.6 0.6                    
苗穂 2.2 2.2 2.2                    
  札幌駅前−中央市場通 2.1 2.1 2.1                    
北5条 2.1 2.1 2.1                    
  中央市場通−西20丁目 0.8 0.8 0.8                    
西20丁目 0.8 0.8 0.8                    
  西15丁目−西線19条 2.7 2.7 2.7                    
  西線19条−南16条 2.4 2.4 2.4                    
  交通局前−ロープウェイ入口       2.7 2.6 2.6 2.5 2.5          
  西15丁目−ロープウェイ入口                 2.5 2.5 2.5 2.6 2.6
  ロープウェイ入口−教育大学前       0.6 0.7 0.7 0.5 0.5 0.5        
  ロープウェイ入口−西屯田通                   0.5      
  ロープウェイ入口−中央図書館前                     0.5 0.6 0.7
山鼻西 *5.0 *5.0 *5.0 3.3 3.3 3.3 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 3.2 3.3
  札幌駅前−北18条 1.7 1.7 1.7                    
  北18条−北24条 0.9 0.9 0.9                    
  北24条−北27条 0.5 0.5 0.5 0.4 0.4                
  北27条−麻生町 1.6 1.6 1.6 1.7 1.7                
  麻生町−新琴似駅前 0.4 0.4 0.4 0.4 0.4                
鉄北 5.1 5.1 5.1 2.5 2.5                
合計 25.1 25.1 25.1 14.2 10.9 8.4 8.4 8.4 8.4 8.5 8.5 8.5 8.5
* 要覧どおり(区間の計と合わない)
** 73/4廃止だが、73年度要覧(73/3/31現在)に記載なし

[13] 実際の変更時期と「要覧」に記載される時期とのタイムラグもあるようだ。1960年代後半から1970年代初頭、富山地方鉄道は、鉄道路線の再編を行った(黒部線の黒部−電鉄桜井間を廃止(-1.1キロ)、本線と黒部線を統合、立山線のルートを旧五百石線経由に変更、旧立山線の稲荷町−南富山−岩峅寺間を不二越線・上滝線に移管)。これにより電鉄富山−稲荷町の二重戸籍が解消された(-1.7キロ)。 
黒部線の距離短縮は1969年版「要覧」(1969年3月31日現在)に記載されたが、線名・区間の変更と二重戸籍の解消による営業キロの減は、1972年版(1972年3月31日現在)まで反映されていない。しかし、和久田康雄氏の「私鉄史ハンドブック」では、二重戸籍の解消時期を1969年度としている。これは「私鉄統計年報」の富山地方鉄道の営業キロが69年以降120.0キロとなっているのにあわせたためだろう。どちらも運輸省鉄道監督局が監修(編集)したものだが、「要覧」と「年報」の間にも、このような差が生じている。
富山地方鉄道の路線再編
路線名  旧区間 営業キロ 新区間 営業キロ
電鉄富山−電鉄桜井 37.3 電鉄富山−宇奈月 53.3
五百石 寺田−岩峅寺 10.2    
黒部 黒部−宇奈月 17.1    
立山 電鉄富山−千寿ヶ原 31.4 寺田−千寿ヶ原 24.3
不二越     稲荷町−南富山 3.3
上滝     南富山−岩峅寺 12.3
射水 新富山−新湊 14.4 新富山−新湊 14.4
笹津 南富山−地鉄笹津 12.4 南富山−地鉄笹津 12.4
  122.8   120.0
[14] 「私鉄史ハンドブック」の鉄道事業者の整理番号は、都道府県を地方運輸局別に付番し、鉄道と軌道を区分している(鉄道事業と軌道事業を兼営する事業者は、それぞれの項目で整理番号を有す)。私は都道府県のJISコード順とし、鉄道と軌道を区分していない。
[15] 同路線は、JR貨物の第2種区間としてのみ営業キロが設定されていて、JR西日本の第1種区間から漏れている。第1種事業者が存在せず、JR貨物の第2種区間としてのみ営業キロが設定されている路線は、下表の8路線あるが、これらは実質的に旅客会社の第1種区間であるとみなし、JR東日本及びJR西日本の路線として線名IDを付している。なお、この区間のうちJR東日本武蔵野線・新小平−国立間及びJR 西日本東海道本線・吹田−梅田−福島間には、旅客会社により定期旅客列車が運行されており、南流山−北小金にも頻繁に臨時旅客列車が運行される。
旅客会社の第1種区間に含まれないJR貨物の第2種区間
事業者 路線 区間 営業キロ 旅客キロ
JR東日本 東海道本線 入江(信)−新興 2.7 0.0
JR東日本 武蔵野線 新小平−国立 5.0 5.0
JR東日本 武蔵野線 南流山−北小金 2.9 0.0
JR東日本 武蔵野線 南流山−馬橋 3.7 0.0
JR東日本 奥羽本線 新青森−青森(信) 4.8 0.0
JR東日本 信越本線 越後石山−新潟貨物ターミナル 2.4 0.0
JR西日本 東海道本線 梅小路−丹波口 3.3 0.0
JR西日本 東海道本線* 新大阪−梅田−福島 4.7 4.7
* 新大阪−梅田−福島間がJR西日本の第1種路線として2004年度版要覧に計上されたが、2005年度版で元に戻った。
[16] 事業者IDが現在のものに変更となった後に乗車している区間は、[現踏破]がTRUEとなり、旧事業者IDの時代にしか乗車していない区間は[旧踏破]がTRUEとなる。筆者は国鉄時代に完乗し、その後の国鉄・JRの新線もフォローしているので、現在のJRの旅客営業区間は、現踏破と旧踏破を合わせて100%踏破しているが、現踏破だけでは下表のとおりやっと50%を超えたところである(2004/12/11現在)。なお非旅客路線(旅客キロが0の区間)の乗車は含めていない。
事業者 旅客キロ 現踏破キロ 現踏破率
JR東日本 7,431.7 5,010.2 67.4%
JR東海 1,970.8 1,253.4 63.6%
JR西日本 4,986.1 2,180.1 43.7%
JR四国 855.2 445.2 52.1%
JR九州 2,101.1 1,093.7 51.5%
JR北海道 2,499.8 297.8 11.9%
19,869.2 10,280.4 51.8%

改訂履歴
2003/06/03 関連データ集への「大阪市営地下鉄の擬制キロ」の掲載にともない脚注7を訂補
2003/11/09 字句の修正
2003/12/20 関連データ集への「札幌市営軌道線の営業キロ推移」の掲載にともない脚注12を訂補
2004/12/11 「乗車記録データベース(1)、(2)」を統合。表のスタイル変更。「関連データ集」のデータの脚注への取り込み。「営団」の東京地下鉄への変更。
2004/12/28 脚注15のJR西日本、新大阪−梅田−福島の追記(12/11改訂時の記載漏れ)
2004/12/28 脚注15のJR西日本、新大阪−梅田−福島の追記(12/11改訂時の記載漏れ)
2006/02/21 脚注5のその後の変化を注記。脚注7の大阪市営地下鉄の擬制キロの記載文書を追記
2006/11/06 目次を設置。最新データへの更新

初出 2003/05/24
最終更新 2006/11/06
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